シラユキさんとあみあみモンスター(4歳~)

絵本

作:アンネマリー・ファン・ハーリンゲン 訳:野坂悦子 出版:BL出版

ヤギのシラユキさんは、編み物の名人。

その腕は、編んだ生き物が本物みたいに動き出すほど。

でも、おっちょこちょいな性格が、困った事件を引き起こしてしまうのです。

あらすじ

真っ白なヤギのシラユキさんは、編み物が大好きです。

いつもヤギの毛糸で、靴下を編んでいました。

でも、靴下じゃないものを編みたい気分になり、ヤギを編んでみることに。

すると、毛糸から子ヤギが生まれ、動き出したではありませんか。

大喜びのシラユキさんでしたが、そこへヒツジおばさんが現れました。

そしていきなり、ヒツジおばさんは、ヤギの毛糸やシラユキさんの編み目に、ケチをつけ始めたのです。

それを聞いたシラユキさん。

怒りながら、無我夢中で毛糸を編んでいきました。

そしてできたのが・・・オオカミでした。

編み棒から飛び出したオオカミは、ヒツジおばさんを食べてしまいました。

それを見たシラユキさんは真っ青。

大急ぎで毛糸の閉まってある部屋へ隠れました。

どうしようか考えたシラユキさんは、すぐさまトラを編み始めました。

編み終えると、すぐさまトラをドアの外へ追い出します。

すると、トラがオオカミをパクリ!

けれど、困ったのはその後です。

トラがドアの前に居座って、シラユキさんは部屋から出られなくなってしまいました。

考えたシラユキさん。

トラよりももっと大きくて怖いものを編むことに。

そうして出来たのは、とても大きなあみあみモンスター。

でも、このまま編み上げたらトラの時と同じです。

そこで、シラユキさんはある工夫を思いついたのでした。

シラユキさんの作戦はいうまくいくのでしょうか?

『シラユキさんとあみあみモンスター』の素敵なところ。

  • 毛糸から飛び出てくる生き物たち
  • 耳に残るシラユキさんの編み音
  • 毛糸ならではの解決策

毛糸から飛び出てくる生き物たち

この絵本の醍醐味は、なんといっても毛糸から生み出される生き物たちでしょう。

編み上げると、するりと毛糸から出てきて動き出す生き物たち。

子ヤギ、オオカミ、トラ、モンスター。

本当に色々な生き物が出てきます。

この生き物たちに、毛糸感がしっかりあるのもおもしろいところ。

表面に編み目感や、端っこに毛糸が飛び出ているなど、編んで作られたことが感じられるデザインになっています。

また、色が混ざっているのもおもしろく。

片足だけ青いヤギがいたり、トラの尻尾の先だけ白黒だったりするのです。

「途中で毛糸が足りなくなったのかな?」

「ここだけ色変えてかわいくしたのかな?」

など、動物でありつつ、編み物としての存在感もしっかりあるのが、編み物の生き物だからこその不思議なおもしろさに繋がっているのだと思います。

さらに、編んでいる途中のドキドキ感も楽しいところ。

オオカミなどは、編んでいる途中からすでに出来上がった顔が牙を向いていて、それにいち早く気付いた子ヤギたちが逃げ出しています。

でも、シラユキさんだけは気付いていません。

子どもたちも子ヤギと一緒に、

「オオカミ出てきてるよ!」

「完成させちゃだめ!」

と危険に気付いていますが、止まらないシラユキさんの編み棒。

そんな先が見えているのにどうしようもないドキドキ感が楽しいのです。

耳に残るシラユキさんの編み音

さて、そんなシラユキさんの編み物ですが、楽しいのは出来た後だけではありません。

作っている途中も楽しいのが素敵なところ。

シラユキさんが編む時には、歌のような決まり文句があります。

それが、

「チキチキチッキ、チッキチキ、みぎにひとめ、ひだりにひとめ、ひとめあんだら、またひとめ」

というもの。

これが耳に心地よく、シラユキさんがリズミカルに編んでいく様子が、直感的に伝わってくるのです。

聞いているだけでも楽しく、一緒に歌いたくなってしまいます。

しかも、編んでいる時の気持ちが、入ってくることもあります。

プンプンと怒っている時、ドキドキと急いでいる時。

その時々で少し歌が変わるので、シラユキさんの心情が編み棒を通して伝わってくるのです。

これが編んでいる時の楽しさと、臨場感を生んでいるのでしょう。

編んでいく過程も、この絵本のとても楽しいところになっています。

毛糸ならではの解決策

そんな楽しい編み物ですが、シラユキさんは後先考えないので、大変なことになってしまいます。

オオカミを作り、オオカミより強いトラを作り・・・と、怖いものを作っていったせいで自分がピンチに。

そして次に作ったのが、より大きくて怖いモンスター。

でも、流石に3度目はシラユキさんも考えます。

その解決策が、なんとも毛糸らしいものなのが、この絵本の素敵なところ。

きちんと毛糸に始まり、毛糸に終わるのです。

しかも、ただ毛糸の性質を活かしただけでなく、編み物という性質も活かしているのが秀逸。

思わず「なるほど!」と思わせてくれます。

この見事な解決策も、この絵本のとてもおもしろいところです。

二言まとめ

編み物から次々出てくる怖い生き物たちに、ハラハラドキドキが止まらない。

毛糸ならではのおもしろさがふんだんに散りばめられた、毛糸だからこそできた物語です。

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