かちかちやま(4歳~)

絵本

再話:おざわとしお 画:赤羽末吉 出版:福音館書店

定番の昔話『かちかちやま』。

その中でも、やり取りを丁寧に描き、とても感情移入して楽しめるのがこの絵本。

タヌキの極悪非道っぷりと、ウサギの容赦ない復讐劇は見逃せません!

あらすじ

昔あるところに、じいさまとばあさまが住んでいました。

ある日、じいさまは、山の畑へ豆まきに行きました。

じいさまが豆をまいていると、切り株に座っていたタヌキがはやし立て、バカにしてきました。

怒ったじいさまが、タヌキにくわを投げると、タヌキが倒れてしまったので、じいさまは縛って家へと持って帰ることにしました。

じいさまはばあさまに、タヌキをタヌキ汁にするよう頼み、町へ出かけていくのでした。

ばあさまがタヌキ汁の支度をしていると、タヌキが手伝ってやると言ってきました。

何度も断りましたが、タヌキに根負けし、ばあさまは縄をほどいてやりました。

タヌキは最初こそ手伝っていましたが、隙を見てばあさまをきねで突き、打ち殺してしまいました。

ばあさまを殺したタヌキは、その衣服を着てばあさまに化け、じいさまの帰りを待ちました。

じいさまが帰ってくると、早速タヌキは、タヌキ汁を勧めました。

じいさまが違和感を感じながらも、タヌキ汁を食べ終わると、タヌキは元の姿に戻り言いました。

「それはばあさまの入った汁だ」と。

そして、山へ逃げて行ったのでした。

じいさまは悔しくて、泣き出しました。

そこへウサギがやってきて、じいさまの話を聞いてやりました。

話を聞いたウサギは「仇を取ってやる」と言って、帰っていくのでした。

ウサギは早速、向かいのかや山へ行って、かやを刈り始めました。

すると、そこへタヌキがやってきて、何をしているのか聞いてきます。

ウサギが「かやを刈って、屋根をふくんだ」と言うと、タヌキも一緒に刈り始めました。

かやを刈り終わると、2人は背中にいっぱいのかやを背負い、帰ることに。

しばらく行くと、ウサギはタヌキの背負うかやへ、火打石を「かちっかちっ」と打ち出しました。

さらに、しばらく行くと、タヌキの背中のかやがぼうぼうと燃え出しました。

そのうち、タヌキの背中に火が広がり、タヌキは背中をやけどして、山の奥へと逃げていってしまいました。

しばらく経って、ウサギはとうがらし山へ行って、唐辛子をとり始めました。

そこへタヌキがやってきて、ウサギに文句を言いました。

ウサギは、タヌキに「それはウサギ違いだ」と言い、さらに「やけどには唐辛子をつければすぐ治る」と言いました。

タヌキはそれを信じ、ウサギに唐辛子を塗ってもらうことにしたから大変です。

痛みで転げまわり、山の奥へ逃げていきました。

また、しばらく経って、ウサギは松山へ行き、松の木を切っていました。

するとまた、タヌキが現れて唐辛子を塗ったことに、文句を言ってきました。

ウサギはまた、「ウサギ違いだ」と嘘をつき、「いい天気だから、舟でも作って魚取りに行こう」と言いました。

タヌキはまた騙されて、ウサギに舟を作ってもらうことにしました。

こうして舟が完成しました。

ウサギの船は木の船で、タヌキの船は土の舟です。

2人は川へと漕ぎ出しました・・・。

『かちかちやま』の素敵なところ

  • 極悪すぎるタヌキの所業
  • 場面が丁寧に描かれることにより生まれる没入感
  • すぐには沈めない土の舟

極悪すぎるタヌキの所業

この絵本を読んでまず驚くのは、タヌキの残酷さでしょう。

『かちかちやま』でもソフトなものは、おばあさんが死にません。

スタンダードなものは、おばあさんが死んでしまいます。

ですが、この絵本はおばあさんが死んだ上、おじいさんにばあ汁にして食べさせてしまうのです。

ここまで鬼畜なことをするタヌキを見たことがあるでしょうか?

とどめには去り際に「ばあ汁食ったし、粟餅食った。流しの下の骨を見ろ」と言い捨てていくのです。

これには子どもたちもびっくり。

目が点になっていました。

ただ、このお話は、かたき討ちのお話です。

タヌキが残酷だからこそ、かたき討ちがより、気分のスカッとしたものになるのです。

場面が丁寧に描かれることにより生まれる没入感

また、この物語へより感情移入させてくれるのは、タヌキの残酷さだけではありません。

人物同士のやり取りや、場面の描写などが、丁寧に描かれていることも、物語により入り込ませてくれるための、素敵な要素です。

じいさまがばあ汁を食べる時、ただ騙されて食べる訳ではありません。

途中で、汁からばあさま臭さを感じ疑いますが、タヌキに言いくるめられて食べてしまいます。

ウサギに騙されるタヌキも、ただ黙って騙されるわけではありません。

ウサギが火打石を打つ「かちっかちっ」という音を聞けば、「かちかちいうのは、何の音かな?」と聞きます。

騙されたあと、ウサギに会えば「この間はよくも、背中にやけどさせたな」と、文句を言います。

それを言葉巧みにかわすウサギ。

このような、細かなやり取りがあるからこそ、夢中になってお話へ入り込んでしまうのです。

すぐには沈めない土の舟

さて、最後の場面もおもしろい。

お馴染みの、土の舟が沈んでしまう場面です。

この絵本では川に出ただけでは簡単には沈みません。

中々頑丈に、土の舟も作ってあります。

そこでウサギがある行動を取ります。

タヌキはそれにつられます。

子どもたちはそれを見て、ハラハラドキドキ。

「それやったら沈むよ!」

「ああ~」

結末を知っていても、やきもきしてしまいます。

この結末までのタメが、最後の場面に大きな盛り上がりを生んでくれているのです。

二言まとめ

それぞれの場面が丁寧に描かれた、見ごたえバッチリのボリューム感ある『かちかちやま』。

タヌキの悪さと、じいさまばあさまの悲しみ、ウサギの巧みな話術に夢中になってしまう昔話絵本です。

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