やめて!(6歳~)

絵本

作・絵:デイビッド・マクフェイル 訳:柳田邦男 出版:徳間書店

嫌なことへ「やめて!」と言う勇気。

その小さな勇気が、世界を変えていくことだってあるかもしれません。

この小さな男の子の「やめて!」のように。

あらすじ

※この絵本には、ほんとんど文字がありません。

男の子が手紙を書き、切手を貼って、ポストへ向かい家を出た。

家を出て少し行くと、空を戦闘機が飛んでいき、向こうの丘にある家を爆撃した。

少し行くと、戦車が道路を走っていき、近くの家へ砲撃した。

また少し行くと、兵隊が歩いてきて、民家へと押し入った。

さらに行くと、おじいさんが大統領のポスターへ落書きをしていた。

それを見ていた警察が、おじいさんを追いかけて制裁を加えた。

ついにポストが見えてきた。

でも、そこにいたどこかのお兄さんが、男の子の帽子をはたき、殴ろうとしてきた。

男の子は「やめて!」と言った。

けれど、お兄さんは馬鹿にしたように「やめてだって?」と笑った。

さらに殴りかかろうとするお兄さんに、男の子はさらに大きな声で叫んだ。

「やめて!」

すると、お兄さんはびっくりして座り込んでしまった。

男の子はポストへ手紙を入れた。

帰ろうとする男の子を、お兄さんが追いかけてくる。

男の子が気付かずに帰り道を歩いていると、落書きをしたおじいさんと警察が仲良く話している。

民家に押し入った兵隊が、そこの家の人にプレゼントを配っている。

砲撃した建物の向こうでは、戦車が土地を耕している。

その時、お兄さんが男の子へ追いついた。

お兄さんは、はたき落してしまった帽子を届けに来たのだった。

お兄さんが帽子を渡すと、空に戦闘機が姿を現した。

そして、空からパラシュートで自転車を2人へ落としていった。

2人は自転車に乗り、仲良く街を走って行った。

男の子の手紙にはこんなことが書いてあった。

「大統領様。ぼくの学校にはきちんとした規則があります。突き倒してはいけない。殴ってはいけない。この国にはそういう規則がないのですか?」と。

『やめて!』の素敵なところ

  • 「やめて!」と意思を示すことには世界を変える力がある
  • 手紙を投函する前後の世界の変化
  • とても純粋でシンプルで真理を言い表した、戦争をしてはいけない理由

「やめて!」と意思を示すことには世界を変える力がある

この絵本のなによりも素敵なところは、「やめて!」とはっきり言うことの大切さと、それの持つ力の大きさをストレートに伝えてくれることです。

男の子は「やめて!」と言うことで、2つの理不尽を止めることになります。

ひとつはどこかのお兄さんからの、身近な暴力。

殴りかかってくるお兄さんに「やめて!」とはっきり意思表示をし、その暴力をやめさせます。

もうひとつは、戦争という大きな暴力。

「やめて!」という意思を込めた手紙でやめさせます。

どちらも、男の子の小さな行動がなければ、止めることは出来なかったでしょう。

嫌だと思ったら、きっぱり「いや!」「やめて!」と言っていいこと。

そして、小さな一歩だとしても、行動を起こすことの重要性が伝わってきます。

理性的だけれど、はっきりと断固とした意思表示の大切さを、男の子は自分の姿を通して見せてくれているのです。

きっと、みんながこの男の子のように一人ひとり考えて、「やめて!」と言う世界であれば、戦争なんて起こらないのでしょうね。

手紙を投函する前後の世界の変化

そんな「やめて!」ということでの世界の変化。

それがこの絵本では、とても対照的に明確に描かれているのもおもしろいところです。

手紙の投函前と、投函後で世界は大きく変わります。

投函前は、生活圏に戦闘機や戦車が当たり前にいる、とても緊張感のある世界。

第二次世界大戦中の、ドイツなどはこんな感じだったのだろうと思わせられる雰囲気です。

常に暴力と隣り合わせで、安心感などありません。

生活に戦争が入り込んでいるところに、生々しさを感じます。

ですが、手紙を投函した後は、世界ががらりと変わります。

戦車も兵士も戦闘機も、平和と幸せのために使われます。

兵士も町の人も笑顔で溢れています。

前半の緊張感がすごかった分、後半の安堵感がとても大きいのでしょう。

そんな世界を見ていると、絶対に後者の世界がいいと思えます。

後者の世界であるためにも「やめて!」と言い続けることが必要なのです。

とても純粋でシンプルで真理を言い表した、戦争をしてはいけない理由

さて、そんな物語の始まりは、男の子から大統領への手紙でした。

そのシンプルに真理を言い表している内容も素敵なところです。

なぜ戦争をしてはいけないのか?

男の子の答えは単純明快です。

「人を突き倒したり、殴ってはいけないから」

人に暴力をふるってはいけないというのは、当たり前のことなのです。

でも、それが守られない戦争は、矛盾と理不尽だらけです。

この男の子の言い分を否定できる人はいるのでしょうか?

そんな平和や戦争の本質を、考えさせられるのも、この絵本のとても素敵で奥深いところです。

二言まとめ

小さな男の子が、暴力へ毅然とした「やめて!」を突きつけ、世界を変える。

嫌なことへ「やめて!」と言う大切さと、それの持つ力を感じられる絵本です。

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