作:コンドウアキ 出版:白泉社
怖い夢を見て眠るのが怖くなった時。
夢銀行の出番です。
怖い夢も、楽しい夢も、飴に変えてくれるのです。
あらすじ
ペンギンのぺんぺんと、バクのもぐもぐがやっているお店。
それが夢の飴を売るお店、ゆめぎんこうです。
夢の飴を買うこともできるし、みんなの夢を飴にして買い取ることもできます。
お店は飴を買いに来るお客さんで大繁盛。
やっと店じまいの時間になった時、ぺんぺんは店の入り口で座っているヒヨコのような小さなお客様を見つけました。
困っている様子だったので、お店の中で小さなお客様の話を聞いてみることに。
話を聞くと、怖い夢ばかり見て、眠るのが怖くなり、素敵な夢の飴を買いに来たのだそう。
けれど、お金が足りずに困っていたみたいです。
ぺんぺんともぐもぐは悩んだ末に、小さなお客様の悪い夢を飴に変えてあげることに決めました。
小さなお客様の家に行き、寝る準備をしてベッドの中へ。
ぺんぺんともぐもぐは、ベッドの横で夢を見るまで待っています。
しばらくすると、夢を見始めました。
しかし、どれも楽しそうな夢ばかり。
もぐもぐが夢を次々に食べていくと、最後に怖い夢が顔を出しました。
もぐもぐが怖い夢も食べた後、ぺんぺんはうなされる小さなお客様を起こしました。
そして、怖い夢だけじゃなく楽しい夢もいっぱい見ていたことを伝えると、小さなお客様は安心して眠りにつくことができたのです。
翌朝・・・。
『ゆめぎんこう~ちいさなおきゃくさま』の素敵なところ
- 見たい夢を買える夢のようなゆめぎんこう
- ぺんぺんともぐもぐの人間味と人情
- 怖い夢を見た時の処方箋
見たい夢を買える夢のようなゆめぎんこう
この絵本のなによりおもしろいところは、夢を飴として買えるというところでしょう。
眠るまで、どんなものを見るかわからない夢。
それを自分が見たい夢を選んで変えるのです。
まさに夢のよう。
子どもたちも、
「えー、いいなー!」
「わたしは大きいケーキの夢見た~い」
「ぼくはウルトラマンの夢!」
など、自分の見たい夢が口から溢れ出ていました。
店に並ぶ飴が入った瓶のパッケージもおもしろく。
ハートや夕焼け、葉っぱなど、カテゴリ―がふわっとしていて、「これは散歩の夢かな?」と想像力を刺激します。
自分の見たい夢と一緒に、欲しい飴のパッケージを選ぶのも楽しそうでした。
ぺんぺんともぐもぐの人間味と人情
そんなゆめぎんこうを営むぺんぺんともぐもぐ。
この2人の人間味あふれるやり取りも、この絵本のとても素敵なところです。
小さなお客様の話を聞き、「怖い夢を食べてしまう」という解決法はすぐに浮かびます。
ですが、2人とも乗り気ではありません。
理由は、2人とも怖い夢が得意ではないから。
ゆめぎんこうをしている2人も、怖い夢が嫌なのは変わらないのです。
嫌だからこそ、悩みます。
自分の気持ちと、目の前のお客様の困った姿を見比べます。
きっと、自分でもそうなると思います。
内心では「気が進まないな」と思いつつ、引き受けることってけっこうあるでしょう。
そんな、悩む人間味とそれでも引き受ける人情が、しっかりと描かれているのです。
なんでも解決してくれるヒーローではなく、悩みつつも一生懸命考えてくれるぺんぺんともぐもぐの人間味あふれる姿がとても素敵です。
怖い夢を見た時の処方箋
さて、この絵本を読んでいる小さな読者には、小さなお客様と同じ悩みを抱える子もいるのではないでしょうか?
とても怖い夢を見て眠るのが怖くってしまった子。
毎日怖い夢を見てしまう子。
そんな子たちの、安心できる処方箋になってくれるのも、この絵本の素敵ですごいところです。
ぺんぺんともぐもぐの存在や、本当は楽しい夢を見ているのかもしれないという希望。
もしかしたら、この絵本のように飴をなめてから眠るというのもあるかもしれません。
なにより、そんな安心する物語を、お父さんやお母さんに読んでもらうだけでも、眠る時のストレスが減るでしょう。
まさに小さなお客様と同じ境遇の子に、とても優しい処方箋になってくれるのです。
二言まとめ
好きな夢を買って見られる、夢のような夢銀行に自分も行ってみたくなる。
ぺんぺんともぐもぐと小さなお客様との、心温まるやり取りに怖い夢への怖さが和らぐ絵本です。
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