せかいのひとびと(6歳~)

絵本

作:ピーター・スピアー 訳:松川真弓 出版:評論社

世界には色々な人がいて、色々な文化がある。

自分の国とは違う所を見ることで、自分たちと同じ所も見えてくる。

そんな世界の多様性を感じさせてくれる絵本です。

あらすじ

今、地球にはおよそ80億人もの人がいる。

しかも1時間で、1000万人も増えているみたい。

80億の人が全員で手を繋ぐと、約1200万㎞。

地球を300周できるし、月までの距離の訳31倍。

こんなにたくさんの人がいるのに、同じ人は誰もいない。

体の形からして違う。

でも、産まれた時、小さいのはみんな同じ。

肌の色も目の形、鼻の形、顔、口、耳・・・みんな違う。

髪の毛の色も質も違う。

着るものも色々だし、着ていない人もいる。

みんなおしゃれをするのが好きだけど、おしゃれも人によって違っている。

利口な人もいるし、そうでない人もいる。

たいていの人は親切で、いい人だけど、中には悪い人もいる。

音を立てるのが好きな人もいれば、うるさい音が大嫌いな人もいる。

休みの日の過ごし方もみんな同じじゃない。

世界には色々な遊びがある。

遊ぶのはどこの国の人も好きだけど、遊びの中身は全然違う。

住んでいる家も色々。

けれど、どの家も屋根があるのは一緒。

同じことで笑う人もいれば、泣く人もいるし、

他の人が真似できないことを簡単にやってしまう人もいる。

たいていの人はみんなで何かするのが好きだけど、一人でいるのが好きな人もいる。

ペットの種類や、祭りや祝日の種類も色々なものがある。

好きな食べ物も同じじゃない。

ある人にはごちそうでも、食べるどころか触るのも嫌がる人もいる。

宗教の決まりで食べられないものもある。

世界にはたくさんの宗教があるし、信じている神様も様々だ。

仕事の種類も山ほどある。

たいてい一生懸命働いているけど、怠けている人や、働きたくても働けない人もいる。

お金持ちも、とても貧しい暮らしをしている人もいる。

どこの国の人も話をする。

世界には7000種類の言葉があって、言葉の不自由な人が声を立てずに気持ちを通わすサインもある。

文字の書き方、読み方もとてもたくさんある。

ほんの少しの人たちは、他の多くの人を命令して動かす権力を持っている。

人間は身分とか、地位とか、階級なんていうおかしな仕組みを作ってきた。

みんな同じ地球で暮らし、空気を吸って太陽に照らされ、最後には誰もが死ぬのに。

死んだあとでも、長いこと名前が残る人もいるけれど。

人々はどこにでも住んでいて、みんなそれぞれ違っている。

しかし、ある人は、自分と違っていると言うだけで、よその人たちを嫌う。

でも、もしみんなが同じになったら・・・?

『せかいのひとびと』の素敵なところ

  • 「色々」が目で見えるように描かれ実感できる
  • たくさんの違う所と一緒な所
  • 自分の視点を別の立場へ移し替え、視野を広げてくれる

「色々」が目で見えるように描かれ実感できる

この絵本にはとてもたくさんの色々な違いが出てきます。

その「色々」が、目で見て実感できるようになっているのが、とても素敵なところです。

目や鼻、体の形なら、実際に色々な形の目や鼻、体が描かれているし、

遊びならば、24の国々の遊びが一つずつ紹介されています。

家も、ペットも、お祭りも、食べ物も、この絵本で「色々」「たくさん」と出てきたら、本当に色々なものが目に見えるように出てくるのです。

「色々」「たくさん」と言われただけだと、「色々あるんだな~」と流してしまいがちですが、目の前に本当に「色々」が現れると、その多様性を実感できます。

その中で、見たこともないものに興味を持ったり、自分の国との共通点を見つけたりと、「色々」を見ることで、世界への興味も深まるのです。

たくさんの違う所と一緒な所

こんな風に、たくさんの違いを感じられるこの絵本。

ですが、多様性の中の共通点も大切に描いているのも素敵なところです。

家の形や、材質が国によって全く違うところを伝えた後に、屋根があるのは同じだと気付かせてくれたり、

遊び方はみんな違うけれど、遊ぶのが好きなところは変わらない。

など、違いだけに目が行きがちなところを、共通点にも目を向けさせてくれるのです。

それを聞いて、

「ほんとだ!みんな屋根はある」

「雨が降ると大変だもんね」

「みんな遊ぶの好きなんだ」

など、子どもたちも違いを感じつつ、同じでもあることに気付かされている様でした。

さらには、どんなに違っても、同じ地球に住んでいる人間であることは同じだという、とても大きな共通点を伝えてくれているのも素敵なところ。

その視点に立てば、肌の色や、言葉の違いなどが、とても小さなもだと感じることでしょう。

違い一つ一つ見つめながら、大きな共通点を知ることで、子どもたちに多様性を自然に受け止めさせてくれるのです。

自分の視点を別の立場へ移し替え、視野を広げてくれる

ただ、この絵本は違いと共通点を伝えるだけは終わりません。

自分の視点を、色々な立場に置き換えてくれるのです。

例えば、服を着ていない人たち。

そのまま都会に来ると、人々に笑われます。

ですが、都会の人がそのまま、彼らの集落に行くと、笑われるのは都会の人です。

これは子どもたちも同じで、服を着ていない人の話を聞き、

「え~服着ないの!?」

「恥ずかしいよ~」

と笑っていましたが、都会の人が集落の人に笑われるところを見ると笑いはなくなりました。

きっと、自分たちと都会の人が重なったのでしょう。

自分との違いだけで笑うことの無意味さに、気付いたのかもしれません。

他にも、多数派の白人が黒人たちを睨みつけていたけれど、黒人が多数派の場所では白人がにらみつけられているなど、自分だけの視野がいかに狭いものかを感じさせてくれるのです。

きわめつけは、違いの全くない「みんな同じ」な世界を描き出し、見せてくれます。

その世界のつまらなそうなこと。

そんな世界を目の当たりにすると、違うということの大切さが身に染みてわかります。

いつも見ている自分からの世界を、他の立場の視点からも見ることで、たくさんのことに気付かせ、視野を広げてくれるのも、この絵本だからこそのとても素敵なところです。

二言まとめ

世界の人々の「色々」な違いを見ることで、その多様性を知りつつ、自分たちとの共通点にも気付かせてくれる。

「色々」が言葉だけでなく、とても詳しく、わかりやすく、目に見える形で描き出されている絵本です。

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