作:ジャンヌ・ブベール 出版:冨山房
大きくて、たくさんの作物や草花が育つおじいちゃんの畑。
その姿は、四季の移り変わりとともに変化していきます。
畑を眺めるたび、きっと新たな発見があることでしょう。
あらすじ
とても大きなおじいちゃんの畑。
インゲン、ニンジン、ジャガイモ、ラディッシュなど、たくさんの作物を育てています。
たくさんの木や草花も生えています。
今は春。
おじいちゃんの畑を孫娘が手伝って、種まきをしているところです。
少し時が経ち、若葉が出てきて、木には花が咲き始めました。
タンポポも咲いています。
タンポポが綿毛になったころ。
木の花は落ち、実が姿を現しました。
イチゴは食べごろに、ジャガイモも土の中で大きくなっています。
この時期は草取りに大忙し。
とても大変な仕事です。
夏になりました。
ヒマワリが元気に咲いています。
ブドウにベリー、トマトなど、多くの作物たちが実ります。
秋になり、草花の色が黄色く変わり始めます。
ジャガイモやリンゴなどやブドウなど、たくさんの作物を収穫していきます。
木の葉が落ち、野菜が少なくなりました。
冬の始まりです。
冬は畑も休みます。
根を掘り起こしたり、掃除をして春を待ちます。
雪が降り始め、畑は真っ白な雪景色。
おじいちゃんは壊れたところを修理して、孫娘は雪だるまをうくって遊びます。
こうして、畑の一年は過ぎ、また春が始まります。
『おじいちゃんのはたけ』の素敵なところ
- 一年間、同じ視点で見続ける畑
- 作物を中心にした、変化していく自然
- 発見と興味が止まらない賑やかな畑
一年間、同じ視点で見続ける畑
この絵本のおもしろいところは、畑が定点カメラのような俯瞰視点で描かれていることです。
ページをめくっても、季節が変わっても、この視点は変わりません。
常に同じ視点で描かれるのです。
そして、同じだからこそ、前のページとの変化がとてもよくわかります。
葉っぱだけだったものに実ができていたり、予想と違う成長の仕方をしていたり。
視点が同じだからこそ、迷うことなく、その植物の成長を追うことができるのです。
また、畑全体を見ても、視点が固定されていることで、季節による色合いの変化や、雪景色になる姿など、季節の変化が直感的にわかるようになっています。
変化していく姿がとてもわかりやすいページ構成は、この絵本のとても大きな魅力です。
作物を中心にした、変化していく自然
さらに、変化していくのが畑と作物に限定されていない所も、この絵本の素敵なところ。
作物を中心にしつつ、畑をとりまく植物や生き物も生き生きと描かれているのです。
葉が茂ってくると、鳥が飛んできてイモムシをついばんでいたり、
夏が近づいてくると、アゲハ蝶が飛んできたり、
ベリーができるとその一つを鳥が食べ、その葉の影にはトカゲが這う。
夏にはヒマワリが大きく咲き、秋にはしおれてくる姿が描かれている。
など、畑と作物を中心にしながらも、自然と関わりながら存在していることや、自然の中の一部だということが当たり前に描かれているのです。
子どもたちも、
「あ!鳥が食べに来た!」
「ネコに食べないで!ってしてるよ」
「ヒマワリが咲いてるから夏だよ!」
と、自然も含めての畑を楽しみ、自然があることでより季節の移り変わりがわかりやすくなっている様でした。
発見と興味が止まらない賑やかな畑
さて、そんなおじいちゃんの畑は、発見に満ち満ちています。
葉っぱしかなかった作物が、育つにつれ何になるかわかる。
イチゴの実がなっている。
謎の木の実がある。
トカゲが隠れている。
いつの間にか収穫されている。
などなど、挙げればきりがありません。
これらは、とても細かく描き込まれた絵と、文章や説明の少なさのおかげだと思います。
どこか一点に注目させられないことで、自由に全体を見て、気になるところを見つけ、たくさんの発見をしていくのでしょう。
そして、なにか見つけると、前のページに戻りたくなるのもおもしろいところ。
「前はどうなってたっけ?」
と、ページを戻し、
「あー!この葉っぱか!」
とさらに発見をする。
そんな、自分で発見して、さらに調べる楽しみが詰っているのです。
二言まとめ
最初から最後まで、同じ視点だからこそわから、畑の変化する姿や発見がおもしろい。
何度もページを行ったり来たりして、変化と発見を確かめたくなる自然絵本です。
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