モンスター・ムシューとめんどり(4歳~)

絵本

作:おぼまこと 出版:絵本館

とても美味しい卵を、山ほど産むめんどりがいました。

その卵で作るオムレツは大評判。

その評判を聞いた怪物は、自分もオムレツが食べたくなり、めんどりをさらっていってしまいます。

あらすじ

あるところに、おばあさんとめんどりが暮らしていました。

おばあさんは、めんどりを娘のようにかわいがっていました。

そのめんどりは、普通のめんどりとは違います。

朝から晩まで卵を産み続け、しかも、その卵はとても美味しかったのです。

一人では食べきれないので、おばあさんはオムレツを作り、友だちにごちそうしていたのでした。

めんどりの噂は、山奥に住むモンスター・ムシューの耳にも入りました。

ムシューは早速山を越え、おばあさんの家までやってきました。

そして、おんどりの鳴き声をまね、めんどりをおびき出すと、自分の住処へとさらっていってしまったのです。

住処に帰ったムシューは、めんどりに卵を産むように言いますが、一日待ってもめんどりは卵を産みませんでした。

怒ったムシューがめんどりを食べてしまおうとしたその時、めんどりが思わず卵を産んだのでした。

気をよくしたムシューは食べるのをやめ、めんどりに卵を産ませることにしました。

めんどりは仕方なく、卵を産み始めました。

来る日も来る日も、めんどりは卵を産み続け、産んだ卵は山のようになっています。

ところがある日、めんどりは卵を一つも産めなくなってしまいました。

それを見たムシューは、めんどりを食べてしまうことに決め、口を開けました・・・。

めんどりはこのまま食べられてしまうのでしょうか・・・?

『モンスター・ムシューとめんどり』の素敵なところ

  • 不気味でわがままなモンスター・ムシュー
  • 予想のはるか上を行く卵の増え方
  • 勧善懲悪だけど、なんだか力の抜ける結末

不気味でわがままなモンスター・ムシュー

この絵本には、おばあさんとめんどりの、幸せな暮らしを脅かす悪者が存在します。

それが、モンスター・ムシューです。

不気味な見た目の通り、わがままで、悪賢く、いじわるです。

もう、最初から最後まで嫌なやつ。

都合が悪くなると、すぐにめんどりを食べてしまおうとします。

でも、その突き抜けた悪さがわかりやすく、物語を盛り上げてくれているのです。

特に最後の場面で、しっかりやられてくれる様は痛快で、捨て台詞まで悪役を忘れません。

このまわかりやすいムシューの悪役っぷり、モンスターっぷりは、この絵本のとても素敵なところです。

予想のはるか上を行く卵の増え方

そんなムシューに捕まっためんどりは、卵を産まされることになってしまいます。

首には縄をかけられ、とても悲痛な場面です。

なのに、卵の増え方が尋常じゃないので、なんだかちょっとおもしろく見えてくるから不思議です。

子どもたちも、思わず卵を一つ産んだ場面では、

「かわいそう・・・」

「ひどすぎるよ!」

と憐み、心配していたのに、卵を産み続ける場面では、

「え!?そんなに産むの!?」

「産み過ぎじゃない!?」

と、山のように増えていく卵に、ツッコミの声へと変わっていました。

悲しい場面なのか、おもしろい場面なのかわからなくなるほどの、卵の産みっぷりもこの絵本のおもしろいところです。

勧善懲悪だけど、なんだか力の抜ける結末

さて、そんな物語の最後の場面では、ついにムシューへの反撃が始まります。

しっかりと追い返し、勧善懲悪で終わります。

ですが、その追い返し方が、なんともかわいく、平和で、癒されるのです。

特にその絵面がおもしろい。

めんどりが食べられる寸前という緊迫感から、一気にかわいさとゆるさが溢れだし、ちょっと笑ってしまいます。

この緊迫感とゆるさとのギャップも、この絵本のとても魅力的なところです。

二言まとめ

ムシューの不気味さと意地悪さと、めんどりの悲惨な境遇に心を痛める悲しい物語・・・。

そこからの、痛快だけどなんだかゆるい結末とのギャップが、たまらなくおもしろい絵本です。

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