ふゆのようせいジャック・フロスト(4歳~)

絵本

作:カズノ・コハラ 訳:石津ちひろ 出版:光村教育図書

冬の妖精ジャック・フロスㇳは、イタズラが大好き。

でも、そんなジャック・フロストと友だちになれたら、どんなに楽しいことでしょう。

ただ、遊ぶ時には一つだけ、守らなければいけない約束もあるのです。

あらすじ

子どものコリンと、イヌのサミィは、森の家に住んでいた。

友だちはみんな冬ごもりの真っ最中で、コリンは退屈していた。

そんなある朝。

窓ガラスに、不思議な模様が浮かび上がっていた。

コリンとサミィが外に出てみると、誰かが家の周りに氷の粒をまき散らしていた。

名前をたずねると、その誰かは「冬の妖精、ジャックフロストさ」と答え、すぐに森の中へ逃げて行った。

コリンたちは慌てて追いかけた。

ジャック・フロストは、池を飛び越え逃げて行った。

コリンたちは、スケートぐつをはいて、追いかけて行った。

今度は、丘を飛び越え逃げていく。

けれど、コリンたちもソリを使って丘を越えた。

どこまでも追いかけてくるコリンたちに、ジャック・フロストは雪の玉を投げてきた。

コリンも一つ投げ返した。

すると、また投げてくるので、コリンもすぐに投げ返す・・・。

すごく楽しかった。

コリンとサミィ、ジャック・フロストはすっかり仲良くなり、一緒に遊ぶことにした。

けれど遊ぶ前に、ジャック・フロストは一つだけお願いをした。

それは、ジャック・フロストの前で、春の話をしないこと。

春の話をされると、たちまち魔法が溶けて、側にいられなくなるのだと。

3人はたくさん遊んだ。

遊んでいる間、コリンは春の話をしないよう、ずっと気を付けていた。

けれど、そんなある日・・・。

『ふゆのようせいジャック・フロスト』の素敵なところ

  • かわいくて魅力的なジャック・フロスト
  • 妖精と仲良くなる方法が、とても子どもらしくて楽しい
  • 切ないけれど温かく、爽やかな最後の場面

かわいくて魅力的なジャック・フロスト

この絵本の魅力はなんといっても、冬の妖精ジャック・フロスト。

家の前に氷をまき散らし、挨拶がてら帽子を放り投げ、腹が立つと雪玉をぶつけてくる。

その行動はまさに子ども。

その天真爛漫で、表情豊かな人間味がなんとも魅力的な妖精です。

中身は子どもっぽいですが、その不思議な姿や、氷の力など妖精っぽいところもたくさんあり、そのバランスが人を惹きつけてやまないのでしょう。

また、遊ぶ時に一つの約束があるのもおもしろいところです。

それは「春の話をしない」ということ。

ジャック・フロストは冬の妖精。

春を感じると消えてしまいます。

そんな「冬にしか遊べない」「春の話をしてはいけない」という制約があるからこそ、ジャック・フロストとの時間がより特別なものになるのだと思います。

妖精と仲良くなる方法が、とても子どもらしくて楽しい

さて、仲良く遊ぶ3人ですが、最初から仲が良かったわけではありません。

すぐに逃げてしまうジャック・フロストを、追いかけるところから始まります。

この仲良くなるまでが、とても楽しいの素敵なところ。

逃げ切れると思い、楽しそうに逃げていくジャック・フロスト。

「ぼくを捕まえるのは無理だよ。だって、きみたちは、池を飛び越えられないもの」

と、笑いながら池を飛び越えます。

けれど、コリンたちがスケートで滑ってくると、ジャック・フロストはびっくり仰天。

両手を挙げて驚きます。

今度は丘を飛び越えますが・・・。

と、いったように色んな手段で追いかけてくるコリンたちと、それに対するジャック・フロストの反応がおもしろく、夢中になってしまうのです。

子どもたちも、

「ジャック・フロスト飛び越えちゃったよ!」

と驚きつつも、

「コリン、すっげー!」

「ソリ楽しそうだなー」

とコリンたちにも驚いて、楽しそうで忙しそう。

最終的には、腹を立てたジャック・フロストが、雪玉を投げてくるところから投げ合いが始まり、気付けば楽しくなっていた・・・。

という、子どもらしい方法で仲良くなっている3人。

「あ!投げちゃだめだよ」と言っていた子も、

「雪合戦になっちゃったよ!」

「楽しそう!」

と、ジャック・フロスト一緒に笑顔になっているのでした。

この、いたずらっ子で素直じゃないジャック・フロストと、仲良くなるまでの自然なやり取りも、この絵本のおもしろくて素敵なところです。

切ないけれど温かく、爽やかな最後の場面

仲良くなったジャック・フロストとの楽しい時間。

ですが、いつかは終わりを迎えます。

それがこの物語の最後の場面。

別れの時は突然やってきます。

けれど、不思議と悲しみはありません。

妖精らしさと、温かな春の訪れ、そして不思議な爽やかさ。

そんな気持ちのいい空気が流れます。

きっと、どこまでも明るく前向きなジャック・フロストの言葉があったからでしょう。

その中で、もう少し冬が続いてもいいのになと思わせてくれる切なさも感じるのは、きっとジャック・フロストとの冬がとても楽しいものだったから。

温かさと切なさが混ざり合った最後の場面も、この絵本の本当に素敵なところです。

二言まとめ

不思議で楽しい冬の妖精ジャック・フロストと、友だちになりたくさん遊ぶことが出来る。

読めばジャック・フロストを探したくなり、冬がもっと楽しくなる絵本です。

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