とうふこぞう(4歳~)

絵本

作:京極夏彦 絵:石黒亜矢子 編:東雅夫 出版:岩崎書店

オバケは怖い。

でも、怖くないオバケもいるよ。

それが豆腐を見せるだけのオバケ、豆腐小僧。

あらすじ

歯を磨いて、寝る準備をする男の子。

オバケが怖くて不安そう。

家の中の色んな所に、色んなオバケがいる気がする。

壁、天井、廊下の角・・・。

窓から覗いていたら?

部屋に入ってきたら?

布団に乗っかってきたら?

どうしよう?

そんなことを考えていたら、本当に布団の上に何かが乗っかった。

布団の中で丸まり震える男の子。

すると、布団の上の何者かが「こんばんは」と挨拶してきた。

男の子も思わず「こんばんは」。

誰かと聞いてみると、オバケだと言う。

でも、全然怖くない。

名前は豆腐小僧。

男の子が、持っている豆腐をくれるのかと聞いてみると、豆腐は見せるだけだと言う。

すっかり怖くなくなった男の子と豆腐小僧。

2人はどんな時間を過ごすのでしょう?

『とうふこぞう』の素敵なところ

  • オバケの不気味さが詰った前半
  • オバケのかわいさが詰った後半
  • 豆腐小僧と男の子の力が抜けるやり取り

オバケの不気味さが詰った前半

この絵本は、前半と後半で、大きく物語の雰囲気が変わります。

前半はまさにオバケ絵本。

オバケの怖さが際立ちます。

オバケを怖がる男の子。

男の子がいる部屋や廊下の周囲には、不気味な影の数々。

棚には目玉がたくさん詰まり、壁には顔のような染み。

廊下の角には影が蠢き、部屋の天井にはたくさんの目が木目のようにびっしりと・・・。

男の子の不安から来るものなのか?本当にいるのか?

そのあいまいさがたまらなく不気味です。

極めつけは、布団に潜り込んだ後。

窓から入ってくる大きなガイコツ。

ドアからのびる大きくて毛むくじゃらの手。

絵の不気味さも相まって、怖さはピークに。

子どもたちも、身を縮め、隣の子と寄り添います。

この、オバケ絵本ならではの、しっかりとした怖さや不気味さを味わえるのがこの絵本の素敵なところです。

オバケのかわいさが詰った後半

ただ、後半になると、この怖さは一気になくなります。

布団に乗ったオバケのフォルムが、どう見ても怖くないのです。

灯りをつけてしっかり見ても、やっぱり怖くありません。

豆腐を持った子どもです。

さらには、向こうから挨拶までしてくる始末。

ものすごくフレンドリーで拍子抜け。

先ほどまで縮こまり、体を固くしていた子の緊張もいつの間にかほぐれています。

この前半の怖さと、後半の怖くないどころか、かわいさすら感じる物語のギャップもこの絵本の素敵なところ。

オバケの怖さを味わいつつも最後は楽しく、オバケと友だちになれるような明るい気持ちで終われるのです。

豆腐小僧と男の子の力が抜けるやり取り

さて、そんなかわいい豆腐小僧。

見た目だけでもかわいいですが、男の子とのやり取りもかわいさが詰まっています。

「なにしにきたの?」→「わかりません」

「子どもの泥棒?」→「いいえ、おばけです」

「お豆腐くれるの?」→「すいません、見せるだけです」

というように、なんだか力の抜けるゆる~いやり取り。

2人の会話を聞いていると、さっきまでオバケを怖がっていたことなど忘れてしまいます。

その姿はじゃれ合う子ども。

こちらまで楽しい気分になってきます。

そんな2人を見ていると、オバケとも友達になれそう。

オバケは怖いだけじゃなくて、かわいくて楽しいオバケもいるのだと気付かせてくれるのです。

この不気味で不思議なオバケの魅力に気付かせてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

前半の不気味で怖い雰囲気と、後半の楽しく明るい雰囲気のギャップがすごい。

オバケの怖さと魅力の両方を、思い切り味あわせてくれるオバケ絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました