文:レーナ・アッロ 絵:カタリーナ・クルースヴァル 訳:菱木晃子 出版:光村教育図書
昔、お気に入りで大事にしていたマフラーや手袋、おもちゃなど。
それをなくしてしまったことはないでしょうか。
その時は悲しくて、寂しくて、落ち込んだと思います。
このお話はそんななくなってしまったマフラーのその後を描いたお話です。
あらすじ
小さいころ、マフラーをなくしたことがありました。
車の窓を開けて風になびかせていたら飛んで行ってしまったのです。
あれからずっと、マフラーがどうなったのか気になっていました。
汚れて、ぼろぼろになっていったのかしら。
それからずいぶん後になって、マフラーがどうなったかを知りました。
これはなくしてしまったマフラーのお話です。
秋が深まったころ、小人のトムテが森を歩いていました。
トムテは冬が近づくと、北へ向かって歩きます。
トムテは森の外れまで来ると、耳をそばだてました。
かすかに助けを求める声が聞こえます。
その声は凍った湖の方からでした。
どうやって進もうか悩んでいると、赤いマフラーを踏んでいることに気付きました。
マフラーを拾い上げたとたん、風を受けてヨットの帆のように広がりました。
トムテはマフラーを帆にして、スケートのように湖面を滑っていきました。
トムテは声のもとへたどり着きました。
それは水鳥でした。
湖で寝ている間に氷が張って、足が動かせなくなってしまったのです。
トムテは持っていたスプーンで氷をかき、水鳥を助けました。
もう、すっかり夜です。
二人はマフラーにくるまり身を寄せ合って夜を過ごしました。
翌朝、鳥は南へ渡り、トムテは北へ歩き出しました。
トムテの旅は続きます。
マフラーの持ち主と出会うことはあるのでしょうか。
『トムテと赤いマフラー』の素敵なところ
- とてもかわいい小人のトムテ
- 昔なくしたものを思い出させてくれ、こんな風に使われているかもと思わせてくれる
- 終わり方がとても素敵
この絵本を読むとトムテの魅力が伝わってきます。
助けを求める声を聞き逃さず、色んな事に一生懸命。
優しくて知恵もある。
そして、長いひげに着ぶくれた体、三角帽子はサンタクロースのような愛くるしさがあります。
この本を読み終わった時にはトムテが好きになっていることでしょう。
もう一つの魅力は昔なくした大切なものを思い出させてくれること。
そして、思い出すとチクリとする思い出に救いをくれることです。
大人にも子どもにもあると思います。
この絵本はそんな思い出に小さな光を与えてくれるでしょう。
最後の場面にはマフラーの持ち主が、なぜトムテが使っていることを知ることが出来たのか。
その秘密へのヒントが語られます。
でも、語り過ぎません。
どんな風に伝わったかは、どれぞれの頭の中に物語によって違うでしょう。
ただ、子どもたちからは「なるほど!だから知ってたんだ!」と納得の声。
きっとそれぞれに完結させているのだと思います。
そんな、トムテの魅力となくしたものへの大切な思いがつまった絵本です。
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