文:内田麟太郎 絵:喜湯本のづみ 出版:小学館
オバケは友だちなんかいりません。
でも、毎日となりにやってくるあいつが、気になります。
そんなある日、突然あいつがこなくなりました。
なんだか胸がモヤモヤし始め・・・。
あらすじ
オバケのギザギザは、友だちなんかいらないと思っていました。
ギザギザは「友だちを作るのは、寂しがり屋の弱虫がすることだ」と独り言を言いました。
そんなギザギザの声を聞いて「おれもだ」と返事をする声があります。
声のする方を見ると、1人のオバケが座っていました。
そのオバケは「おれはイガイガ」と名乗ると、それっきりそっぽを向いて、何も言わなくなりました。
次の日もとなりにイガイガが来た。
けれど、しゃべることはない。
2人はさびしんぼうじゃないからだ。
次の日も来た。
もちろん、あいさつなんてしない。
次の日、イガイガが来なかった。
なぜか、とても心配になった。
家に帰った後も心配が頭から離れない。
そして、次の日・・・。
『ともだちなんかいらない』の素敵なところ
- 素直じゃない2人の、不器用なやり取り
- 一日ずつじっくり進んでいく物語
- 最後まで素直じゃない2人
素直じゃない2人の、不器用なやり取り
この絵本で、なによりも特徴的なのは、素直じゃなさすぎるオバケでしょう。
友だちなんかいらないと言い張り、口も利かないギザギザとイガイガ。
でも、毎日同じ場所に来て、となりに座り一緒に過ごします。
なんだかお互いが気になって、チラチラ見たりもしています。
見ていると、「一緒に遊べばいいじゃん!」と、思ってしまいますが、不器用な2人はそんなこと出来ません。
最初に友だちはいらないと言ってしまいましたから。
そんな2人の、不器用ながらに心の距離が縮まっていく姿が、なんとも微笑ましくとっても素敵。
子どもたちも、
「仲良しじゃんね~」
「お話すればいいのに・・・」
と、2人が友だちになりたいことはお見通しです。
一日ずつじっくり進んでいく物語
また、この2人の日々が、一日ずつゆっくりと描かれていくのも素敵なところです。
「次の日」という決まり文句で、一日ずつ2人の関係性が描かれていきます。
出会った日から、次の日も隣に来て座るイガイガ。
次の日も隣に・・・。
と、一日ずつ過ぎることで、一緒にいるのが当たり前になってきます。
ところが、当たり前になった矢先、イガイガが来ないという事件が起こります。
心配でいてもたってもいられないギザギザ。
子どもたちも、ギザギザと一緒に、
「なんで来ないんだろう?」
「大丈夫かな?」
と、同じように心配します。
きっと、ギザギザと一緒に、イガイガとの日々を過ごしていたからでしょう。
この気持ちの揺れ動きは、一日ずつじっくり進んできたからこそだと思います。
最後まで素直じゃない2人
さて、そんな物語の結末は、まさにこの2人ならではの素直じゃないものになっています。
素直じゃないけど、きっと心の壁が一つ崩れたのだろうなと思う最後。
これがこの2人にピッタリ過ぎて、とても素敵。
「まったく素直じゃないな~」とニヤニヤさせてくれます。
子どもたちも、
「もう友だちじゃん!」
「絶対仲良しなのにね~」
「一緒にいたいくせに~」
と、ニヤニヤ。
最後のページでの、2人をずっと見ていたネズミのじいさまの一言も、見ている人の気持ちを見事に代弁していて、すごくすっきりとした気持ちで物語を終わらせてくれるのも、素敵なところです。
二言まとめ
2人のオバケの、不器用で素直じゃないやり取りが、なんとも微笑ましい。
素直に「友だちっていいよね~」と、思わせてくれる絵本です。
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