作:苅田澄子 絵:伊藤夏紀 出版:あかね書房
体の色を自由自在に変え、だれにも見つからない大泥棒ドロン。
そんなドロンから、予告状が届いたからさあ大変。
ハリネズミ警察署vsドロンの大捕り物が開幕です。
あらすじ
ある日、ハリネズミ警察署のチクリン警部へ、予告状が届いた。
それをカメレオン泥棒のドロンからの予告状。
「満月の夜に、金の冠をいただく」という内容だった。
ドロンは、世界中の宝を盗む、世界一の大泥棒。
チクリン警部は、大急ぎで金の冠の警備を始めることにした。
そして、満月の夜・・・。
パリの美術館に着いたドロンは、厳重な警備の中、体の色を変え、美術品の中に溶け込みながら、冠を目指した。
たどり着いたのは真っ暗な部屋。
真ん中に金の冠が輝いている。
体を真っ黒にしたドロンは、長い舌を伸ばして冠を引き寄せようとした。
・・・と、舌が冠に触れたとたん、辛くて体の色がめちゃくちゃに変わり始めてしまった。
なんと、冠に激辛カレーが塗ってあったのだ。
このチャンスを見逃さなかったのがチクリン警部と警備隊。
一斉にドロンに飛び掛かり、ついにドロンを捕まえることに成功した。
牢屋に放り込まれたドロン。
けれど、諦めてはいなかった。
体の色を変え、ドロンがいなくなったと思わせた隙に、脱獄したのだ。
それを知ったチクリン警部は「犯人は現場に必ず戻る」と、美術館へ駆け出した。
一方美術館では、本当にドロンが金の冠の元へ戻ってきていた。
だが、台座の上の金の冠が無い。
悩んでいるドロンだったが、ハリネズミ警察隊の一人が大きな袋を抱え横切るのを見逃さなかった。
怪しく思ったドロンは、ハリネズミを追いかけた。
そのドロンを見つけたチクリン警部は、ドロンを追いかけた。
どんどん追っていくが、ハリネズミは警察署に戻らない。
怪しさが増していく中、それぞれが違うものを目指す奇妙な状況が続く。
一体、ハリネズミの正体とは?
そして、ドロンはまた捕まってしまうのでしょうか?
『カメレオンどろぼうドロン』の素敵なところ
- 泥棒vs警察の王道だからこそ熱い対決
- 本気で探さないと見つからないドロンのかくれんぼ能力
- 第三勢力の登場で、大きく展開していく物語
泥棒vs警察の王道だからこそ熱い対決
この絵本の見どころは、なんと言っても泥棒vs警察の大捕り物にあるでしょう。
予告状から始まる、警察と泥棒の騙し合い。
言うなれば、ルパンvs銭形警部。
怪盗キッドvsコナン。
もう、予告状が届いた時点で、おもしろいに決まっています。
厳重な警備に見つからないように進んでいくドロンの凄さ。
それに対する、ドロンが舌を伸ばすことを計算した、冠に激辛カレーを塗っておく作戦での逆転劇。
こんな緊迫した状況に、ハラハラドキドキしない訳がありません。
子どもたちも、本当に夜の美術館にいるかのように、息を潜め見守っていたのも印象的。
絵本を通して、緊張感が伝わっている様でした。
本気で探さないと見つからないドロンのかくれんぼ能力
この緊張感には、ドロンの本気の隠れ方も影響していると思います。
美術館までの道のりや、美術館の中で美術品に隠れるドロンは、本気で見失うレベルなのです。
隠れているものを探すタイプの絵本を年長組辺りに読むと、「ここにいた!」と一瞬で見つけられてしまうことが多いのですが、この絵本は「え?どこにいる?」「あ、ここにもいたんだ!」と、本気で見失っている子どもたち。
自分でも中々見つけられないからこそ、潜入しているリアリティを感じられているのかもしれません。
第三勢力の登場で、大きく展開していく物語
さて、ドロンと警察だけで完結すると思われた対決。
まさかのダークホースが現れます。
それがどこか違和感のあるハリネズミ警察。
冠が入っていると思しき袋を抱え、警察署ではないどこかへ向かっていくのです。
この第三勢力の登場が、物語の結末を一気にわからなく、おもしろくしてくれます。
さらには、ドロンの運命まで変えてしまうから驚きです。
子どもたちも、
「まさかそんな風になるとは・・・」
「びっくりしたけど、おもしろかった!」
と、だれも予想できなかったみたい。
まるで、ミステリー小説を読み終わったかのような表情をしていました。
王道かと思いきや、予想外の展開と結末に向かっていく意外性も、この絵本のとても素敵で読み応えのあるところです。
二言まとめ
宝をめぐる、泥棒vs警察という、王道だからこその熱い騙しあいの緊張感がたまらない。
さらにそこからの、まさかの展開まで用意されている、本格ミステリーのような絵本です。
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