文:斉藤洋 絵:高畠純 出版:講談社
いつも信じられないような話ばかりするカールおじさん。
そのため、みんなから「ほら吹き」と呼ばれていました。
そんなカールおじさんが、ロシアに旅をした時のお話です。
この話、ほんとかなあ?
あらすじ
ほら吹きカールおじさんは、本当はそんな名前じゃありません。
でも、名前が長すぎるのと、信じられないようなおかしなことばかり言っているので、みんなほら吹きカールおじさんと呼ぶようになったのです。
そんなほら吹きカールおじさんが、馬にまたがりロシアを旅した時のことです。
辺りは大雪で真っ白。
そろそろ街につくはずですが、雪ばかりで待ちなど見当たりません。
唯一、雪の中に十字の杭が一本立っているだけ。
ほら吹きカールおじさんは、仕方がないので、その杭に馬を繋ぎ、馬のお腹の下で眠ったのでした。
目が覚めると、とてもいい天気。
積もっていた雪も、全部溶けてなくなっていました。
でも、馬を繋いでいた杭も、馬も見当たりません。
その時、高いところから馬の鳴き声が聞こえてきました。
見上げると、馬が教会の塔のてっぺんにある十字架から、ぶら下がっていました。
そう、ほら吹きカールおじさんが馬を繋いだ十字架は、雪に埋もれた教会の十字架だったのです。
そこで、ほら吹きカールおじさんは、馬の手綱に向けてピストルを撃ちました。
すると、馬の手綱に見事命中。
落ちてくる馬を抱きとめると、馬にまたがりそのまま旅を続けたって言うんです。
ほんとかなあ?
ほら吹きカールおじさんの、ロシアでの話はまだまだ続きます。
『ほらふきカールおじさん』の素敵なところ
- 信じられないようなおもしろい話の数々
- 「ほんとかもしれない」と思える絶妙な信じられなさ
- おもしろさを倍増させる「ほんとかなあ」の一言
信じられないようなおもしろい話の数々
この絵本のおもしろいところは、なんといってもほらふきカールおじさんの、信じられないエピソードの数々でしょう。
大きく、4つのエピソードが入っているのですが、そのどれもが驚くものばかり。
聞いたこともないような話に、子どもたちは聞き入ります。
最初に、ほら吹きと言われているのに、気付けば真剣に聞き、
「えー!」
「カールおじさんすげー!」
「ほんとに!?」
と、すっかり夢中になっています。
それだけ魅力的な話が詰っているのです。
純粋にお話としておもしろいのが、この絵本の大きな魅力の一つです。
「ほんとかもしれない」と思える絶妙な信じられなさ
では、なぜこんなにも、ほらふきカールおじさんの話が、子どもを夢中にさせるのか?
それは、「本当かもしれない」と思えてくる、絶妙なリアルさとのバランスにあると思います。
どの話も信じられないようなものばかりですが、荒唐無稽ではありません。
ロシアという雪国を考えたら、「あるかもしれない」と頭の片隅で思わせるものばかりです。
「雪が積もり過ぎて、建物が埋まっている」や「手綱を撃って命中させる」は、あるかもしれないと思わせられます。
でも、「馬を抱きとめる」は、「流石にないでしょ!」と信じられません。
こんな風に、ちょっとずつ信じられない度を上げてくるので、お話の中に入り込んで夢中になってしまうのです。
この、「もしかしたら本当かもしれない」という感覚が、ほらふきカールおじさんの話に妙な説得力を生み、魅力を生み出しているのです。
おもしろさを倍増させる「ほんとかなあ」の一言
さて、そんな中で、この絵本ならではのおもしろさを生み出しているのが「ほんとかあ」の一言です。
エピソードの最後に使われる決まり文句になっています。
この一言が、お話に入り込んでいる子どもたちを、現実の世界に引き戻してくれるのです。
その様子は、ほらふきカールおじさんの話に、すっかり騙されそうになっている子の肩を叩くようなもの。
「そうだった!このおじさんはほら吹きだった!」
と、思い出させてくれるのです。
ただ、ほらふきカールおじさんの話が、嘘だと言っているわけではありません。
信じるか信じないかは、見ている人にゆだねられています。
この「ほんとかなあ」の一言があることで、ただお話を信じるだけでなく、けれど嘘だと断言できるわけでもない、この絵本ならではのジレンマのような、おもしろい感覚を味あわせてくれるのです。
二言まとめ
ほらふきカールおじさんの、信じられないようなエピソードに、ワクワクと驚きと笑いが止まらない
ほら吹きだとは言われているけど、嘘を言っているとは言われていない、信じていいのかダメなのかというジレンマが楽しい絵本です。
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