文・絵:イヴォンヌ・ヤハテンベルフ 訳:野坂悦子 出版:福音館書店
6人兄弟の末っ子怪獣モッタ。
怪獣らしく、怖がらせようとするけれど、いつもかわいがられてしまいます。
そんなある日、モッタの前に巨大な怪獣が!
・・・と思いきや。
あらすじ
小さな怪獣モッタは、パパとママと6人の兄ちゃんと暮らしています。
モッタの兄ちゃんたちはみんな強くて、おどかしっこが大好き。
一日中、暴れ回っています。
モッタもおどかしっこがしたくて仕方ありません。
ですが、兄ちゃんたちの中で思い切り叫んでも、兄ちゃんたちはちっとも怖がりません。
それどころか「お前はほんとにかわいいなあ」とよしよしとなでられてしまうのです。
今度は兄ちゃんたちが昼寝をしている時におどかしてみます。
でも、足を踏み鳴らし叫んでいるのに、だれも目を覚ましませんでした。
そこで、モッタは高い木に登り大きな声でほえました。
その声を聞き、みんなが集まってきました。
けれど誰も怖がることはなく、パパが危ないからと木から降ろしてしまいました。
悔しくて、腹が立ったモッタは、森へ出かけていきました。
森の中でモッタは叫びます。
すると、動物たちがびっくりして顔を出しました。
モッタが動物たちをおどかしてみると、動物たちは慌てて逃げていきます。
嬉しくなったモッタがどんどん追いかけていくと、動物たちの姿が見えなくなりました。
それでもモッタが進んでいくと・・・。
目の前に、なにか大きくて黒いものが現れました。
たくさんの目がこちらを見ています。
モッタは怖くて近づくことができません。
しばらく見ていると、怖いものの中から動物たちが出てきました。
大きくて黒いものは穴の空いた朽木だったのです。
モッタは朽木に近づくといいことを思いつきました・・・。
『ちいさなかいじゅうモッタ』の素敵なところ
- 末っ子ならではのジレンマがよくわかる
- かわいいモッタの脅し文句
- 体の小ささを工夫で補う痛快な結末
末っ子ならではのジレンマがよくわかる
この絵本のおもしろいところは、モッタを通して語られる末っ子あるあるでしょう。
にいちゃんたちのように、一人前に扱って欲しいけど、かわいがられてしまう。
にいちゃんたちと同じことをしても、自分だけ「危ない」と止められてしまう。
そんな「なんで自分だけ・・・」という、末っ子ならではの不満。
それが、モッタの言葉や、しかめっ面、いらだった顔から、ものすごく伝わってくるのです。
特に、お兄ちゃんお姉ちゃんがいる子は、なおさら共感できるでしょう。
本当はかっこいいと言われたいのに、なにをしても「かわいい」と言われてしまうジレンマ。
そんなことを、モッタの姿を通してものすごく感じられるのです。
かわいいモッタの脅し文句
それでも、モッタはお兄ちゃんたちを脅かすべく、かかんにチャレンジします。
その時の脅し文句が、なんともかわいいのが素敵なところ。
モッタには脅かす時に必ず言うセリフがあります。
それが、
「うおーっ!がうーっ!ぼくは、強くて怖い怪獣だ!ぼくのとんがった歯で食べちゃうぞ!」
というもの。
これがモッタの小さな体と、かわいい仕草で言われるので、なんともかわいいのです。
これを見ていると、お兄ちゃんたちが、かわいがる気持ちもわかります。
特に弟や妹がいる子は、なおさら気持ちがわかるでしょう。
モッタのかわいい姿を通して、モッタの気持ちだけじゃなく、お兄ちゃんの気持ちも伝わってくるのがおもしろいところです。
体の小ささを工夫で補う痛快な結末
さて、そんなモッタですが、かわいがられてばかりもいられません。
森でとてもいいものを見つけます。
こうして、お兄ちゃんたちへのリベンジに向かうのです。
この、体の小ささとかわいい見た目を、知恵や工夫、仲間の力を借りて乗り越えるのもこの絵本のとても素敵なところです。
ないものねだりをしてもしょうがありません。
なければ工夫するしかないのです。
そして、工夫をすれば、大きなお兄ちゃんたちにも太刀打ちできることも教えてくれます。
工夫した結果、見事に作戦が成功する痛快さも、この絵本の見どころ。
その結末に、とても心がすっきりすることでしょう。
二言まとめ
末っ子ならではの、お兄ちゃんたちと同じように扱ってもらえない悔しさが、ひしひしと伝わってくる。
その悔しさを工夫で乗り越える姿が、とても痛快で気持ちのいい絵本です。
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