いちごハウスのおくりもの(4歳~)

絵本

作:村中李衣 絵:えがしらみちこ 出版:世界文化社

ひまりのおじいちゃんは、ビニールハウスでイチゴを育てています。

ひまりもよく、おじいちゃんの手伝いをしていました。

でも、ある出来事がきっかけで、ひまりはおじいちゃんとケンカしてしまいます。

あらすじ

女の子ひまりのおじいちゃんは、おばあちゃんと一緒にビニールハウスでイチゴを育てていました。

ビニールハウスの名前は「いちごハウス」。

ひまりの自慢でした。

いちごハウスでとれるイチゴは、とても美味しいのです。

8月。

イチゴの実が出来るまで、ひまりは葉っぱを丁寧にちぎるお手伝いをします。

イチゴの根に陽の光を当てるためです。

その姿を見て、おじいちゃんが褒めてくれました。

イチゴの花が咲き揃うと、ミツバチの仕事が始まります。

ハウスの中を飛びまわり、花粉を別の花へ届けるのです。

土曜日。

ひまりは、友だちのかほちゃんを連れて、いちごハウスに来ました。

ところがハウスの様子がなんだか変。

機械の調子がおかしいようで、ハウスの中が暑くなっています。

ミツバチたちも、天井に頭をぶつけています。

それを見て、かほちゃんはミツバチを怖がり、帰ってしまったのでした。

夕方にはハウスの中は元通りになりました。

みんな安心して、にこにこです。

でも、ひまりだけは違いました。

「ミツバチが暴れたことで、かほちゃんが帰ってしまった」と、泣き出してしまったのです。

すると、おじいちゃんが強い口調で言いました。

「ミツバチは悪くない。あいつらが働いてくれないとイチゴは出来ないんだ」と。

それを聞いたひまりは、ミツバチもおじいちゃんも嫌いだと、ハウスのお手伝いをやめてしまいました。

10月になりました。

ハウスでは青いイチゴが膨らんできています。

ところがその頃、おばあちゃんが腰を痛めてしまいました。

自分が手伝いをしなかったからだと心配するひまりに、おばあちゃんはイチゴを一つ取ってくるよういいました。

ひまりの取ってきた青いイチゴを見て、おばあちゃんは言いました。

イチゴのつぶつぶは全部めしべだったところで、そこにミツバチが花粉をつけてくれたのだと。

夜、ひまりはこっそりハウスをのぞいてみました。

静かな畑に、おじいちゃんが一人立っています。

おじいちゃんはひまりに気付くと、手招きしてくれました。

そして、イチゴの葉を見ながら、ひまりに話し始めました・・・。

『いちごハウスのおくりもの』の素敵なところ

  • 子どもの目線から見たイチゴ栽培
  • イチゴが出来るまでがよくわかる
  • 最後に描かれる嬉しい風景

子どもの目線から見たイチゴ栽培

この絵本の素敵なところは、ビニールハウスでのイチゴ栽培を、子どもの目線を通して見られることです。

そこには子どもならではの、好奇心や気付き、怖さ、言葉などが盛りだくさん。

そして、そのどれもがイチゴ栽培を通して、自然への気付きへと繋がっています。

「イチゴさんが、お日さまの力をちゃんともらえますように」とはっぱをちぎったり。

友だちが跳び回るミツバチを見て、「刺されたら、やだ!」と怖がったり。

「ここにミツバチがおしべの黄色い粉をちゃんとつけてくれたんだよ」とイチゴを見ながら、おばあちゃんに教えてもらったり。

一つ一つの経験や人からの言葉を通して、たくさんの頑張りがあってイチゴが出来ていることを実感するのです。

きっと、子どもの目線を通しているからこそ、そのことが見ている子にも自然に伝わっていくのでしょう。

イチゴが出来るまでがよくわかる

また、イチゴの成長過程や季節感も、しっかりと知ることが出来るのも素敵なところです。

花が咲く前に、葉っぱをちぎる。

花が咲いたら、ミツバチに花粉を届けてもらう。

そしてやっと実が出来るのです。

ただ、水をあげていればいいわけではなく、たくさんの頑張りの結果だということがわかります。

夏に育て始めて、収穫できるのは冬~春。

長い時間もかかります。

最初は、

「ミツバチきらい!」

「刺されたらヤダ!」

と言っていた子も、物語が進んでいくと、

「ミツバチさんいないと、イチゴできないんだね・・・」

とひまりと一緒に考え方が変わっていくのが印象的。

知ったことで、見え方が変わってきたのでしょう。

イチゴを育てる大変さや、イチゴのつぶつぶが花だった時の名残だということを知ると、イチゴを食べる時の見え方も変わってくるかもしれません。

物語の中だけでなく、巻末に「おいしいいちごができるまで」というページもあり、少し詳しくイチゴの苗~収穫までの過程を知ることが出来るのも嬉しいところ。

かわいいイラストで、わかりやすく描かれています。

最後に描かれる嬉しい風景

さて、そんな物語の最後は、嬉しい風景で終わります。

ちゃんと、いて欲しかった人物がいるのです。

「どうなったんだろうな?」

と、心の片隅に残っていた疑問をしっかり解消してくれて、すっきりと楽しい気分で終わらせてくれます。

そんな最後の場面を見ると、

「あーよかった!」という安心感と、「イチゴ食べたい!」という食欲が一緒に湧きあがることでしょう。

この最後のほっこりとする場面も、とても素敵なところです。

二言まとめ

ひまりと一緒に、イチゴが元気に育つまでを体験できる。

イチゴが出来るために、たくさんの頑張りがあることを実感できる絵本です。

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