作:新井洋行 出版:ほるぷ出版
自分が世界一大きいと思っていたモンスター。
けれど、さらに大きなモンスターが次々現れます。
どんどん世界一から遠ざかっていくモンスター。
ですが・・・。
あらすじ
とても大きなモンスター、イッチーは世界一のモンスターだと名乗ります。
なぜなら、世界一大きいからです。
と、そこへ、なんでもお見通しのモンスター、ミールが現れました。
なんと、イッチーより大きいモンスターです。
あっという間に、イッチーは2番目に大きいモンスターになってしまいました。
と、そこへ、トゲトゲモンスター、トゲトゲ―が現れました。
なんと、ミールより大きいモンスターです。
イッチーは3番目になってしまいました。
と、そこへ、岩でもなんでも食べてしまうモンスター、カミクダークが現れました。
なんと、トゲトゲ―より大きなモンスターです。
イッチーは4番目になってしまいました。
その後も、バイキング、アッチ―ゾ、オモーイ、カッチンコ・・・。
と、どんどん大きなモンスターが現れます。
イッチーはどんどん小さなモンスターに。
が、そこでイッチーはあることに気が付きました!
『せかいいちのモンスター』の素敵なところ
- どんどん大きくなるモンスターと、どんどん小さくなっていくイッチー
- 特徴的過ぎるモンスターたち
- やっぱりイッチーが世界一?
どんどん大きくなるモンスターと、どんどん小さくなっていくイッチー
この絵本のなにより楽しいところは、どんどん大きなモンスターの登場で、相対的にイッチーが小さくなっていくところでしょう。
最初は、画面いっぱいに描かれるイッチー。
その姿はまさに巨大モンスターです。
ですが、「ちょっとまて!」の掛け声ととも現れる、少し大きなモンスター。
すると、イッチーが少し小さく。
さらに出てくる「ちょっとまて!」。
この繰り返しが、たまらなくおもしろい。
これでもかと出てくるモンスターに、
「まだ出てくるの!?」
「もう、イッチーすごい小さいよ!」
と、イッチーへの憐みの声が・・・。
それもそのはず、最後の方にはページの隅にぽつんと描かれるような、とても小さな存在になっているのです。
加えて、最初は偉そうに「ガオーガオー!」と言っていた口調も、「そんなぁ、8番目か」とすっかり弱気。
さすがにかわいそうになってきます。
このどんどん大きく、どんどん小さくなっていく視覚的なおもしろさと、「大きいとは・・・?」という相対性のおもしろさを、直感的に感じられるのが、この絵本のとてもおもしろくて素敵なところです。
特徴的過ぎるモンスターたち
こんな風にどんどん出てくるモンスターたちですが、ただ大きくなっていくだけではないのもおもしろいところです。
そのモンスターがどれも特徴的過ぎるのです。
モンスターにはそれぞれ一芸が用意されていて、そのどれもがわかりやすくシンプル。
トゲ、ばい菌、火の玉、重い・・・。
などなど、どんなモンスターか一発でわかります。
特に暴れるでもなく、ただ背の順に並ぶだけなのに、ものすごい個性を出してくるのがすごい。
子どもたちも、
「あのトゲ伸びそうじゃない?」
「口から火の玉が出るんだよ!」
「火の玉モンスターも凍らせちゃうんじゃない!?」
など、そのモンスターの能力や、パワーバランスを自然と想像してしまいます。
そんな、単純にユニークなモンスターたちを眺めるのもだけでも楽しいところも、この絵本のとても素敵なところです。
やっぱりイッチーが世界一?
さて、どんどん小さくなっていくイッチーですが、最後の最後に起死回生のアイデアが浮かびます。
そして、どんどん大きいモンスターが出てくる中、最後に「ちょっとまて!」と叫んだのはまさかのイッチーでした。
このアイデアで、イッチーは最初のように世界一に躍り出ます。
これがなんともとんちのきいた、相対性を活かしたものになっていておもしろい。
世界一の曖昧さや、見方によっていくらでも変わることを痛感させられます。
まさにものは言いよう。
イッチーは世界一機転が利くモンスターなのかもしれません。
この、なんともイッチーらしい、おもしろすぎるどんでん返しの結末も、この絵本の飛び切り楽しいところです。
それを無に帰す、一番最後のオチも・・・。
二言まとめ
世界一大きかったモンスターが、みるみる小さくなっていくのがおもしろい。
「世界一」という言葉の曖昧さや、相対性のおもしろさを心から味わえる絵本です。
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