文:リリー・ロスコウ 絵:デイヴィッド・ウォーカー 訳:福本友美子 出版:岩崎書店
夜の散歩を知っていますか?
子どもたちは夜になると家を抜け出し、夢いっぱいの散歩に出かけます。
そして、夜明け前にこっそり帰ってきているのです。
あらすじ
夜になり、お父さんとお母さんが眠ったその後に、夜の散歩は始まります。
子どもたちは毛布をはねのけ、こっそり家を抜け出して、一目散に駆けていく。
夜の通りは誰もいない。
飛んでも跳ねても大丈夫。
みんなで歌い、ケーキを作り、かくれんぼに、砂遊び。
輪になって楽器を鳴らし、2列になって仮装行列。
どっさり本のある丘で、好きなだけ本を読む。
そして、本を読んでるうちに、段々と眠くなる。
眠くなったら・・・。
『よるのおさんぽ』の素敵なところ
- 夜に抜け出すワクワク感
- 好きなことがなんでもできる夜の世界
- 最後までこっそりと
夜に抜け出すワクワク感
この絵本のなによりワクワクするところは、夜中にこっそりと家を抜け出すことでしょう。
親にもばれないように、こっそり家を抜け出して遊びに行く。
こんなにもワクワクすることはありません。
子どもたちも、
「えー!ダメだよ!」
「ママに怒られちゃう!」
と言いつつ、目をキラキラ。
眼差しに憧れが詰まっていました。
さらには、抜け出しても一人ぼっちじゃありません。
友だちと子どもだけで遊ぶのです。
誰も邪魔するもののない、子どもだけの時間。
これにロマンを感じないはずがありません。
そんな「本当はやっちゃダメ」を実現してくれるのが、この絵本の素敵なところです。
好きなことがなんでもできる夜の世界
そうして、繰り出した夜の世界。
そこは自由な世界でした。
いつもは「走らない!」「車が来るよ!」と言われがちな街の中も、夜の世界には自分たちしかいません。
どこを歩いてもいいし、段差に登っても怒られません。
やろうと思えば、ケーキも作れるし、音楽だって仮装だって出来てしまいます。
お月様と遊ぶことも。
極めつけは本の山。
好きな本を好きなだけ好きなように読める、夢のような空間です。
これを見てしまったら、「ママに怒られちゃう」と言っていた子も、「わたしも行きたい!」にすっかり変わり、夜の散歩の魔力に引き込まれたみたいでした。
この、子どもから見た夜への特別感が、そのまま表現されているのも、この絵本のとても素敵なところです。
最後までこっそりと
さて、楽しかった夜の散歩も、永遠に続くわけではありません。
夜はいつか明けるのです。
それに、子どもだからやっぱり眠くなってしまいます。
この時、夜明け前にしっかりベッドに戻るのも、この絵本の素敵なところ。
だって、夜明け前にベッドに戻れば、パパとママにバレません。
なにより、ちゃんと寝る時間もとれるのですから。
楽しみつつも、「バレたらどうしよう」という不安があった子も安心です。
そして、落ち着いて夢の中へ・・・。
思い切り遊び、遊び疲れて穏やかに眠る。
この緩急が、子どもたちのことも眠りに誘います。
最後の場面を見た子の「朝はちょっと眠いかもね♪」という言葉が、絵本の中の子どもたちと一緒に、見ている子も散歩を楽しんだのだろうなと感じさせてくれました。
夜の散歩らしい、眠りで終わる結末も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
夜中に家を抜け出して、好きなことを好きなだけできる夢のような夜の世界。
そこで、遊び疲れるまで、自由に散歩ができるロマンあふれる絵本です。
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