作:神沢利子 絵:山脇百合子 出版:あかね書房
女の子が段ボールで作ったおうち。
「動物たちが遊びに来るかもしれない」
そう思いながら家の中で待っていると・・・。
あらすじ
女の子が大きな段ボールで家を作り始めた。
それを見ていた弟も、家にテープを貼ったり、絵を描き始めた。
それを見た女の子が、怒って弟をぶつと、泣き出してしまった。
女の子は、段ボールの家を持って、弟のいない外へと逃げ出した。
はらっぱに家を置くといい気持ち。
女の子は家の中で、だれがやってくるか想像した。
うさぎが来て、一緒にケーキを食べるかもしれない。
その後、トランプをするけど、負けたウサギはきっと目を赤くして、帰ってしまう。
キツネの子どもが来るかもしれない。
恥ずかしがり屋で、遠くから家を見ているから、女の子が声をかけてあげる。
嬉しそうに入ってきたキツネの子どもが、レモンティーを頼むけど、一口飲むとこんこん咳が出て、逃げて行ってしまう。
レモンティーってすっぱい時があるから。
いえいえ、アナグマの子どもたちが来るかもしれない。
3人兄弟で、いい匂いがすると入ってくる。
ハンバーグをごちそうすると、こぼしたり、お皿をひっくり返したりもう大変。
お腹がいっぱいになると、相撲を始める。
家の中が壊れちゃうから、外に出てもらわないと。
だれがやってくるのか、どんどん想像が広がっていく。
その時、だれかの足音が聞こえてきた。
やってきたのは・・・。
『わたしのおうち』の素敵なところ
- まるで女の子と話しているような、語り口調で進んでいく物語
- 動物たちが家にやってくる楽しい想像
- 素敵でかわいい最初のお客さん
まるで女の子と話しているような、語り口調で進んでいく物語
この絵本は女の子がこちらに語りかけてくるような、会話で物語が進んでいきます。
「段ボールの箱でおうちを作るの。お人形さんのじゃない、私のおうちよ。」
「草の葉っぱが揺れて、いい匂いの風がおうちの中にも入っていくでしょ。」
というように、まるで段ボールの家の中で、目の前の女の子と話しているような気分になるのです。
同時に、女の子の思っていることも全て伝えてくれるので、自分が女の子になって、段ボールの家の中にいる気分にもなるから不思議。
主人公にもお客さんにもなれてしまいます。
どちらにしても、女の子がとても身近で、新しい友だちのように感じられるのが、この絵本の素敵なところです。
動物たちが家にやってくる楽しい想像
そんな女の子ですが、段ボールの家の中で、どんなお客さんがやってくるか想像します。
想像の中で、ウサギやキツネ、アナグマなど、色々な動物たちがやってきます。
そのどれもが個性的で、しかも動物の特徴を織り込んだエピソードになっているのが、とても素敵。
ウサギならゲームに負けて、目を赤くして帰ってしまう。
キツネの子どもは、「いいおうちだなあ。はいってみたいなあ。そう思っても見てるの。でも、なにも言わない。」と、とても恥ずかしがり屋な様子がよく伝わってきます。
されに、レモンティーを飲むとこんこん咳が出るところも、キツネの鳴き声と繋がっています。
アナグマはとにかく元気な男の兄弟と言う感じで、わんぱく感が食事の風景から物凄く伝わります。
どのエピソードも、動物たちの様子や、心境が細かく表現されていて、女の子の想像だったことを忘れてしまうほど。
その想像が楽しそうで、素敵すぎて、「本当に来てくれたらいいなぁ」と、見ている人の想像の世界を豊かにしてくれるのです。
素敵でかわいい最初のお客さん
さて、この物語の最後の場面。
色々な想像をしていたら、本物の足音が聞こえてきます。
ですが、外にいたのは予想外のお客さんでした。
ただ、段ボールの家をとても素敵だという気持ちは、想像の動物たちと一緒です。
この最後の場面の、最初のお客さんは、想像の世界とは違いとても現実的。
現実の世界で段ボールの家を作り、想像の世界で動物たちと過ごした女の子。
ですが、最後の場面で現実の世界に戻ってきて、そこで実際に楽しい時間を過ごすのです。
現実の世界と、想像の世界にしっかりとした区切りがあるからこそ、二つの世界の行き来が楽しいのでしょう。
最後に現実の世界で、最初の場面の伏線も回収して終わる物語に、子どもたちも満足そう。
「よかったね~」
「お客さんちゃんと来たね」
「本当に動物がきたら楽しいよね~」
と、楽しさと安心感と想像の広がりを感じているようでした。
この最初のお客さんによって、現実の世界での楽しさをしっかり感じて物語が終わるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
自分の作った家に、色々な動物が遊びに来るという夢のような想像の世界がとっても楽しい。
同時に、現実の世界での、自分で作った家にお客さんが来る嬉しさも、同じくらい感じられる絵本です。
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