作:山口マオ 出版:交通新聞社
ネコのネコによるネコのためのネコ電車。
ネコ電車には、ネコに嬉しいサービスが盛りだくさんです。
ネコの方はご乗車ください!
あらすじ
ネコの顔をしたネコ電車が、2両編成でどこからか走ってきます。
もちろん、運転士はネコ。
ネコ電車は、ネコのネコによるネコのための電車です。
さっそく、子どものネコ吉は、お父さん、お母さんと、ネコ電車へ乗り込みました。
ネコ吉は、車窓から景色を見るのが大好きです。
いつものように、窓から外を眺めていると、小鳥のお花屋さんが飛んできました。
ネコ吉はお花を一つ買いました。
お母さんにお花を渡すと、弁当屋が歩いてきました。
ネコ吉たちは、お弁当を3つと、ネズミクッキーを2つ買いました。
お弁当には、ネコの大好きな、かつ節おにぎりが入っていました。
と、お弁当を楽しんでいると、急に辺りが真っ暗に。
トンネルです。
そして、トンネルを抜けると、そこは一面の海。
海に面したうみねこ駅へ到着しました。
しばらく停車するということで、ネコ吉家族は、窓から魚釣りをすることに。
すると、釣れるわ釣れるわ。
大量に釣れ、車内は魚だらけになりました。
大量の魚に喜んでいると、そこへ遠足帰りの子ネコたちがたくさん乗車してきました。
子ネコたちにも魚をわけてあげると、予想外のおやつに大喜びです。
と、その時、またトンネルに入りました。
トンネルを抜けると・・・。
『ねこでんしゃ』の素敵なところ
- ネコに嬉しいサービス満載のネコ電車
- トンネルを抜けるワクワク感
- 考えれば考えるほど不思議な電車
ネコに嬉しいサービス満載のネコ電車
この絵本のおもしろいところは、ネコ電車が、名前負けしないほどネコのための電車なところでしょう。
顔はネコの形をしているし、駅弁のおにぎりはネコの大好きな鰹節。
ネズミクッキーに、車内で魚を釣っても怒られない・・・。
と、まさにネコに嬉しいサービスが目白押しです。
中でも、最後のサービスは特にネコにぴったりのもので、ネコ電車ならではです。
まさに、ネコのネコによるネコのためのネコ電車。
ネコならではのアイディアが詰っているのです。
子どもたちが、どの場面を見ても、
「あー、ネコだからね!」
「ネコってこれ好きだもんね!」
と、妙に納得できる、ネコのネコによるネコのための統一感が、この絵本のなんとも素敵なところです。
トンネルを抜けるワクワク感
そんなネコ電車が走って行くと、いくつか大きな場面転換があります。
それが、トンネルに入り、抜ける時。
これが、絵本にとてもメリハリをつけてくれています。
それまでネコ家族と駅弁を食べるのに夢中だった子も、トンネルに入り真っ暗になると、「真っ暗になった!」と、絵本に食いついてきます。
この時の、真っ暗な中、ネコの目だけ見える構図もおもしろく。
子どもたちも「目だけになっちゃった!」と、驚いたり笑ったり。
そして、ページをめくり、トンネルを抜けるとそこは一面の青い海。
「わあ!」
「海だ!」
「広いねー!」
と、感嘆の声を上げる子どもたち。
それは本当に電車に乗っているような反応と雰囲気でした。
トンネルの画面に釘付けになっていたこともあり、一気に開ける視界はかなり解放感と感動を与えてくれたみたいです。
さらに、おもしろいのが、2回目のトンネル。
トンネルに入ると、
「次はどんなところかな?」
「山の中じゃない?」
「空飛んでるかもよ!」
と、ワクワクが止まりません。
トンネルを抜けると、全然違う場所にいるという1回目の経験があるからこそでしょう。
トンネルでの場面転換が、子どもたちを絵本にひきつけ、さらにワクワク感を与えてくれているのです。
考えれば考えるほど不思議な電車
さて、一見なんの変哲もないネコ電車。
ですが、深く考えると、たくさんの謎が出てきます。
ネコが電車を運転しているなどの根本的なところは置いておいて・・・。
どこに向かっているのか?
ネコの家族はどこに行こうとしているのか?
季節をまたぎ走っている電車の不思議さ・・・。
などなど、色々な疑問が出てきます。
特に、お客さんの行き先が大きな謎。
普通電車は、どこかに行くために乗りますが、その目的地は少しもわかりません。
さらには、最後の場面で季節をまたぐような描写も見られます。
もちろん、そんなこと考えずに見ればいいのですが、それを想像して楽しめるのも、この絵本のとても素敵なところだと思います。
年中、年長クラスなどに読むと、自然とこんな疑問が湧いてくることも多く。
「ネコたちはどこに行きたいんだろう?」
「ずーっと電車に乗ってるのかな?」
「子ネコたち家に帰らないと心配しちゃうよ!」
など、目的や時間軸に色々な疑問を口にします。
そこから「こうなのかな?ああなのかな?」と、あれこれ想像する時間が生まれるのです。
答えがないからこその、色んな想像が出てくる楽しい時間です。
二言まとめ
ネコへのサービスの充実っぷりに、ネコのネコによるネコのためのネコ電車というキャッチコピーに納得させられてしまう。
見ていると、自分も一緒に乗車して電車の旅を楽しめる、ネコのネコによるネコのための絵本です。
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