ゆきだるまのメリークリスマス(4歳~)

絵本

作:ヴォルフラム・へネル 絵:ユーリ・ヴァース 訳:いずみちほこ 出版:文溪堂 

雪の降るクリスマスの日。

あまりの寒さに雪だるまが凍えていました。

人間のクリスマスに混ざろうとしますが、温かすぎると溶けてしまいます。

雪だるまに丁度いいクリスマスは、やってくるのでしょうか?

あらすじ

とても寒いクリスマスの日。

雪だるまのカール、グスタフ、ルディの3人は、寒さに凍えていました。

なんとか、寒さをしのぐため、3人は街を歩きだしました。

歩いていると、教会の鐘の音が聞こえてきます。

そこで、教会に向かい、みんなと一緒にクリスマスの歌を歌おうと思いつきました。

しかし、教会は人でいっぱい。

とても中には入れません。

教会を諦めた3人は、レストランに行くことにしました。

レストランでは丁度一席空いていて、中に入ることが出来ました。

クリスマスメニューもやっています。

中は楽しげで温かく、いい感じです。

しかし、ルディが大変なことに気が付きました。

温かすぎて、3人の体が溶けだしていたのです。

大慌てで店を出る3人。

また、あてどもなく、街を歩くしかありませんでした。

思うようにならないことに、ルディがふてくされ始めた時・・・。

突然、子どもたちのはしゃぐ声が、通りに響き渡りました。

3人の雪だるまを見つけた子どもたちが、飛び出してきたのです。

子どもたちの取った行動とは?

雪だるまたちは、凍えずに楽しいクリスマスを過ごすことができるのでしょうか?

『ゆきだるまのメリークリスマス』の素敵なところ

  • 寒くても暑くてもダメな雪だるま事情
  • 3人の軽快で楽しそうな会話
  • 3人が一番欲しかったもの

寒くても暑くてもダメな雪だるま事情

この絵本の面白いところは、雪だるまが寒がるというところでしょう。

雪で出来ているのだから寒さに強いと思いきや、人間のように寒がる雪だるまたち。

ニンジンの鼻からは、つららが垂れて、まるで鼻水みたいです。

凍えないよう歩いてみたり、人間の街の温かな明かりに誘われて、教会やレストランに行ってみたりと、本当に寒いのが伝わってきます。

ただ、温かければいい訳ではないのも、雪だるまの辛いところ。

温かすぎると、体が溶けてしまうのです。

この思い通りにならなさが、この絵本のなんとも面白いところで、子どもたちも、

「えー、じゃあどうしたらいいの!?」

「雪で出来てるからしょうがないよ・・・」

「雪だるまだしね」

と、複雑な気持ちで頭を抱えていました。

その子どもたちの気持ちを代弁するのがルディです。

このどうしようなさに、「もういい、凍えちゃうまで、ここにずっと立ってるから」とふてくされてしまうのです。

雪だるまだからこその苦悩が、なんとも悩ましく面白いものになっているのが、この絵本の素敵なところです。

3人の軽快で楽しそうな会話

そんなやるせなさをたくさん感じる物語ですが、不思議と暗くはなりません。

それは3人の軽快なやり取りのおかげでしょう。

「ニンジンの鼻、つららが下がってるよ、変なの!」と言われ「えへへっ」と笑いあったり、

3人で凍った川を見て、「きれいだねぇ」と言い合ったり、

レストランで席に着くと、「いい感じだね」「ほんといい感じ!」「最高だね」と喜びあったり・・・。

3人の仲の良さが、会話からにじみでているのです。

見ているだけで、こちらも楽しくなってきます。

だからこそ、中々上手くいかない3人が、なんとか楽しいクリスマスを過ごしてほしいと願うのです。

3人が一番欲しかったもの

さて、そんな3人のクリスマスの結末は、とても優しく、楽しく、温かいものでした。

そして、その結末からは、3人が本当に求めていたものが、気温の温かさではなかったことが感じられます。

なぜなら、周りが真っ白になるほど寒い雪の中でも、みんな幸せそうだからです。

温かさを求めてさまよい歩いた3人の見つけた、本当の温かさ。

その温かさの中でのとても幸せそうな3人の姿。

それが、この絵本の一番素敵なところです。

二言まとめ

寒すぎても、温か過ぎてもダメという、雪だるまならではの難しさが面白い。

3人の見つけた温かさに、ほっこりと楽しい気持ちをもらうことができるクリスマス絵本です。

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