作:むらかみひとみ 出版:イマジネイション・プラス
1日中、木にぶら下がっているナマケモノ。
でも、それは頑張っているわけでも、怠けているわけでもありません。
ナマケモノだからなのです。
あらすじ
木が生い茂った暑い森には、色々な生き物が暮らしている。
そんな森で、ナマケモノはいつも木にぶら下がり、お腹が空いたら葉っぱを食べ、あとはずっと昼寝をして過ごしています。
ある日のこと。
ナマケモノの木の下で、森の生き物が集まって、誰がこの森で一番か言い合いを始めました。
走る速さでは一番のジャガー。
声の大きさで一番のホエザル。
舌の長さで一番のアリクイ・・・。
など、それぞれが一番の自慢しあいました。
そんな中、ぶら下がるのは誰が一番かという話になり、ぶら下がり競争が始まりました。
森の生き物みんなで一斉に木へぶら下がります。
最初は張り切っていた動物たちも、時間が経つにつれ、だんだん疲れてきました。
と、そこへ、急に雨が降ってきました。
すると、生き物たちはみんな巣穴に帰ってしましました。
ナマケモノだけをのぞいては。
ナマケモノは雨が降っても、夜になっても、そのままぶら下がって眠り続けています。
次の日、また木の下に集まった動物たちは、ナマケモノの姿を見て・・・。
『ナマケモノだから』の素敵なところ
- ナマケモノがどんな動物かわかる
- 絵本全体から滲み出るナマケモノのマイペースさ
- 森の中の多様性とおもしろさ
ナマケモノがどんな動物かわかる
この絵本のおもしろいところは、ナマケモノの暮らしぶりがよくわかるところでしょう。
最初から最後までほぼ同じポーズのナマケモノ。
しかも、その間、ほぼ目を閉じて寝ています。
雨が降っても夜になっても、同じポーズでぶら下がり眠るナマケモノ。
動きと言ったら、葉っぱを少し食べるために手を伸ばすことぐらい。
とてものんびりで、とても癒される、まるでぬいぐるみのような姿です。
が、驚くべきは、これが絵本だからではなく、リアルな姿だということ。
子どもたちの中にも、このナマケモノが特別だと思っている子がいましたが、本当にこうやって暮らしているのだと知ると、
「え!?本当にずっと寝てるの!?」
「本当にいるんだ!?」
「ずっと寝てて、食べられないの!?」
と、衝撃を受けている様でした。
また、絵本の最後に、わかりやすいナマケモノの解説も載っていて、それも合わせナマケモノの生態がよくわかるようになっています。
普段はあまりなじみのない、不思議で魅惑的なナマケモノに出会うことができるのは、この絵本のとても素敵なところだと思います。
絵本全体から滲み出るナマケモノのマイペースさ
そんな、のんびりと自分のペースで生きているナマケモノ。
他の動物たちとは、だいぶ生きるペースが違います。
それぞれの特徴を見せ合い、一番を競い合う動物たち。
それを見るナマケモノは「だれが一番かなぁ」と、完全に他人事。
なにを言い合っていても、見せ合っていても、木にぶら下がって眠っています。
この、なにがあってもいつも通り、自分通り生きているマイペースっぷりが、動物たちとの対比で見事に描き出されています。
絵本全体から滲み出る、ナマケモノらしさと、そのマイペースっぷりに、いつしか動物たちも見ている人も「自分らしく生きればいいか」と思わせてくれる雰囲気も、とても素敵で癒されるところです。
森の中の多様性とおもしろさ
さて、こうしてそれぞれの一番があり、比べても仕方ないという気持ちは多様性へと繋がります。
一見、怠けているように見えるナマケモノも、別に怠けているわけではなく、自分らしく生きているだけ。
森の動物たちも同様です。
それは森の中だけではなく、自分の周りでも同じでしょう。
ジャガーのような子、ホエザルのような子、ナマケモノのような子。
自分と周りの子の違い。
そんなことに気付き、「別にマイペースに生きてもいいんだな」と、そんな風に感じさせてくれる空気があります。
もちろん「自分はこの動物みたいになりたい」という子もいました。
それも含めてどんな考え方でも、ナマケモノのようにふんわり受け止めてくれるようなこの絵本の雰囲気も、この絵本ならではのとても素敵なところだと思います。
二言まとめ
とても不思議な動物ナマケモノのマイペース過ぎる生態を、身近に感じることができる。
ナマケモノと森の動物たちの姿から、色んな生き方を認めてもらえるような動物絵本です。
コメント