作:野坂勇作 出版:福音館書店
イタズラ大好きなかにのニカ。
今日もいつも通りイタズラを始めます。
が、なぜかお礼を言われることに・・・。
あらすじ
かにのニカが、海から出てきて散歩を始めました。
ニカの散歩はイタズラ散歩。
イタズラしたくてハサミがうずきます。
川沿いを歩いていくと、カワウソが釣りをしているのを見つけました。
それを見たニカは、釣り糸をハサミで切ってしまいました。
さらに行くと、トカゲが盆栽の手入れをしているのを見つけたニカ。
盆栽の枝も、ハサミで切ってしまいました。
カワウソもトカゲも怒っています。
けれどそんなことは気にせずに、散歩は続いていきます。
さらにさらに行くと、ネズミが二匹、縄を引っ張っているのを見つけました。
早速ニカは、縄をハサミで切りました。
ネズミたちも怒る・・・と思いきや、なんと2人は笑顔です。
どうやら縄が一本しかなくて取り合いっこをしていたみたい。
一人一本ずつになり、仲良く遊べるようになったと、お礼を言われてしまいました。
そんなはずではなかったと、困ってしまうかにのニカ。
気を取り直して、次のイタズラをしにいきます。
見つけたのは、長いズボンを眺めるカエル。
ニカはやっぱりズボンのすそをハサミで切り取ってしまいます。
すると、ズボンを短くしようと思っていたところだと、カエルからもお礼を言われるかにのニカ。
イタズラしているのにお礼を言われ、なにがなんだかわからなくなり、ついには泡を吹いてしまいます。
イタズラしたいのにイタズラにならないニカ。
このままイタズラを続けるのでしょうか?
『かにのニカ』の素敵なところ
- 純度100%の気持ちいイタズラ
- リズミカルで言葉遊びのような文章
- 平和に終わったかと思いきや・・・
純度100%の気持ちいイタズラ
この絵本のなにより楽しいところは、ニカの純粋なイタズラ心でしょう。
目の前にイタズラ出来そうなことがあるからイタズラをする。
ただ、イタズラをしたいからイタズラをする。
そんな純度100%のイタズラ心が子どもたちの心を掴みます。
理由なんてありません。
やりたいからやるのです。
普段はダメだと言われるイタズラを、次々と堂々とやってのけるかにのニカにはロマンが詰っているのかもしれません。
また、そのイタズラがシンプルで気持ちいいのも素敵なところ。
ニカのイタズラの仕方はたった一つ。
ハサミで「しょっきん」と切るだけです。
釣り糸も盆栽も縄も全て「しょっきん」の一言で終わります。
これがなんともわかりやすくて気持ちいい。
さらに、ニカの表情が、全く悪いと思っていない清々しい笑顔なのもポイント。
悪いことをしているという思いを一切感じさせません。
「しょっきん」までの流れも完璧で、遠目に見える切れそうなものとニカという構図が、子どもたちに「絶対切っちゃうよ!」とワクワク感とドキドキ感を与えてくれます。
「切っちゃダメー!」と言いながらニヤニヤする子どもたち。
そして「しょっきん!」の後は「切っちゃった~」と言いながらの嬉しそうな表情。
やりたいけれど抑えている好奇心を、ニカが代わりに実現してくれているかのようです。
リズミカルで言葉遊びのような文章
そんなイタズラのワクワク感をさらに盛り上げてくれるのが、リズミカルな文章です。
この絵本は、
「にか にか にか にか かにの ニカ」
「むず うず うず むず うでが なる」
という、二つの決まり文句を中心に物語が進んでいきます。
これが読んでいても聞いていても楽しいこと。
同じ音の繰り返しと言う、言葉遊びのようなおもしろさ。
さらに、ニカの「早くイタズラしたくてたまらない」というはやる気持ち。
そして、「これから絶対イタズラするぞ!」という期待感。
その全てが詰まっていて、嫌でもワクワクしてしまうのです。
この気持ちよく、イタズラ独特のワクワクドキドキ感を盛り上げてくれる文章も、この絵本のとても素敵なところです。
平和に終わったかと思いきや・・・
さて、そんなニカのイタズラも、なぜか感謝され、平和に丸く収まっていきます。
最後の場面で、
「ニカもイタズラして怒られるより、お礼を言われる方が楽しいと感じているのかな?」
「これからはイタズラも減るかもしれないな」
と思わせてくれるます。
・・・が、やっぱりそこはかにのニカ。
最後の最後で期待を裏切らないニカらしい結末が待っていました。
それが最後の「しょっきん!」。
まさかの結末に子どもたちも「え~!?」と、驚きの叫びをあげて終わります。
これがなんとも気持ちいい。
このニカらし過ぎる結末も、この絵本のとてもおもしろいところです。
二言まとめ
ニカと一緒に、イタズラをするドキドキ感やワクワク感、気持ちよさを思い切り味わえる。
読めば色んなものを「しょっきん!」とイタズラしたくなる絵本です。
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