作:おぼまこと 出版:絵本館
とても美味しい卵を、山ほど産むめんどりがいました。
その卵で作るオムレツは大評判。
その評判を聞いた怪物は、自分もオムレツが食べたくなり、めんどりをさらっていってしまいます。
あらすじ
あるところに、おばあさんとめんどりが暮らしていました。
おばあさんは、めんどりを娘のようにかわいがっていました。
そのめんどりは、普通のめんどりとは違います。
朝から晩まで卵を産み続け、しかも、その卵はとても美味しかったのです。
一人では食べきれないので、おばあさんはオムレツを作り、友だちにごちそうしていたのでした。
めんどりの噂は、山奥に住むモンスター・ムシューの耳にも入りました。
ムシューは早速山を越え、おばあさんの家までやってきました。
そして、おんどりの鳴き声をまね、めんどりをおびき出すと、自分の住処へとさらっていってしまったのです。
住処に帰ったムシューは、めんどりに卵を産むように言いますが、一日待ってもめんどりは卵を産みませんでした。
怒ったムシューがめんどりを食べてしまおうとしたその時、めんどりが思わず卵を産んだのでした。
気をよくしたムシューは食べるのをやめ、めんどりに卵を産ませることにしました。
めんどりは仕方なく、卵を産み始めました。
来る日も来る日も、めんどりは卵を産み続け、産んだ卵は山のようになっています。
ところがある日、めんどりは卵を一つも産めなくなってしまいました。
それを見たムシューは、めんどりを食べてしまうことに決め、口を開けました・・・。
めんどりはこのまま食べられてしまうのでしょうか・・・?
『モンスター・ムシューとめんどり』の素敵なところ
- 不気味でわがままなモンスター・ムシュー
- 予想のはるか上を行く卵の増え方
- 勧善懲悪だけど、なんだか力の抜ける結末
不気味でわがままなモンスター・ムシュー
この絵本には、おばあさんとめんどりの、幸せな暮らしを脅かす悪者が存在します。
それが、モンスター・ムシューです。
不気味な見た目の通り、わがままで、悪賢く、いじわるです。
もう、最初から最後まで嫌なやつ。
都合が悪くなると、すぐにめんどりを食べてしまおうとします。
でも、その突き抜けた悪さがわかりやすく、物語を盛り上げてくれているのです。
特に最後の場面で、しっかりやられてくれる様は痛快で、捨て台詞まで悪役を忘れません。
このまわかりやすいムシューの悪役っぷり、モンスターっぷりは、この絵本のとても素敵なところです。
予想のはるか上を行く卵の増え方
そんなムシューに捕まっためんどりは、卵を産まされることになってしまいます。
首には縄をかけられ、とても悲痛な場面です。
なのに、卵の増え方が尋常じゃないので、なんだかちょっとおもしろく見えてくるから不思議です。
子どもたちも、思わず卵を一つ産んだ場面では、
「かわいそう・・・」
「ひどすぎるよ!」
と憐み、心配していたのに、卵を産み続ける場面では、
「え!?そんなに産むの!?」
「産み過ぎじゃない!?」
と、山のように増えていく卵に、ツッコミの声へと変わっていました。
悲しい場面なのか、おもしろい場面なのかわからなくなるほどの、卵の産みっぷりもこの絵本のおもしろいところです。
勧善懲悪だけど、なんだか力の抜ける結末
さて、そんな物語の最後の場面では、ついにムシューへの反撃が始まります。
しっかりと追い返し、勧善懲悪で終わります。
ですが、その追い返し方が、なんともかわいく、平和で、癒されるのです。
特にその絵面がおもしろい。
めんどりが食べられる寸前という緊迫感から、一気にかわいさとゆるさが溢れだし、ちょっと笑ってしまいます。
この緊迫感とゆるさとのギャップも、この絵本のとても魅力的なところです。
二言まとめ
ムシューの不気味さと意地悪さと、めんどりの悲惨な境遇に心を痛める悲しい物語・・・。
そこからの、痛快だけどなんだかゆるい結末とのギャップが、たまらなくおもしろい絵本です。
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