文:角野栄子 絵:宇野亜喜良 出版:国土社
布団に入り、小さな電気を眺める女の子。
すると、その光が目となってクロヒョウに。
助けを求めたその時に、現れたのはなんとソファのカバでした。
あらすじ
ある日、女の子ヒロは、テレビを見ていました。
クロヒョウがシカを狙っている番組です。
でも、いいところでお母さんがやってきました。
お母さんはヒロの熱に気付き、テレビを消してベットに入れ、部屋の電気を小さな電気だけにしてしまいました。
ヒロは怒って天井をにらみつけました。
すると、小さな電気が二つになり、クロヒョウの目になりました。
テレビで見たクロヒョウです。
ヒロは自分を食べに来たのだと思い助けを求めました。
けれど、誰も来てくれません。
と、その時、「どれどれ」という声が。
見ると、その声はソファから。
なんと、ソファが膨れカバになったのです。
牙のある大きな口を開けたカバ。
そのままクロヒョウを食べてしまうかと思いきや、カバは大きなあくびをして眠ってしまいました。
ヒロがまた助けを呼ぶと、今度はピアノがシマウマになりました。
足には石のような蹄がついています。
その足で蹴飛ばしてくれると思いきや、シマウマは「ネコふんじゃった」を踊り始めてしまいました。
ヒロがまたまた助けを求めると、スリッパがハリネズミになりました。
針を飛ばしてクロヒョウを刺してくれるかと思いきや、お散歩中だと言って、どこかへ滑って行ってしまいました。
また助けを求めるヒロ。
一体、助けてくれる生き物は現れるのでしょうか?
ヒロとクロヒョウはどうなるのでしょう?
『だれかたすけて』の素敵なところ
- 怖いけれど、どこかおちゃめで笑ってしまう物語
- 変身前の家具に合わせた動物たち
- 夢か現実かわからない不思議な体験
怖いけれど、どこかおちゃめで笑ってしまう物語
この絵本の魅力は、今にもクロヒョウに襲われそうになる緊迫感と、助けに来てくれた動物たちのおちゃめさのギャップです。
目の前まで来ているクロヒョウ。
必死で助けを求めるヒロ。
子どもたちも息を呑み、「食べられちゃうよ・・・」とドキドキ。
そこに現れる動物たち。
その動物たちは、どれも強そうな武器を持っています。
そして、戦ってくれるかと思いきや、あくびをして寝てしまったり、ネコふんじゃったを踊り始めたり・・・。
これには子どもたちも「ふふっ」と思わず笑ってしまいます。
緊張感のある状況で、ヒロは必死なのですが、動物たちはどれもどこかゆるい雰囲気。
このギャップがなんともおもしろく、ジェットコースターのような緩急があるのです。
緊張感とおちゃめさの落差が、この絵本のとてもおもしろいところです。
変身前の家具に合わせた動物たち
そんなおちゃめな動物たちですが、動きが元の家具とリンクしているのもおもしろいところ。
カバはソファのようにどてんと横たわり寝てしまうし、
シマウマは楽しい音楽を奏で躍り、
ハリネズミはスリッパなので、二匹仲良くスイ―っとどこかへ行ってしまいます。
こんな風に、どれも家具に由来した動きをしています。
特に最後の動物は「なるほど!」という動きをしていておもしろい。
もちろん、家具なので戦ったりもしないのです。
それに気付くと、自分の見の周りのものも動物に見えてくるから不思議なもの。
「青いベッドがクジラになるかも!」
「トイレがペリカンになるかも!」
など、なったら怖いや、なったら楽しい動物を想像している子どもたちでした。
この動物たちの家具らしさも、この絵本の素敵なところです。
夢か現実かわからない不思議な体験
さて、そんな不思議な物語ですが、色々な解釈の仕方ができるのも素敵なところ。
ベッドに入ってから、部屋の中で繰り広げられる逃走劇。
本当のことだったのかもしれないし、
眠った後の夢だったかもしれないし、
熱に浮かされてみた幻だったのかもしれません。
物語の結末もまた同じです。
「こうだったのかな?」
と、部屋の中の様子や、表情を見ながらそれぞれの物語を考えます。
色々な見方ができることで、想像力や子ども同士の話が膨らみます。
この想像や解釈の余白がある物語の描き方も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
一人ぼっちでクロヒョウに追われる怖さと裏腹に、助けに来てくれたはずの動物たちのゆるさに笑ってしまう。
夢か現実かわからない、怖くておもしろくて不思議な物語です。
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