てん(4歳~)

絵本

作:ピーター・レイノルズ 訳:谷川俊太郎 出版:あすなろ書房

自由画の時間に、絵を描けない女の子。

そんな時、やけくそで紙に描いた、小さな点。

その点が、女の子の創作意欲を、引き出すことになっていきます。

これは、小さな絵描きが誕生するまでの物語です。

あらすじ

お絵描きに時間が終わったけれど、女の子ワシテは少しも絵を描けず、紙は真っ白だった。

先生はそれを見て、「吹雪の中のホッキョクグマ」だと言った。

ワシテが「描けないだけ」だと反発すると、先生はにっこり笑って言った。

「何かしるしをつけて見て」と。

ワシテはマーカーを力いっぱい、紙に押し付けた。

すると、紙には小さな点が。

先生はそれを見て「ふむむむむ」と唸ると、ワシテにサインを求めてきた。

ワシテは、自分が点を描いた紙にサインをした。

次の週、先生の机の上に、ワシテが描いた点が、額縁に入れて飾られていた。

ワシテはそれを見て、「もっといい点だって描ける」と思った。

そして、開けたことのない水彩のセットを開け、描き始めた。

色々な色の点、色を混ぜた点、大きな点・・・。

描きまくった点を、学校の展覧会で飾ると、ワシテの点は大評判。

その絵を見て、1人の男の子が声をかけてきた。

男の子がワシテに言ったこととは?

『てん』の素敵なところ

  • 絵って自由で楽しいことに気付かせてくれる
  • 先生のセンスと優しさ溢れる声かけ
  • 繋がっていく創作の輪

絵って自由で楽しいことに気付かせてくれる

この絵本の素敵なところは、絵を描くことの自由さに気付かせてくれることです。

年齢が上がると、「自由に描くこと」よりも、「上手に描くこと」に目がいきがちです。

そして、窮屈になり、絵を描くのが嫌いになる子が出てきます。

ワシテもそんな子どもの一人です。

でも、一つの点を描いたところから、創作意欲が湧き出して来ます。

最初は、ちっぽけな点を見て、もっといい点が描けると思った所から。

描いていると、いろんな色を使ったり、混ぜてみたり、大きさを変えてみたりと工夫が生まれていきます。

その姿の楽しそうなこと。

どんどん発想が生まれてきて、点を描くことに夢中になっているのです。

きっと、本来の創作はこういうものなのでしょう。

なにかを上手に描くのではなく、自分の興味のままに作り上げていく。

それがとても楽しいものであることに、気付かせ、思い出させてくれるのです。

先生のセンスと優しさ溢れる声かけ

そのきっかけを与えてくれたのが、お絵描き教室の先生でした。

真っ白な紙を見て「吹雪の中のホッキョクグマ」と言える、センスの素晴らしい先生。

でも、絵を見るセンスだけでなく、子どもの内にある創作意欲を引き出すセンスも抜群です。

何かをさせる訳ではなく、子どもがやけくそで描いた点を、作品へと作り変えてしまうのですから。

額縁に飾ってある点を見て、ワシテはきっと「自分も作品を作れるんだ」と感じたことでしょう。

だからこそ、「もっといい点だって描ける」という気持ちになったのだと思います。

この先生の言葉は、ワシテだけじゃなく、この絵本を読んでいる、絵が苦手な子の背中も押してくれることでしょう。

繋がっていく創作の輪

さて、どんどん広がっていく創作意欲。

これがワシテだけで終わらないのもこの絵本の素敵なところ。

展覧会で小さな絵描きになったワシテ。

そこに現れた男の子。

最後の場面での、この2人のやり取りがとても素敵なのです。

かつてのワシテのような男の子。

そんな男の子に広がっていく、創作の輪。

そのやり取りからは、一番大切なのは描きたい気持ちだということが伝わってきます。

そして、自信を持って思い切り楽しむことだということも。

二言まとめ

上手に絵を描くことが苦手な子が、自由に絵を描く楽しさに気付いていく。

絵を描くって楽しくて、自由なことなんだと、思い出させてくれる絵本です。

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