作:タダサトシ 出版:こぐま社
大好きな昆虫と友だちになって一緒に遊べたら・・・。
昆虫が好きならば、一度は思ったことがあるでしょう。
そんな思いを叶えてくれる夢のような一冊です。
あらすじ
虫が大好きなこんちゃん。
その中でも一番好きなのはカブトムシです。
冬のある日、こんちゃんは森でとても大きなカブトムシの幼虫を見つけ、育てることにしました。
どんどん大きくなり、夏の真っ盛りに成虫になって土の中から出てきました。
その大きさはこんちゃんと同じくらい。
このカブトムシにカブトくんという名前をつけました。
一緒に部屋に入り、スイカを食べました。
翌朝、こんちゃんは友だちと一緒にカブトくんと遊びました。
その夜、こんちゃんが寝ると、カブトくんは起きだしました。
大好きな夜に寝てなんかいられません。
空を飛んで町並みを見ているうちに、急にこんちゃんに会いたくなりました。
こんちゃんを見つけ、一緒に家に帰りましたが元気がありません。
カブトくんは言いました。
「本当は森に帰って樹液を飲みたいんだ」と。
こんちゃんはしばらく考えました。
どんな答えを出すのでしょうか。
『カブトくん』の素敵なところ
- カブトムシ好きの夢が詰まっている
- カブトムシの生態や描写がとても科学的
- 種族の違いをしっかり考えさせてくれる
何かを飼ったことがある人なら、一緒に遊んだり、お話したり、ごはんを食べたりしてみたいと思ったことがあると思います。
特にそれが昆虫ならば、自分と同じくらいの大きさの昆虫と友だちになってみたいと思うのではないでしょうか。
三輪車をカブトムシに引っ張ってもらったり、風呂上りに羽ばたきで乾かしてもらったり。
そんな姿を見て子どもたちは「僕もやってみたい」「いいな~」と憧れの眼差しを向けています。
しかし、この絵本の素敵なところは夢が詰まっているだけではありません。
科学的な視点が散りばめられているのです。
まず、カブトムシの描写です。
フォルムはもちろん、腹や足の作り、羽の動きに至るまで細かくリアルに描かれているのです。
特に驚いたのが、羽をしまった後に先っぽだけ出ている内羽まで再現されていることです。
描写だけではなく、その生態も見事に描かれています。
昼は眠く、夜元気になったり、明かりを求めて飛んで行ったり。
また、大きくなっても体重は軽いことを、シーソーやお風呂で表現したりもしています。
物語の中に違和感なく知識も散りばめているのは本当に素敵だと思います。
そして最後に楽しいだけでなく、種族の違いについてもしっかりと考えさせてくれます。
カブトくんが空から町を見た時に、
「とっても明るいけど、なんだか寂しいところだなあ」
というところや、森に帰りたいというところ。
それに対するこんちゃんの言葉など、多くのことを考えさせられます。
楽しいだけではなく、科学的・現実的な視点もしっかりと織り込まれている絵本です。
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