もりねこ(3歳~)

絵本

作:くさかみなこ 絵:品田紗桜里 出版:文研出版

森のように大きなネコ。

その背中には木が生え、本当の森になっていきました。

いつしか、ネコの背中だとは気づかずに、動物たちが住み着くように。

ネコも動物たちも幸せに暮らしていましたが・・・。

あらすじ

あるところに、大きな大きなネコがいました。

生まれた時は普通のネコでしたが、成長するうちに木より大きくなってしまったのでした。

森のように大きくなったネコを、他の動物たちは「もりねこ」と呼び、怖がるようになりました。

そのため、もりねこはいつも一人ぼっちでした。

もりねこの毎日はいつも同じです。

昼間は森の中で眠り、暗くなると海へ行き、魚を捕まえお腹いっぱい食べるのです。

ある、寒い日のこと。

小鳥たちが飛んできて、もりねこの背中に住み着きました。

そこがもりねこの背中だとは気づいていない様でした。

もりねこは夜になり、いつものように海へ魚をとりに行きましたが、その日は小鳥たちを起こさないよう、静かに歩くのでした。

小鳥に教えてもらい、今度はウサギが、もりねこの背中へやってきました。

ウサギももりねこの背中に住むことに決めました。

それから、噂を聞いた動物たちが、少しずつ集まるようになりました。

冬でも温かくて、優しいもりねこの森は、みんなのおうちになっていったのです。

背中にたくさんの動物が住み着いても、もりねこは昼間は眠り、夜になると静かに動いていたので、動物たちはもりねこに気が付きませんでした。

もりねこは、背中にみんなのぬくもりを感じ、幸せな気持ちになっていました。

ところがある夜、いつものように歩いていると切り株につまづいて、転んでしまいました。

背中の動物たちは大慌て。

森から逃げていく動物たちに、もりねこが声をかけますが、振り向いた動物たちはさらにびっくり。

もりねこの大きな目が、暗闇から光っていたのです。

おばけだと勘違いして、さらに逃げる動物たち。

もりねこは、また一人ぼっちになってしまいました。

動物たちの誤解が解ける日はくるのでしょうか?

『もりねこ』の素敵なところ

  • 人知れず頑張る優しいもりねこ
  • もりねこの変わっていくつぶやき
  • 自分を知ってもらう嬉しさ

人知れず頑張る優しいもりねこ

この絵本で、なによりも印象的なのは、もの凄く大きなもりねこでしょう。

子どもたちも見た瞬間に、

「うわっ!でっかい!」

「木より大きい!」

と、その大きさに驚いていました。

そのインパクトから、どんなネコなのかと思いきや、とってもおとなしい。

昼間は寝ていて、夜は魚を食べるだけ。

その意外性にもびっくりです。

動物が住み着いたあとも変わらずおとなしいもりねこ。

動物を起こさないように歩く、優しい姿も見せてくれます。

誰からも気付かれないよう、動物たちのために頑張るもりねこ。

その姿に、子どもたちももりねこが好きになり、応援するようになっていきます。

だからこそ、転んでしまい動物たちに怖がられた時は、心が痛み、本気でもりねこが心配になります。

そして、最後の場面では、心から「よかった!」と思えるのです。

もりねこの変わっていくつぶやき

また、もりねこの心の動きが、よく出ているつぶやきも素敵なところ。

もりねこは要所要所でつぶやきます。

最初は一人ぼっちで魚を食べ終わった後に、「ひとりぼっちも気楽でいいさ」。

鳥が住み着いた後は、「ひとりのほうが気楽なのになあ」。

動物たちがたくさん住み着くと、「ひとりじゃないのも悪くはないな」。

というように、表情と相まって、もりねこの気持ちが他者と繋がり、ほぐれていく過程がとてもよくわかるようになっているのです。

自分を知ってもらう嬉しさ

さて、そんなお話の最後の場面。

これまで、気付かれないように動物たちの暮らしを支えていた、もりねこの正体がバレてしまいます。

でも、それは同時に、自分の存在を認めてもらったということでもあるのです。

知られていなくても幸せでしたが、知ってもらって仲良く出来ればもっと幸せです。

そんなことが、もりねこの姿から伝わってくるのが、この絵本のとても素敵なところです。

一歩前に出る勇気がない人に、もりねこが勇気を与えてくれるかもしれません。

二言まとめ

一人ぼっちだったもりねこが、どうぶつたちとの触れ合いを通して、一緒にいる幸せに気付いていく。

一緒にいるだけでも幸せだけど、互いをよく知ればもっと幸せになることに気付かせてくれる、優しい絵本です。

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