作:西内ミナミ 絵:なかのひろたか 出版:福音館書店
めんどくさがりの男の子ゆうちゃん。
歯磨きをしないで遊んでいると、牙が生えてきました。
そこで、オオカミの家の子になることに。
でも、オオカミの家でもめんどくさがって・・・。
あらすじ
男の子ゆうちゃんが朝起きると、お母さんが洋服に着替え歯を磨くように言いました。
でも、ゆうちゃんはめんどくさがって、歯磨きもせず、パジャマで遊んでいました。
すると、歯がとんがって伸びてきたではありませんか。
お母さんに「牙のある子はオオカミさんの子どもにおなり」と言われましたが、ゆうちゃんは全然平気。
さっさと家を出ていってしまいました。
ゆうちゃんが森を歩いていると、オオカミの子がかごめかごめをしていました。
ゆうちゃんも入れてもらって遊んでいると、オオカミのお母さんが呼びに来ました。
子どもの数を数えてみると、なにやら一人多いですが、気にせず家に連れていってくれました。
家に着くと、オオカミのお母さんが「帽子を脱ぎなさい」と言います。
オオカミの子どもたちは、帽子を脱いできましたが、ゆうちゃんはめんどくさがって脱ぎません。
そのままお昼ごはんを食べようとすると、帽子がむくむく持ち上がってきました。
頭から角が生えてきたのです。
それを見たオオカミのお母さんは「角のある子はオニさんの子どもにおなり」と言われてしまいました。
でも、ゆうちゃんは全然平気。
さっさと出かけていきました。
森の奥へ行くと、オニの子どもたちが鬼ごっこをしていました。
ゆうちゃんも入れてもらって遊んでいると、オニのお母さんが呼びに来ました。
数を数えると、一人多いみたいですが、気にせず家へ連れて帰りました。
家に着くと、お風呂の時間です。
湯船につかる前に、お尻をよく洗いなさいと言われましたが、ゆうちゃんはめんどくさがりそのまま湯船に飛び込みました。
湯船から上がると、ゆうちゃんのお尻に尻尾が。
それを見たオニのお母さんは「尻尾の生えている子はトロルさんの子どもにおなり」と言いました。
でも、ゆうちゃんは全然平気。
さっさと出かけていきました。
森の奥の奥へ来ると、トロルの子どもが花火で遊んでいました。
ゆうちゃんも入れてもらって遊んでいると、トロルのお母さんが呼びに来ました。
数を数えると、一人多いみたいでしたが、気にせず家へ連れて帰りました。
家に着くと、パジャマに着替えなさいと言われました。
ゆうちゃんもめんどくさがらずにいい返事。
なぜなら、最初からパジャマを着ているから。
けれど、ベッドが足りません。
ゆうちゃんがトロルのお母さんの大きいベッドに入ると、「人間のにおいがするよ。人間の子は出ておいき」と追い出されてしまったのでした。
ゆうちゃんが暗い道を進んでいくと、一軒の小屋がありました。
いい匂いもしてきます。
ゆうちゃんが小屋に入ると、そこにはくむくじゃらの生き物がいました。
ゆうちゃんが「あんただれ?」と聞くと、「めんどくさいサイ」だと答えます。
そして、ゆうちゃんの牙と角と尻尾を見ると「俺に似ているから子どもになれ」と言ってきました。
それを聞いたゆうちゃんは、あっさりと了解。
めんどくさいサイの子どもになってしまいました。
でも、その翌日・・・。
『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』の素敵なところ
- 子どもの怖い代名詞へ自分から行く、怖いのもの知らずなゆうちゃん
- わかりやすい繰り返しの中で変化していくゆうちゃんの体
- 自分よりもめんどくさがりな相手
子どもの怖い代名詞へ自分から行く、怖いのもの知らずなゆうちゃん
この絵本でなによりもおもしろいのは、怖いもの知らずなゆうちゃんです。
まず、お母さんに叱られても全然平気。
お母さんに言われたら怖い言葉の代名詞。
「出ていきなさい!」
「他の家の子どもにおなり!」
これが全く聞きません。
それどころか、「いってきまーす!」と元気に出て行ってしまう始末。
これには子どもたちも、
「えー!?ほんとに行っちゃうの!?」
と、ビックリ仰天。
さらにおもしろいのが、その行先です。
これも怖いものの代名詞「オオカミ」「オニ」「トロル」の三大巨頭がそろい踏み。
「怖いから絶対やだ!」「オニの所なんて行きたくない!」と子どもたちが言う中、平気で行って一緒に遊び始めてしまいます。
この図太さと怖いもの知らずさが、自分には出来ないことをやってくれるワクワク感と、怖いもの見たさのドキドキ感を与えてくれるのです。
わかりやすい繰り返しの中で変化していくゆうちゃんの体
そんなゆうちゃんの冒険は、わかりやすい繰り返しで描かれます。
家を出て、子どもに会い、数えられ、家に行き、めんどくさがって追い出される。
毎回この構成で進んでいきます。
流れがわかっているからこそ、安心して見ることができたり、「数えられた時に一人多い」などのお約束のおもしろさが感じられるのです。
でも、この繰り返しの中で一つ変わっていくことがあります。
それがゆうちゃんの体です。
最初は牙だけだったのが、角が生え、尻尾まで生えてきます。
一つ家を経るごとに、人間から遠ざかっていくゆうちゃん。
驚きとおもしろさに加え、「どうなっちゃうんだろう・・・」という不安も感じます。
この不安感が、最後の場面へのいいスパイスとなっているのです。
自分よりもめんどくさがりな相手
さて、その最後の場面がなんともゆうちゃんらしいものでした。
色々なことを「しなさい」と言われて来たゆうちゃん。
ですが、めんどくさいサイのところでは違います。
自分よりもはるかにめんどくさがり屋のサイ。
これまで、そんな相手に会ったことはないでしょう。
それを反面教師にして・・・なんてことはありません。
ゆうちゃんはゆうちゃんです。
でも、ちゃんと人間に戻り家に帰ります。
けれど、この経験を特に活かさず、家でめんどくさがっていることでしょう。
この教訓的でなく、ゆうちゃんらしいままで終わるのが、この物語の本当に素敵なところだと思います。
二言まとめ
めんどくさがりなゆうちゃんの自由奔放さや、「怖い」生き物たちの家でのやり取りがおもしろい。
めんどくさがり屋を突き詰めるとどうなるかがわかるで本です。
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