ペンギンのパンゴー(4歳~)

絵本

作:市川里美 出版:BL出版

大事にされていたぬいぐるみのペンギン。

ですが、持ち主を他のぬいぐるみに取られてしまいます。

自分が一人ぼっちになったと思ったペンギンは、仲間探しに家を出ます。

あらすじ

ぬいぐるみのペンギン、パンゴーはダニーという男の子の家に住んでいました。

ダニーが赤ちゃんの時から、なにをするのも一緒でした。

中でも、ダニーとパンゴーが一番好きなことは、おばあちゃんの連れていってくれる水族館。

そこにはたくさんのペンギンがスイスイと泳いでいました。

ある日、ダニーの誕生日会が開かれました。

友だちもたくさん来て、ダニーは忙しそうです。

パンゴーはそれをおばあちゃんのイスの後ろに隠れて見ていました。

ダニーは友だちから、たくさんのぬいぐるみをもらいました。

そして、そのぬいぐるみを持って自分の部屋へ。

パンゴーのことは忘れている様でした。

イスの後ろでしょんぼりするパンゴー。

ダニーはもうパンゴーのことが好きじゃなくなったんだと思いました。

そこでパンゴーは思い出しました。

ペンギンの自分には、水族館にたくさん仲間がいたことを。

さっそくパンゴーは家を抜け出し、水族館へと向かいました。

水族館に着いたパンゴーは、ペンギンの水槽の前にやってきます。

すると、パンゴーを見に、たくさんのペンギンたちが近づいてきました。

パンゴーがペンギンたちに、自分はペンギンだと自己紹介しますが、ペンギンたちは疑っています。

「寒いところに住めるか?」

「魚は食べられるか?」

「泳げるか?」

と、色々なことを聞かれますが、パンゴーはどれもやったことがありません。

その答えを聞くと、ペンギンたちはみんなどこかへと泳いで行ってしまいました。

また、一人ぼっちになってしまったパンゴー。

どこに行けばいいのかと途方に暮れていたその時・・・。

パンゴーに何が起こったのでしょう?

パンゴーの居場所は見つかるのでしょうか?

『ペンギンのパンゴー』の素敵なところ

  • ぬいぐるみの持つ様々な気持ち
  • 思い立ったらすぐ行動するアグレッシブなパンゴー
  • パンゴーの素敵な居場所

ぬいぐるみの持つ様々な気持ち

この絵本では、ぬいぐるみの気持ちがパンゴーを通して描かれます。

ずっと一緒にいられる嬉しい気持ち。

持ち主のことが大好きな気持ち。

忘れられると悲しい気持ち。

普段は動かないししゃべらないぬいぐるみが持つ気持ちを、生き生きと描き出しているのです。

特に、忘れられている時の悲しみはとても強く、絶望に似たものを感じさせてくれます。

そんなパンゴーを見ていると、自分の持っているぬいぐるみはどう思っているんだろうと考えてしまいます。

「大事にしているかな?」

「悲しんでいないかな?」

と、パンゴーと自分のぬいぐるみが重なることでしょう。

子どもたちも、「今日はクマちゃんと一緒に寝よう!」など、ダニーとパンゴーの関係性がうらやましくなったり、ぬいぐるみへの愛情が増している様でした。

ダニーとパンゴーの姿を通して、ぬいぐるみの心を代弁してくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。

思い立ったらすぐ行動するアグレッシブなパンゴー

さて、ずっと一緒だったのに、誕生日の日に忘れられてしまったパンゴー。

悲しみと絶望を感じます。

イスの後ろでうなだれる姿などは、まさにどん底といった感じ。

ぬいぐるみにとっての、持ち主の大切さがひしひしと伝わってきます。

けれど、ずっと落ち込んでいるパンゴーではありません。

朝になると、気持ちを切り替え、これまでの生活に別れを告げて、ペンギンになろうとするのです。

この切り替えがすがすがしい。

いつまでもウジウジなんてしていないのです。

そして、さっそく窓を開け、外へ出て水族館へ。

この行動力と前向きさがすごい。

さらには、自分が水族館のペンギンと違うところを認めますが、のちのち諦めていないこともさり気なくわかり、やっぱり前向きなことに気付かされます。

パンゴーのカラッとした切り替えの早さや、行動力、前向きな考え方は、この絵本とパンゴーの大きな魅力の一つです。

パンゴーの素敵な居場所

そんなパンゴーも、自分が水族館のペンギンとは違うとわかり、途方に暮れてしまいます。

行く当てもなくなり、どうしようか困っていると、どこからか声が聞こえてきます。

そして、自分の居場所に気付くのです。

この結末ももちろん素敵なのですが、そこに至る伏線回収がさらに素敵だと思うのです。

そこに辿り着くためには、色々な伏線がありました。

そして、それを回収するためには、パンゴーを思いやる気持ちや、いつもパンゴーを見ていることが必要なのです。

この伏線回収をした結末は、まさにパンゴーが大切にされていた証なのでしょう。

この結末と、結末に辿り着くまでの優しく丁寧な物語も、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

ダニーとパンゴーの関係性ややり取りに、とても優しい気持ちになる。

自分の家のぬいぐるみにも愛着が増し、大切にしようと思える絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました