ほらふきカールおじさん~ロシアのたび~(4歳~)

絵本

文:斉藤洋 絵:高畠純 出版:講談社

いつも信じられないような話ばかりするカールおじさん。

そのため、みんなから「ほら吹き」と呼ばれていました。

そんなカールおじさんが、ロシアに旅をした時のお話です。

この話、ほんとかなあ?

あらすじ

ほら吹きカールおじさんは、本当はそんな名前じゃありません。

でも、名前が長すぎるのと、信じられないようなおかしなことばかり言っているので、みんなほら吹きカールおじさんと呼ぶようになったのです。

そんなほら吹きカールおじさんが、馬にまたがりロシアを旅した時のことです。

辺りは大雪で真っ白。

そろそろ街につくはずですが、雪ばかりで待ちなど見当たりません。

唯一、雪の中に十字の杭が一本立っているだけ。

ほら吹きカールおじさんは、仕方がないので、その杭に馬を繋ぎ、馬のお腹の下で眠ったのでした。

目が覚めると、とてもいい天気。

積もっていた雪も、全部溶けてなくなっていました。

でも、馬を繋いでいた杭も、馬も見当たりません。

その時、高いところから馬の鳴き声が聞こえてきました。

見上げると、馬が教会の塔のてっぺんにある十字架から、ぶら下がっていました。

そう、ほら吹きカールおじさんが馬を繋いだ十字架は、雪に埋もれた教会の十字架だったのです。

そこで、ほら吹きカールおじさんは、馬の手綱に向けてピストルを撃ちました。

すると、馬の手綱に見事命中。

落ちてくる馬を抱きとめると、馬にまたがりそのまま旅を続けたって言うんです。

ほんとかなあ?

ほら吹きカールおじさんの、ロシアでの話はまだまだ続きます。

『ほらふきカールおじさん』の素敵なところ

  • 信じられないようなおもしろい話の数々
  • 「ほんとかもしれない」と思える絶妙な信じられなさ
  • おもしろさを倍増させる「ほんとかなあ」の一言

信じられないようなおもしろい話の数々

この絵本のおもしろいところは、なんといってもほらふきカールおじさんの、信じられないエピソードの数々でしょう。

大きく、4つのエピソードが入っているのですが、そのどれもが驚くものばかり。

聞いたこともないような話に、子どもたちは聞き入ります。

最初に、ほら吹きと言われているのに、気付けば真剣に聞き、

「えー!」

「カールおじさんすげー!」

「ほんとに!?」

と、すっかり夢中になっています。

それだけ魅力的な話が詰っているのです。

純粋にお話としておもしろいのが、この絵本の大きな魅力の一つです。

「ほんとかもしれない」と思える絶妙な信じられなさ

では、なぜこんなにも、ほらふきカールおじさんの話が、子どもを夢中にさせるのか?

それは、「本当かもしれない」と思えてくる、絶妙なリアルさとのバランスにあると思います。

どの話も信じられないようなものばかりですが、荒唐無稽ではありません。

ロシアという雪国を考えたら、「あるかもしれない」と頭の片隅で思わせるものばかりです。

「雪が積もり過ぎて、建物が埋まっている」や「手綱を撃って命中させる」は、あるかもしれないと思わせられます。

でも、「馬を抱きとめる」は、「流石にないでしょ!」と信じられません。

こんな風に、ちょっとずつ信じられない度を上げてくるので、お話の中に入り込んで夢中になってしまうのです。

この、「もしかしたら本当かもしれない」という感覚が、ほらふきカールおじさんの話に妙な説得力を生み、魅力を生み出しているのです。

おもしろさを倍増させる「ほんとかなあ」の一言

さて、そんな中で、この絵本ならではのおもしろさを生み出しているのが「ほんとかあ」の一言です。

エピソードの最後に使われる決まり文句になっています。

この一言が、お話に入り込んでいる子どもたちを、現実の世界に引き戻してくれるのです。

その様子は、ほらふきカールおじさんの話に、すっかり騙されそうになっている子の肩を叩くようなもの。

「そうだった!このおじさんはほら吹きだった!」

と、思い出させてくれるのです。

ただ、ほらふきカールおじさんの話が、嘘だと言っているわけではありません。

信じるか信じないかは、見ている人にゆだねられています。

この「ほんとかなあ」の一言があることで、ただお話を信じるだけでなく、けれど嘘だと断言できるわけでもない、この絵本ならではのジレンマのような、おもしろい感覚を味あわせてくれるのです。

二言まとめ

ほらふきカールおじさんの、信じられないようなエピソードに、ワクワクと驚きと笑いが止まらない

ほら吹きだとは言われているけど、嘘を言っているとは言われていない、信じていいのかダメなのかというジレンマが楽しい絵本です。

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