作・絵:さとうわきこ 出版:フレーベル館
大好きな父さんは冒険家。
とても元気で楽しいけれど、あんまり家にいなくて寂しい思いもする。
だから、ぼくは決めているんだ。
あらすじ
父さんと男の子はとても仲良し。
父さんがいると、みんな楽しくなって踊り出す。
父さんがラッパを吹くと男の子も吹く。
父さんと一緒だと、ラッパを上手く吹ける気がするから。
父さんが太鼓を叩くと、男の子も太鼓を叩く。
父さんと一緒だと、みんないい調子に太鼓を叩ける。
でも、父さんはすぐにいなくなってしまう。
旅に出るからだ。
待っている間、一人でラッパを吹いてもいい音は出ない。
それにつまらない。
友だちと遊んでいても時々父さんを思い出す。
そうすると、胸の中の何かが足りない気がする。
父さんを待っている間、どんな所にいるか想像してみる。
海の見える南の島、雪の降る高い山・・・。
そんなある日、父さんのにおいがしたような気がする。
父さんの声も聞こえてきたような。
そこへ、本当に父さんが帰ってきた。
不思議なお面をかぶり、男の子をびっくりさせようとしている。
でも、顔を見なくても、地響きのように大きな歌声で父さんだってわかる。
男の子はかけていって、父さんをぴしゃぴしゃ叩く。
父さんもぼくをバンバン叩く。
その後2人、顔をくしゃくしゃにして笑うのがいつものこと。
次の日、父さんが作ってくれたお面をかぶり、野原に行った。
そこで父さんの姿を見ながら、男の子はあることを考え決意する・・・。
『だいすきとうさん』の素敵なところ
- 遊び心満載の楽しい父さん
- 父さんがいない時間の寂しさ
- 父さんの旅を前向きに考える男の子の決意
遊び心満載の楽しい父さん
この絵本の父さんは、謎に包まれています。
どこへ旅しているのかも、どんな仕事をしているのかもわかりません。
でも、とにかく遊び心が豊かで楽しい人です。
ラッパも吹けるし、太鼓も叩ける。
独特のセンスのお面だって、簡単に作ってしまう。
自分の子どもだけじゃなく、よその子や、イヌ、ネコなどの動物まで一緒に楽しませてしまいます。
まさに遊びの名人。
そんな父さんを見て子どもたちも、
「いいな~、楽しそう!」
「あのお面かっこいい!」
「うちのパパはサッカーしてくれる!」
など、楽しい気分になったり、自分の父さん自慢をしだしたり。
楽しい気分をもらっているようでした。
父さんがいない時間の寂しさ
でも、楽しい時間は長く続きません。
父さんはすぐに旅に出てしまうのです。
この時の男の子の悲しい気持ちが、とても丁寧に描かれているのも、この絵本の素敵なところ。
その寂しい思いがとても伝わってくるのです。
いつも寂しい訳ではありません。
けれど、友だちと遊んでいる時に時々思い出したり、一人になった時間に寂しさを感じたり・・・。
その寂しい感じがとてもリアルで、自分が寂しい時の気持ちを思い出させるのでしょう。
男の子と一緒に「早く帰ってこないかなあ」という気持ちが湧いてくるのです。
父さんの旅を前向きに考える男の子の決意
しかし、寂しいと嘆き続けるだけではありません。
男の子なりに考え、決意をしているのです。
帰ってきたお父さんと遊んでいる時に、心の中で語られる決意。
それはとても前向きで、お父さんをとても深い部分で尊敬していることがわかるものでした。
旅に出ている間の寂しさもひっくるめて、お父さんを受け入れている証でしょう。
「楽しいから好き」なのではなく、「お父さんの生きる姿が好き」なのだろうなと思わせてくれます。
この男の子の、前向きな力強さも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
とても楽しいけれどすぐに旅に出てしまう父さんとの、楽しさと寂しさが丁寧に描かれる。
その中での子どもの前向きな決意に、父さんへの尊敬を感じられる絵本です。
コメント