かいじゅうたくはいびん(4歳~)

絵本

作:澤野秋文 出版:講談社

ある日、不思議な卵が宅配されて来た。

なんと、それは怪獣の卵。

不思議な宅配員とともに、卵を孵すための不思議な時間の始まりです。

あらすじ

男の子けんたは、おもちゃをたくさん出して、家の中で遊んでいた。

ママが「片付けなさい」と言うと、けんたは怒って自分の部屋に閉じこもってしまった。

しばらくすると、玄関でチャイムが鳴った。

しかし、いるはずのママは出る様子がない。

けんたはママを探したがどこにもいない。

仕方なく、けんたが玄関のドアを開けると、そこには3匹の怪獣がいた。

3匹は「怪獣宅配便」だと名乗り、けんた宛の荷物を渡した。

それは大きな卵だった。

怪獣たちは、けんたに卵の孵し方を教えてくれた。

卵の孵し方はこうだ。

  1. 名前をつける。
  2. 温める
  3. 名前を呼ぶ

そこで、まずは名前を付けることにした。

「けんた」から文字を取り「ケタ」に決めた。

次は温める。

怪獣たちが温めるための毛布を探し始めた。

荷物の段ボールを開けていくが、なかなか見つからない。

けんたも手伝い、緑の段ボールを開けた。

すると、中から木や草や虫が飛び出し、部屋の中が広いジャングルに。

ちなみに毛布は足元に敷いてあった。

ジャングルになった部屋の中で、毛布をかぶり、身を寄せ合い卵を温めるけんたたち。

暑さに耐え、温め続けていると・・・卵が動き出した。

さらに卵の底の方から「ぴしっ!」という音。

次の瞬間、卵から足と尻尾が生え、そのまま卵はジャングルの奥に向かって走り出し、あっという間にどこかへ行ってしまった。

探してみても見つからないので、名前を呼んで見ることに。

でも、ケタは出てこない。

けんたたちは、ケタを見つけることができるのでしょうか?

そして、無事に卵を孵すことができるのでしょうか?

『かいじゅうたくはいびん』の素敵なところ

  • 自分だけの怪獣の卵という夢のようなシチュエーション
  • 怪獣たちとの不思議な時間と空間
  • 見ているだけで楽しい、所狭しと描かれたものたち

自分だけの怪獣の卵という夢のようなシチュエーション

この絵本のなにより素敵なところは、自分だけの怪獣の卵をもらえるところです。

自分で卵を育て、産まれた怪獣や恐竜と仲良くなる。

そんなシチュエーションを夢見たことがある人は多いと思います。

その夢を叶えてくれるのがこの絵本。

自分宛に怪獣の卵が届き、一生懸命その卵を孵します。

「どんな怪獣が産まれてくるんだろう?」

「仲良くなれるかな?」

「怖い怪獣だったらどうしよう?」

と、ワクワクとドキドキが渦巻きます。

こんなシチュエーションにワクワクしないわけがありません。

自分だけの怪獣という、夢のような物語が子どもたちを夢中にする、とても素敵なところです。

怪獣たちとの不思議な時間と空間

また、怪獣宅配便が来てからの、不思議な空間や時間もとてもおもしろいところです。

怪獣宅配便が家に来るまでは、普通に家で遊び、ママともけんかしていたけんた。

ですが、チャイムが鳴ったところから、不思議な空間と時間が始まります。

ママが消え、自分しかいない家。

ジャングルの箱を開けると、部屋の壁を越え広がって行く空間。

自分が、異空間に迷い込んでしまったかのような不思議さを感じます。

どこからが夢で、どこからが現実なのかわからない不思議な感覚です。

これは、物語の最後でさらに強いものになります。

この考えれば考えるほど頭がこんがらがるような時間と空間の不思議さが、子どもたちそれぞれの解釈を生み面白いところなのです。

「夢だったのかな?」

「絶対本当だよ!」

と、それぞれに言い分が違い、それぞれに説得力がある。

どんな解釈にも「でも」や「だって」が繋がり、さらに考察が続きます。

そして、気付けばもう一度ページをめくっている。

そんな魅力があるのです。

見ているだけで楽しい、所狭しと描かれたものたち

さて、この絵本には物語以外にも、おもしろいところがあります。

それが、ページの中に所狭しと描き込まれた、たくさんのものたちです。

けんたの散らかしたおもちゃ。

けんたの部屋のインテリア。

開けまくった段ボールの中身。

生き物やおもちゃがひしめくジャングルの中。

などなど、これでもかと細かく描き込まれているのです。

しかも、ただ色んなものがあるだけではありません。

けんたの部屋に大きな宝箱があったり、

段ボールごとに中身のコンセプトがあったり、

ジャングルの中にけんたの部屋にあったおもちゃがあって、同じ場所だと感じさせてくれたり、

ケタの卵にそっくりだけど、よく見たら違う生き物をたくさん描きミスリードしていたり、

と、それぞれに遊び心が詰まっていて、見ているだけでおもしろい発見があり、さらに探してみたくなってしまうのです。

「この河童、さっきは車に乗ってたのに!」

「あ、ケタじゃなかった。」

「カブトムシいるじゃん!」

などなど、子どもたちからも発見の声が止まりません。

描き込まれた絵を見ているだけでも、色んなものや繋がりを発見し、楽しめるのもこの絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

自分だけの怪獣の卵を育てるという、夢のようなシチュエーションを味わえる。

物語はもちろん、遊び心満載の描き込まれた絵を見ているだけでも、とても楽しい絵本です。

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