作:長尾玲子 出版:福音館書店
雑草の名前って知っていますか?
その名前には意味があったり、動物が隠れていたりしておもしろい。
そんな雑草の名前を、おじいちゃんが楽しく教えてくれる絵本です。
あらすじ
夏の暑い日。
男の子の太郎くんは、スイカを持って、おじいちゃんのうちへ遊びに来ました。
おじいちゃんはスイカを見ると、「ヒメジョオンの脇の水道で冷やしておこう」と言いましたが、たろうくんはヒメジョオンがなにかわかりません。
太郎くんが聞くと、おじいちゃんは白い花を見せ、ヒメジョオンだと教えてくれました。
太郎くんは雑草にも名前があると知ってびっくり。
そんな太郎くんに、おじいちゃんはスイカが冷えるまで、家の周りの雑草の名前を教えることにしました。
歩き始めると、おじいちゃんが「そら、鬼だぞ」と言いました。
それを聞いて驚く太郎くん。
でも、おじいちゃんが指さしていたのは、黄色い花のオニノゲシでした。
しばらく行くと畑に着きました。
そこにはイヌとスズメがいると言います。
太郎くんが探していると、イヌビエとイヌタデ、スズメノカタビラという雑草の名前でした。
畑を抜けると、太郎くんが朝顔を見つけました。
けれど、それは朝顔ではなくヒルガオ。
これも雑草です。
他にもオヒシバとメヒシバという、そっくりな兄弟の草も教えてくれました。
道を進むと生け垣につきあたりました。
生け垣には長いつるが絡みついています。
おじいちゃんはその草を引っ張ってはがしながら、ヤブガラシだと教えてくれました。
元気がよすぎて、やぶも枯らしてしまうから、この名前になったのだそうです。
太郎くんはおじいちゃんとヤブガラシを取ってから先に進みました。
着いたのは家の裏。
北側なので、日光が当たらずしっとりとしています。
ここにはどんな雑草が生えているのでしょうか?
『ざっそうの名前』の素敵なところ
- 身近な雑草が盛りだくさん
- 雑草の特徴や名前の由来がよくわかる
- 刺繍で描かれた本物そっくりの雑草たち
身近な雑草が盛りだくさん
この絵本の素敵なところは、見たことのある、身近な雑草が目白押しなところです。
読んでいると、
「あー、これ知ってる!」
「見たことある!」
「あの公園に咲いてるよね」
と、見たことあるの嵐が起こります。
でも、みんな名前は知りません。
まさに雑草。
そんな身近過ぎる雑草が、物凄くたくさん出てくるのです。
そして、見たことがあったり、身近だからこそ、雑草の名前がスッと頭に入ってきます。
「あの花、そんな名前だったんだ」
「ドクダミって聞いたことあるけど、この花だったんだね」
と、名前と実物が繋がっている様子。
普段の散歩の中で目にしている経験と、知識を見事に融合させてくれ、より身近な自然との触れ合いを楽しく、奥深いものにしてくれるのです。
雑草の特徴や名前の由来がよくわかる
また、名前がわかるだけでなく、その特徴や名前の由来がわかるのもおもしろいところです。
これが、おじいちゃんの話という形で、とてもわかりやすい。
やぶを枯らしてしまうくらい元気な「ヤブガラシ」。
鬼や動物の名前がついている雑草。
朝顔とそっくりだけど、昼にも咲いている「ヒルガオ」。
など、似ているけれど、違う所や、おもしろい名前の雑草、その雑草の特徴などをピックアップして教えてくれるので、とても頭に残りやすいのです。
おじいちゃんが教えてくれた雑草を見つけることができたら、より他の雑草への興味も湧いてくることでしょう。
そういう意味でも、おじいちゃんがピックアップして話してくれることで、雑草への興味の入り口を広げてくれているのだと思います。
刺繍で描かれた本物そっくりの雑草たち
さて、この絵本は全て刺繍で描かれているのもおもしろいところです。
けれど、どの雑草も刺繍で描かれているとは思えないほど、本物そっくりなのがすごいところ。
一目で、どの雑草かわかるくらいにリアルなのです。
でも、よーく見るとしっかりと縫ってあり、糸が見える。
これが雑草の図鑑としてだけではなく、芸術的な魅力もこの絵本に与えてくれているのでしょう。
顔を近づけて、
「すごい!糸が見える!」
「本当に縫ってあるんだ!」
と驚きの声を上げつつ、絵本に顔をうずめる子どもたち。
刺繍やその技術にも興味を惹かれたみたいです。
図鑑としてだけでなく、刺繍やその技法など絵本を作るおもしろさへ興味を広げてくれるのも、この絵本の素敵でおもしろいところです。
二言まとめ
とても身近な雑草の、名前や特徴をおじいちゃんと一緒に楽しく知ることができる。
緻密な詩集で描かれた雑草たちが力強く美しい、見ても知っても楽しい絵本です。
コメント