作:オーシル・カンスタ・ヨンセン 訳:ひだにれいこ 出版:福音館書店
音楽をやるためには、何が必要なのでしょう?
楽譜が読めること?きちんと演奏できること?
いえいえ、キュッパの見つけた音楽は、どうやらそうではないみたい。
あらすじ
キュッパは丸太の男の子。
仲良しのもみの木、ググランと、おばあちゃんの家へ遊びにきました。
みんなでテレビを見ていると、音楽隊の行進が始まりました。
それを見た、キュッパはトランペットを吹く真似を始めました。
ググランは、それに合わせて手を叩きます。
次の日になっても音楽に夢中な2人を見て、おばあちゃんが町の音楽隊へ入れるか連絡してくれることになりました。
連絡してみると、ちょうど新しいメンバーを2人募集している所でした。
次の日、音楽隊の練習場所に行くと、大きなおじさんが2人を待っていました。
おじさんは指揮者だと名乗り、キュッパと握手をしました。
おばあちゃんが先に帰ると、指揮者は昔のおばあちゃんの話を始めました。
おばあちゃんは伝説の木琴チャンピオンだったのです。
指揮者はキュッパんも音楽の才能があるに違いないと、期待を寄せていました。
ググランのことはどうでもよさそうです。
楽器のある部屋に行くと、キュッパはトランペットを、ググランはサクソフォンを選びました。
楽器を選ぶと、音楽隊のみんなに紹介され、早速一緒に練習することになりました。
キュッパにトランペットを教えてくれるのは、エルセという優しそうな子です。
音楽隊は覚えることがいっぱいありました。
楽譜、音の出し方、指の抑え方・・・。
エルセは優しく教えてくれるけれど、キュッパにはチンプンカンプン。
とりあえず、エルセの真似をすることになりました。
キュッパは練習するうちに、吹く真似がとても上手くなりました。
それを見た指揮者は、上手に吹けていると勘違い。
1週間後の音楽会で、トランペットのソロを吹くよう言って、楽譜を渡してきたのです。
キュッパはそれから、おばあちゃんと毎日練習しました。
でも、ドの音ひとつ出せるようにはなりません。
そして、いよいよ音楽会の前日。
みんなそろっての、最後の練習の日です。
練習が始まります。
そして、キュッパのソロになると、音楽が止まってしまいました。
キュッパは思わず立ち上がり吹いてみますが、音は出ません。
何度やっても音は出ません。
そこで、ググランとエルセが、キュッパが吹けないこと、この前はエルセの真似をしていただけということを、指揮者に伝えました。
すると、指揮者はカンカンです。
キュッパ、ググラン、エルセの3人は、音楽隊を追い出されてしまいました。
外で待っていたおばあちゃんにそのことを話すと、おばあちゃんもカンカンです。
音楽がしたいけど、楽譜を読めず、音も出せないと悩むキュッパに、おばばちゃんは一度ゆっくり休むように言いました。
3人はひとまず、キュッパの家に行き、おばあちゃんの焼いてくれたパンを食べ、一息つくことにしました。
キュッパはパンを食べ終わると、おばあちゃんとお皿を洗いました。
お皿を洗っていると、あることに気付いたキュッパ。
お皿を洗うと、色々な音がするのです。
演奏しながらお皿を洗い終わると、他にも音が出るものはないか探しに行きました。
バケツやほうき、木の板に、ビン、スプーンにロープなど、色々なものを庭に出してきます。
それを使って、みんなで楽器作りが始まりました。
一体どんな楽器たちが出来上がるのでしょう?
キュッパたちの見つけた音楽とは?
『キュッパのおんがくかい』の素敵なところ
- 音楽って自由で楽しい
- 身近なものを使いながらも、しっかり作られた楽器たち
- なんでも受け止めてくれる素敵なおばあちゃん。
音楽って自由で楽しい
この絵本の素敵なところは、誰でもいつでも音楽を楽しめるということに、気付かせてくれるところです。
楽譜が読めないから、上手く演奏できないからと、悩む人は多くいます。
でも、上手く演奏することよりも大事なことは、音を楽しむこと。
好きなように音を出し、好きなようにリズムを取って、楽しむことが音楽の醍醐味です。
音が鳴れば、なんだって楽器になってしまうし、どんな音もリズムに乗れば音楽です。
そんな当たり前だけれど、忘れがちなことにキュッパの姿を通して気付かせてくれるのです。
最初はただ楽しい気持ちで音楽隊に入るキュッパ。
だけど、そこでは音楽を楽しむ前に覚えることが山ほどあり、窮屈な音楽に悩みます。
こうして、一度「きちんとした」音楽に触れたキュッパの姿を見ているからこそ、音楽の根っこにある自由に音を出す楽しさが際立つのでしょう。
そんなキュッパを見て、きっと細かいことを気にせずに、音を鳴らしたくなるのではないでしょうか?
身近なものを使いながらも、しっかり作られた楽器たち
さて、物語の中でキュッパたちが作る様々な楽器。
これが、作ってみたくなるのも、この絵本の面白いところです。
材料は身近なものですが、どれも一工夫されています。
木と木の間にロープを張り、それを手で引っ張ったり弾く楽器。
並べた瓶に、それぞれ量の違う水を入れ、瓶の口を吹いて音を出すがっき。
ちりとりをほうきでこする楽器。
などなど、作るのは難しくないけれど、自分で音を出してみたいものばかり。
見たら、試しに作って、音を鳴らしてみたくなってしまうのです。
ただ、叩いたり振ったりするだけでなく、組合わせることで、音の種類が増えていく楽しさが感じられるのも、この絵本の素敵なところなのです。
なんでも受け止めてくれる素敵なおばあちゃん。
こうして、楽しい音楽に出会えたキュッパ。
ですが、1人ではここまで来ることは出来なかったでしょう。
キュッパがやってみたいと思ったことへすぐに手を貸し、悩んでいれば受け止めて、新しいアイディアがあれば側で肯定してくれる相手。
素敵なおばあちゃんがいたからこそ、キュッパはのびのびと、自信を持って自分たちの音楽会を開くことが出来たのだと思います。
そんなおばあちゃんの一言一言がとても素敵。
なにかを教えるわけでもなく、なにかをやらせるわけでもない。
でも、やりたいことがあれば、すぐにきっかけを作ってくれる。
まさに縁の下の力持ちです。
いつでも味方のおばあちゃんのもとで、悩み考え進んでいくキュッパの姿も、この絵本の素敵なところです。
二言まとめ
楽譜が読めなくても、楽器を「きちんと」演奏できなくても、音楽は楽しめることに気付かせてくれる。
読めば楽器になりそうなものを探して、自分の音楽を奏でたくなる絵本です。
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