作:なかがわりえこ・おおむらゆりこ 出版:福音館書店
大切なおもちゃと交換したそらいろの種。
植えて育てると、なんと小さな家が咲きました。
すくすくと大きくなっていく家には、次々と動物たちが住むように。
あらすじ
男の子ゆうじが、飛行機のおもちゃを飛ばして遊んでいました。
すると、キツネがやってきて、その飛行機が欲しいと言い出しました。
「飛行機は宝物だから」と断ると、キツネの宝物のそらいろの種と交換してくれと言ってきます。
ゆうじは飛行機と、そらいろの種を交換することにしました。
ゆうじは家に帰ると、早速庭にそらいろの種を埋め、水をかけました。
次の朝早く、ゆうじが種の様子を見に行くと、なんと豆ぐらいの小さなそらいろの家が出てきました。
ゆうじはそらいろの家に水をかけました。
すると、そらいろの家は少しずつ大きくなり、それを見たヒヨコが家に入りました。
さらにそらいろの家が大きくなると、ヒヨコと一緒にネコも入ってきました。
どんどん大きくなっていくそらいろの家には、大きくなるにつれ、どんどん色々な動物が入ってくるようになり、ゆうじやゆうじの友だちも入れるくらい家は大きくなっていきました。
それでも休まず大きくなっていくそらいろの家。
ついには立派なお城のようになりました。
と、そこへキツネがやってきました。
そらいろの家を見てびっくりしています。
ゆうじがそらいろの種からできたことを伝えると、キツネは「飛行機を返すから家を返してくれ」と言い出しました。
そして、家を返してもらうと、家の中にいるみんなを大声で追い出し始めました。
せっかく楽しく過ごしていたそらいえの家。
一体どうなってしまうのでしょう?
『そらいろのたね』の素敵なところ
- 種から家が出てくるおもしろさ
- 大きくなる家に合わせて大きくなっていく住人たち
- キツネの気持ちいいくらいのわがままさとそれに応える家
種から家が出てくるおもしろさ
この絵本のなによりおもしろいのは、種を植えたら家が出てくるところでしょう。
まったく自然物と関係ない家。
しかも、家とは思えないくらい小さく咲きます。
これには子どもたちもシンプルにびっくり。
「種から家ができるんだ!?」
「ちっちゃ過ぎて、アリさんしか住めないよ」
「大きくなるのかな?」
と、まさかの種から出てきた家に興味が尽きません。
さらには、家にじょうろで水をあげるゆうじ。
すると、すくすくと大きくなっていきます。
この見た目は完全にちゃんとした家なのに、植物らしさを忘れないのもおもしろいところ。
だんだん、種から家が出てくるのは当たり前のような雰囲気になってきます。
また、ここからの成長のスピードも、この絵本の楽しいところで、ページをめくるごとにどんどんと大きく成長していきます。
「どこまで大きくなるんだろう?」「まだ大きくなるのかな?」というワクワク感も、この絵本のとても素敵なところです。
大きくなる家に合わせて大きくなっていく住人たち
そんな風に大きくなっていく家には、お客さんが現れるようになっていきます。
この段々と色んな動物がやってくるのも、この絵本のとても楽しいところ。
ヒヨコが入り、ネコが入り、ブタが入り、ゆうじも入り・・・。
と、どんどん家の中が賑やかになり、その規模感も大きくなっていくのです。
さらに、やってくる動物の大きさも、家の大きさに比例して大きくなっていきます。
家が出来たばかりの頃はヒヨコ、
少し大きくなりネコ、
さらに大きくなりブタ、
そして人間のゆうじや友だちが入れるようになり、最終的にはゾウの親子までやってきます。
すると子どもたちは、
「ヒヨコが入ってる!かわいい!」
「ゆうじが入れるなら、ぼくたちも入れそう」
「ゾウも入れるの!?」
と、動物たちの大きさから、家の大きさを感じ取っている様子。
このどんどん大きくなっていく動物が、家がどれくらい大きくなっているのかを直感的にわからせてくれるのです。
キツネの気持ちいいくらいのわがままさとそれに応える家
さて、そんなお城のように立派になり、みんなで楽しく過ごしていたそらいろの家。
そこへキツネが現れます。
このキツネが、絵に描いたようなわがままキツネ。
飛行機よりも魅力的な家を目にして、返してくれと言ってきます。
さらには家を返すと、みんなを追い出し独り占め。
ここまでわがままだと、むしろすがすがしいくらい。
「おーい、このうちはぼくのうちだからね。だまって入らないでよー。みんな出ていっておくれ―。」
と、大声で家を回る姿には恐れ入ります。
ですが、そんなわがままもずっとは続きません。
それに応えたのが、なんとそらいろの家でした。
キツネのわがままに反応する家とその結末は、なんともキツネらしいもの。
このスッキリさっぱり、キツネらしい気持ちのいい終わり方も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
どんどん大きくなっていく家に、自分も動物たちと一緒に住みたくなる。
「独り占めより、みんなで楽しく使う方がいいな~」としみじみ感じる絵本です。
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