作:長谷川摂子 画:降矢なな 出版:福音館書店
とっても不思議でちょっぴり怖い・・・。
そんなひと夏の白昼夢のようなミステリアスなお話を読みたい時にぴったりのこの絵本。
読み聞かせるとドキドキ感で静かになる場面と、ワクワクで心躍りわいわいと賑やかになる場面のコントラストが印象的です。
その独創的な世界観をぜひ味わってみてください。
この絵本のすごいところ
物語の始まりはいつもの町、いつもの日常なのに主人公のかんたの友だちがみんないなくなっているところから始まります。静かな中にも何かが起こりそうな雰囲気に、子どもたちはドキドキして息をのみます。
そして神社にたどり着き、めちゃくちゃの歌を歌った所から一気に物語が進みます。
ちんぷく まんぷく あっぺらこの きんぴらこ じょんがらぴこたこ めっきらもっきら どおんどん
すると風が吹き、木の穴に吸い込まれ、着いたところは夜の山・・・
そこに空飛ぶ丸太に乗って3人の化け物がやってきます。遊ぼうと言ってくる化け物たち。
しかし「いやだ!化け物なんかと遊ぶかい!」と怖がることなく断ってしまいます。さあ、これには化け物が怒って襲ってくる。
・・・と思いきや、「遊んでよー!」と泣き出します。
そこでドキドキしていた子どもたちの緊張は一気にほどけて笑顔に。「おばけなのに泣いてる!」と大笑い。この空気感の変化が本当にすごい。ぜひ体験してほしいところです。
ここからは化け物たちと遊ぶ楽しく明るい雰囲気に。子どもたちも「すごーい!「一緒にやりたい!」「私はこの子がいい!」などワイワイと盛り上がります。
そして遊び疲れて化け物が眠ってしまうと、不思議なことに子どもたちも遊び疲れたかのように静かになります。
そして、かんたがさみしくなって「おかあ・・・」と呼ぼうとすると、急に化け物たちが起き上がり止めにかかりますが間に合いません。「おかあさん!」と叫ぶと銀の光が渦巻いて、気づくと穴に吸い込まれた木の前に立っていました。
この疾走感から一番始めの日常の静けさへの切り替えは一見の価値ありです。
そしてお母さんから「かんちゃん、ごはんよ」と呼ばれることでいつもの日常に帰ってきたことが感じられます。
そして最後に「うたをうたえばまた3人にあえるかな、とおもうけど、かんたはあのうたをわすれてしまってどうしてもおもいだせないーきみならおもいだせるかな?」
という一文で終わります。何度もこの絵本を見ている子どもたちはこのページになるとソワソワし始めます。そして最後まで読み終えたと同時に、待ってましたと言わんばかり「ちんぷく まんぷく・・・」と大合唱が始まります。
この絵本の物語への没入感は本当にすごいのでみなさんもぜひ読み聞かせをしてみてください。
おすすめの読み方
- 場面に合わせたペース・声のトーン
- ページめくりを大切に
- 3人の化け物になりきろう
物語の場面転換がとても面白い絵本なので、場面に合わせた読み方で没入感をさらに上げていきましょう。
また、場面転換とページがリンクしているので、ページの切り替わりと同時に読み方のギアチェンジをしていきましょう。
そして個性的な3人の化け物に声の出し方で誰がしゃべっているのかわかりやすくしましょう。
具体例
最初の場面では落ち着いたトーンで静かに読んでいき、違和感のある日常を表現していきます。
神社について「ちんぷく・・・」の歌をやけくそ気味に歌ったらギアチェンジです。
ページをめくると同時に「するとどどーっと風が吹き」から夜の山に出るまでハイテンポで一気に読みます。
夜の山に着いたらいったん落ち着きリズムを整えて、化け物たちの到着を待ちます。
そして化け物たちが現れたらかんたとのやり取りを感情豊かに読んでいきます。大喜びで遊びに誘い、断られて大泣きして・・・と。
楽しい雰囲気でたくさん遊び、最後はみんなであの歌を歌います。場のテンションは最高潮。全力で歌いましょう。子どもたちも歌っているはずです。
お腹が空いてお餅を食べるところからトーンとペースを落ち着かせていきます。
お化けが眠って静かなペースで読み進めていきます。
ここからが最後の山場。「おかあ・・・」と呼ぼうとしてページをめくったところから一気に走り抜けます。
お化けが飛び起き、口を抑えにかかり、間に合わず元の世界へ飛んでいく・・・。
少し間を置いてページをめくると元の木の前。ここからは日常に戻り、落ち着いたペースとトーンで終わりまで読んでいきます。
「きみなら思い出せるかな?」のあとは子どもが歌っていたら見守ってもいいですし、落ち着いて終わるのもいいと思います。
この読んでいる方も、見ている方もワクワクドキドキを味わえる、そんな楽しい絵本です。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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