作:川端誠 出版:BL出版
植木鉢にのっぺらぼうを植えてみます。
すると、何が起こるでしょう?
普通は芽が出て、葉が出て、花が咲きます。
でも、のっぺらぼうの場合・・・。
あらすじ
植木鉢がありました。
そこにのっぺらぼうの顔を植えました。
毎日水をやっていたら・・・。
目が出ました。
次に、歯が出ました。
さらに、鼻が咲きました。
そこへ、耳の形をした変なセミが顔の横にとまり、「みみ、みみ、みみー」と鳴きました。
のっぺらぼうでなくなったのっぺらぼうが、「け、け、けけけけけ」と笑いだすと顔に毛が生えてきました。
そして・・・。
『うえきばちです』の素敵なところ
- 植木鉢にのっぺらぼうを植えるという発想力
- 繋がりがわかるとおもしろい言葉遊び
- 衝撃的過ぎる絵
植木鉢にのっぺらぼうを植えるという発想力
この絵本のなによりおもしろいのは、植木鉢にのっぺらぼうを植えるという設定と世界観。
しょっぱなから、「なにを植えるんだろう」とワクワクしている子どもの予想を、遥か斜め上に越えてきます。
「のっぺらぼう!?」
と、子どもの驚きようといったらありません。
この時点で、絵本の世界に引きずり込まれているのです。
ただ、出オチで終わらないのがこの絵本のすごいところ。
ページが進むごとに、衝撃度が増していくのです。
世界観が独特過ぎて、予想のしようがありません。
そんなこの絵本でしか味わえない世界観と展開が、とても素敵なところです。
繋がりがわかるとおもしろい言葉遊び
しかし、予想外の驚きだけではないのも、この絵本のおもしろいところ。
脈絡がないように見えて、その中心には法則性や、言葉遊びがしっかりあります。
ただ、読んでいてもおもしろいですが、それに気づいた時、この絵本の奥深さや本当のおもしろさがわかり、知的好奇心がものすごく刺激されるのです。
のっぺらぼうは、しっかりと花の成長になぞらえて成長していきます。
目(芽)が出て、歯(葉)が出て、鼻(花)が咲きます。
これに気付くとおもしろさが倍増します。
のっぺらぼうを育てる過程が、本当に花を育てているように見えてくるのです。
また、その言葉の繋がりにも気付きます。
花が咲いた後にも、たくさんの言葉遊びが散りばめられていて、どれも意味がわかると、
「あ~そういうことか!」
と、とても納得感と発見がありおもしろい。
読めば読むほど、言葉の意味がわかればわかるほどおもしろくなっていく奥の深さも、この絵本の素敵なところだと思います。
衝撃的過ぎる絵
さて、そんなこの絵本ですが、そこに絶対欠かせないのが衝撃的過ぎる絵です。
このインパクトがすご過ぎる。
目の不気味さ。
歯の不気味さ。
耳のセミの気持ち悪さ。
突然笑い出し、毛の生えてくる恐ろしさ・・・。
笑えるはずの場面でも聞こえてくる子どもたちの悲鳴。
「こわ!」
「気持ち悪い!」
心に訴えかけてくる怖さがあるのです。
でも、この不気味さがあるからこそ、この絵本独特の不可思議さに妙な説得力が生まれています。
魔法の不思議さではなく、呪いの不思議さというような。
この不気味さも、間違いなくこの絵本がくせになってしまう魅力の一つでしょう。
二言まとめ
のっぺらぼうが育っていく姿に、誰もが度肝を抜かれてしまう。
予想外の物語と衝撃的な絵、そして楽しい言葉遊びが見事に溶け合ったおばけ(?)絵本です。
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