つきよのさんぽ(3歳~)

絵本

作:安江リエ 絵:池谷陽子 出版:福音館書店

夜、月を見ながらお父さんと散歩。

昼の散歩とは違った雰囲気と楽しさがあります。

そんな夜道を歩いていたら、色々な生き物たちと出会いました。

あらすじ

ある晩、お父さんと夜の散歩に出かけることになった。

なぜなら、今夜は満月だから。

月明かりの道を歩いていると、カメの親子と出会った。

親カメの背中に子カメが乗っている。

カメの親子はゆっくり行くということで、先に行かせてもらった。

カメと別れてから、男の子はカメのようにお父さんにおんぶしてもらった。

そこへ、カナブンが飛んできてあいさつした。

こんな晩は樹液がたくさん流れるから、食べに行くらしい。

カナブンは嬉しそうに飛び去って行った。

男の子はカナブンを見て飛びたくなり、お父さんの背中から降りると、飛ぶように走った。

お父さんも両手を羽ばたかせ追いかけてきた。

夢中で走って行くと、子ウサギが飛び出してきた。

お父さんとお母さん、子どもが3匹。

巣からウサギがみんな出てきたところで、お父さんがあいさつした。

どこかに行くのかと聞くと、お月見するのにいい月の広場へ行くと言う。

そして、あっという間に跳ねて行ってしまった。

また歩いていくと、2匹のモグラが影で背比べをしているところに出くわした。

モグラの1匹が男の子とお父さんに気付き、どちらが高いかと聞いてきた。

男の子が測ると、ピッタリ同じ。

2匹のモグラは双子だった。

モグラたちにお父さんが、月の広場の場所を聞くと、モグラたちもそこへ行くと言うので一緒に行くことになった。

少し行くと月の広場に着いた。

そこは真ん中に池のある、白樺の木に囲まれた広場だった。

まん丸の月が空に浮かび、それが池に映っている。

そこにはウサギたちもいて、もう遊んでいた。

男の子も遊びに入れてもらい影ふみをすることに。

月の広場でのひと時は、一体どんな楽しい時間になるのでしょう?

『つきよのさんぽ』の素敵なところ

  • お父さんと2人だけの素敵な時間
  • 動物たちとの楽しい時間
  • 月と夜の美しさが際立つ版画の絵

お父さんと2人だけの素敵な時間

この絵本のなにより素敵なところは、お父さんを独り占めできる2人だけの時間でしょう。

2人で手を繋いで歩き、おんぶをしてもらい、追いかけっこをして・・・。

とお父さんにしてもらいたいことが目白押し。

自分だけをみて、一緒にたくさん遊んでくれるお父さんとの時間。

しかも、夜の月明かりの中という特別感。

見たら、誰もがお父さんと月夜の散歩に行きたくなるでしょう。

動物に話しかける時なども、一緒にしゃがんで目線を合わせてくれたりと、男の子と同じようにお父さん自信が楽しんでいることが伝わってくるのも素敵です。

こんな風に、この絵本には2人だけの散歩だからこその、楽しさや嬉しさが詰っているのです。

夜に思い切り遊んだり、走り回れる特別感も。

動物たちとの楽しい時間

そんなお父さんとの楽しく特別な時間。

けれど、月夜の散歩の楽しいところはそれだけではありません。

色々な動物たちと出会い、遊ぶことができるのです。

月夜の道を歩いていると出会う色々な動物たち。

あいさつをして世間話をしていると、穏やかでゆったりとした時間が流れます。

きっとこれが昼とは違う、夜の時間の流れ方なのでしょう。

さらに、月の広場に着くと、これまで出会った生き物が勢ぞろい。

みんなで影ふみをして遊びます。

ウサギやモグラとのおいかけっこ。

そんなシチュエーションにワクワクしてしまいます。

そして訪れる、みんなでのんびりと月を眺めるのんびりとした時間。

たくさんの生き物がいる中なのに、賑やかさよりも、穏やかさを感じるのはきっと月の力なのでしょう。

生き物たちと月の下で、楽しくも、穏やかな時間を過ごせるのもこの絵本の素敵なところです。

月と夜の美しさが際立つ版画の絵

さて、この素敵な物語や雰囲気を盛り上げるのに、欠かせないものがあります。

それが、版画で描かれた絵です。

優しいクリーム色と、鮮やかな黒で描かれた2色の世界。

それが、月明かりで照らされた夜の雰囲気をきれいに作り出しています。

暗さと明るさのコントラストが、夜であることを直感的に感じさせてくれ、表紙を見た瞬間に時間を夜へと進めてくれるのです。

きっと色の少なさが、夜の静けさや、物悲しさ、夜にしかない美しさを伝えてくれているのでしょう。

また、版画特有の線の立体感もとても素敵。

月のまるみや凹凸感は、十五夜の月のように、クレーターまではっきり見えるほどの澄んだ空気の中で見る月を感じさせてくれます。

池のさざ波なども、中心から広がって行く波紋と、そこに映ったつきのゆらめきが、本当にゆらゆらと動いているように感じさせてくれます。

この物語の夜ならではの特別感は、版画で描かれているからこそ感じられるものなのだと思います。

二言まとめ

2色の世界で描かれた月夜の晩が、とても特別で、楽しく、美しい。

見れば次の満月に、お父さんと夜の散歩に出かけたくなる、月の魔力が詰った絵本です。

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