ぼくのふとんはうみでできている(4歳~)

絵本

作:ミロコマチコ 出版:あかね書房

かけると気持ちのいい布団。

それはまるで海に包まれているみたい。

波の音に揺られ、海の夢から目覚めると・・・。

あらすじ

男の子のかけ布団は海でできている。

布団にはさざ波が立ち、波の心地よい音がする。

ネコのシロも一緒に寝る。

眠ると布団の海に潜り込み、シロと一緒に深い海を泳ぎ回る。

シロはとても速くって、先へ先へと泳いでいく。

そんなシロに、小さな貝殻が5つついていく。

あれはなんだろう?

と、目が覚めると、そこには5匹の子ネコが産まれていた。

貝殻みたいに、小さくてきれいな子ネコたちだった。

夜になり、布団に入る。

男の子のかけ布団は5匹のネコでできている。

もぞもぞにゃあにゃあ動く布団で眠りにつく。

男の子がネコたちの布団をこねていると、段々もちもちふかふか。

それからあまーい匂い。

目が覚めると、朝ごはんに美味しいふかふかのパンが用意されていた。

夜になり、布団に入る。

男の子のかけ布団は食パンでできている。

あまりにいい匂いなので、口元から食べると、布団が小さくなって足が少し出てしまう。

少し寒い。

そんな布団で寝ていたら、誰かが男の子の布団を食べた。

それは大きなゾウだった。

布団を全部食べられて、男の子が困っていると、パンのお礼にゾウの大きな布団で一緒に寝ることになった。

ゾウさんの布団は大きいけれど、ゾウさんも大きいから、男の子ははみ出てしまって寒い。

男の子のほうに布団を引っ張ると、ゾウさんの鼻が出てしまって寒い。

そこで、ゾウさんの鼻に、男の子の海の布団をかけてあげた。

2人はゆったり夢の中へ。

と、その時、突然ゾウさんの鼻から海が溢れだした。

どんどん溢れて辺りがみんな海になっていく。

男の子は海を泳いで、ゾウさんに別れを告げた。

夜の真っ暗で、なにも見えない海へと泳ぎ出た男の子。

一体どうなってしまうのでしょう?

『ぼくのふとんはうみでできている』の素敵なところ

  • 連想ゲームのように変わっていく楽しい布団
  • 夢なのか現実なのかぼんやり曖昧な境界線
  • 優しさと怖さの両方を持った本物の海のような布団

連想ゲームのように変わっていく楽しい布団

この絵本のなにより楽しいところは、毎晩移り変わっていく布団でしょう。

これが、ただ変わっていくのではなく、朝の出来事と関連しているのがおもしろいところです。

朝、子ネコが産まれた晩は、ネコの布団。

朝ごはんにパンを食べた晩は、パンの布団。

というように、前の出来事が、布団になって話が進んでいくのです。

その移り変わりは、まるで連想ゲーム。

しかも、普通の連想ゲームよりも、発想が自由でなんでもあり。

ネコでもパンでも、なんでも布団になってしまいます。

子どもたちも、

「気持ちよさそうだけど、濡れちゃわないかな?」

「ネコってあったかいもんね♪」

「食べたら歯を磨かなくっちゃ」

などなど、その布団で寝ることを想像しながら楽しんでいるみたい。

この連想ゲームのように移り変わっていく布団を、順番にかけている気分で楽しめるのが、この絵本のとても素敵なところです。

夢なのか現実なのかぼんやり曖昧な境界線

そんな変わった布団や、そこでの不思議な体験は、普通なら「なんで!?」と驚きの方が勝ってしまうでしょう。

ですが、この絵本では自然に受け入れられてしまいます。

それは、夢と現実の境界線が曖昧でぼんやりしているからだと思います。

布団で寝て、夢の世界に飛び出し、目が覚めると夢に出てきたものがある。

一見そんな風に、夢と現実がわけられているように感じられるこの絵本。

けれど、よく考えると現実の世界の朝ごはんから、まだ眠る前にパンの布団をかけていたりと、不思議な世界であることに気付きます。

そして、この不思議な世界にしばらくいると、なにが起こっても不思議ではなくなってくるから不思議なもの。

ゾウの布団で眠るのも、ゾウの鼻から海が溢れだしてくるのも、自然に受け入れられ、この世界を純粋に楽しむことができるのです。

また、こんなにも自然に受け入れられるのは、家でよくある布団あるあるがところどころで見られるからかもしれません。

パンを食べて足が出るのは、布団を深くかぶったら足が出る現象とかぶりますし、

ゾウが布団をかけると男の子が出てしまい、男の子が布団をかけるとゾウの鼻が出てしまうのは、まるで大人と一緒の布団で寝ている時によくあるやつ。

子どもたちも、足が出てしまうのを見て「丸くなれば大丈夫なんだよ」など、同じようなことを体験している様子。

そんな身近な布団あるあるが、不思議な世界へ妙なリアリティを与えているように思えます。

優しさと怖さの両方を持った本物の海のような布団

さて、こうして色々な布団が出てくるこの絵本。

一番最初、海の布団から始まりましたが、最後も海の布団で終わります。

ですが、その海の雰囲気が最初と最後でまったく違うのも、この絵本のおもしろいところ。

最初はシロと一緒に、月明かりの明るい海を泳いでいる、まるで沖縄でダイビングを楽しんでいるような楽しそうで、海が包んでくれているような優しい雰囲気です。

それに対して、最後の海は、明かりの届かない真っ暗な海。

まるで深海のよう。

海に遊びに来たというより、溺れて迷い込んでしまったみたい。

さらにそこに追い打ちが待っています。

これまで楽しく笑いが絶えなかった物語へ、急に訪れる大きな不安。

それはまるで悪夢にうなされているようです。

子どもたちも、「怖い」と身を寄せ合い始めます。

そして迎える最後の場面。

みんな「ふうっ」と胸をなでおろします。

同時に、おぼろげで楽しい夢の世界から「はっ」と目が覚めるのです。

この海の優しさと怖さ、夢の世界の楽しさと不気味さ。

その両方をたっぷりと楽しませてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

夢の世界だからこその、不思議でおもしろく、おいしい布団で眠ることができる。

海の布団をかけると、海の優しさ、波の音の心地よさ、暗くて深い怖さ・・・、色々な海の表情に触れられる絵本です。

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