文:ジェン・キャンベル 絵:ケイティ・ハーネット 訳:横山和江 出版:BL出版
本が大好きな優しいドラゴン。
しかし、街の人はドラゴンを怖がり近づこうとはしませんでした。
そんなある日、本が大好きな少女ルナと出会います。
あらすじ
ある洞穴の中に、本が大好きなドラゴンのフランクリンが住んでいました。
家である洞穴は本だらけ。
フランクリンは、誰かに本を読んであげるのが大好きです。
いつも洞穴に住むネズミや、コウモリ、ホタルたちに本を読んであげていました。
フランクリンは時折、街の人たちにも本を読んであげようと、少し離れた街へと遊びに行くのですが、街の人は怖がって、誰一人家の中から出てこないのでした。
そんな時、フランクリンは悲しい気持ちで家に帰り、本を読み、物語の夢を見て眠るのでした。
ある日、フランクリンは川で釣り人に出会いました。
ドラゴンが自己紹介し、握手をしようと前足を差し出しましたが、釣り人はあっという間に逃げていってしまいました。
次の日は、農場で女の人に会いました。
フランクリンは自己紹介しますが、やっぱり逃げていってしまいます。
そして、三日目。
フランクリンは森で女の子に出会いました。
その女の子は、木の下で本を読んでいます。
フランクリンに気付くと、女の子は自分から声をかけてくれました。
フランクリンが自己紹介すると、女の子は「ドラゴンが大好きなの!」と言って握手をしてくれました。
女の子の名前はルナ。
ルナは、フランクリンに今まで読んだ本の話をしてくれました。
フランクリンもルナに今まで読んだ本の話をしました。
2人のおしゃべりは止まることはありませんでした。
やがて、2人はお気に入りの本を、みんなに読んでもらえたらどんなに素敵だろうと思い始めました。
そこで2人で相談し、ある計画を立てたのです。
フランクリンの背中に本棚とソファを乗せ、しっかりと固定します。
そして、飾りつけをすれば、フランクリンの背中に小さな本屋さんの完成です。
ソファに、ルナとネズミ、コウモリ、ホタルたちが乗り込みます。
すると、フランクリンは低く身構えてから、思い切り駆け出し、物凄い速さで丘を下りながら翼を広げ・・・。
フランクリンとルナは一体どんな計画を立てたのでしょう?
その計画はうまくいくのでしょうか?
『フランクリンの空とぶ本やさん』の素敵なところ
- 絵本全体から伝わってくる本のことが大好きだという気持ち
- 心の動きや臨場感がとても伝わってくる丁寧な描写
- 空で本を読むという夢のような物語
絵本全体から伝わってくる本のことが大好きだという気持ち
この絵本のとても素敵なところは、「本が大好き」という気持ちが、そこかそこから伝わってくることです。
フランクリンが洞穴のみんなに読み聞かせをする姿はもちろんのこと、悲しいことがあった時に、絵本に囲まれて眠る姿や、物語の夢に元気づけられる姿。
本を読んであげたいという気持ち。
そして、なにより、ルナと一晩中、本や物語について語り合う様子は本当に幸せそう。
2人のする「読み始めたとたんにワクワクするお話。あっと驚くなりゆきにドキドキするお話」などの言葉を聞いていると、本が好きな子は、思い切り共感してしまうでしょう。
これまで読んだ本を思い出したり、新しい本が読みたくなったり。
気付けば2人のおしゃべりの中に自分もいるような感覚になってきます。
絵本全体の本が好きという雰囲気から、自分が本や物語を好きだと、改めて気付かせてくれるのが、この絵本の素敵なところです。
心の動きや臨場感がとても伝わってくる丁寧な描写
また、そんな物語の描き方が、とても丁寧だったり、臨場感あふれるものになっているのも素敵なところ。
人に怖がられていることが徐々にわかってきて、自己紹介する時に「怖がられるんじゃないか?」という不安の色が出てきたり、
怖がられたら、気持ちを切り替えるように家に帰って、洞穴の仲間に本を読んであげたり。
そんな姿を見て、子どもたちは、
「かわいそう」
「優しいドラゴンなのにね」
と、ドラゴンの気持ちになって悲しんだり怒ったり。
反対にルナと語り合う姿を見て、
「友だち見つかってよかった!」
「フランクリン、嬉しそう!」
と、自分のことのように喜ぶ声。
心の動きだけでなく、背中に本屋を作った後に飛び立つ場面では、ただ飛び立つのではなく、
「フランクリンは、低く身構えてから、思い切り駆け出し、物凄い速さで丘を下りながら、翼を広げました。」
というような、臨場感あふれる描写で子どもたちをくぎ付けに。
その臨場感に、一言もしゃべらずお腹に力が入ります。
そして、空に舞い上がった後「飛んだ!」と目をキラキラ。
ドキドキワクワクの浮遊感を描き出していました。
こんな風に、絵本の中で出てくる物語の如く、この絵本自体も子どもをくぎ付けにするドキドキワクワクの魅力に溢れているのです。
空で本を読むという夢のような物語
さて、魅力あふれるこの絵本の中でも、特に魅力的な場面があります。
それは「空で本を読む」という場面。
月明かりの下、夜風に吹かれながら空の上で本を読む。
なんて魅力的で、幻想的で、夢のような場面でしょう。
さらに、それが優しいドラゴンの背中の上でなんて言われたら、夢どころの話ではありません。
そんな素敵すぎる体験をできるのがこの絵本です。
子どもたちも、
「きもちよさそう~」
「ドラゴンの背中って固いのかな?」
「どんなお話を読んでくれるんだろう?」
と、ドラゴンの背中に乗る気満々。
本好きにも、ドラゴン好きにもたまらない夢のようなシチュエーションを見せてくれるのも、この絵本の大きな魅力の一つです。
二言まとめ
ドラゴンと女の子の「本が好き」という気持ち詰った素敵な計画に、ドキドキワクワクが止まらない。
読めば、本や物語の素敵さや楽しさ、「本が好き」という気持ちを再確認させてくれる物語です。
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