だめだめネコはこまったゾウ(4歳~)

絵本

作・絵:はらだゆうこ 出版:旺文社

「ダメ!」と言って、みんなを仲間外れにしていくネコ。

でも、どんどん仲間外れにしていくと・・・。

困ってしまったのは誰でしょう?

あらすじ

天気のいいある日、動物たちが輪になってダンスを踊っていました。

しばらくして、一匹のネコが「みんなの形がバラバラで、輪がきれいに見えない」と言いました。

ネコはキリンに「一人だけ首が長いから、輪がきれいに見えないんだ」と言い、みんなもそれに賛同しました。

ネコはゾウに「一人だけ鼻が長いから、輪がきれいに見えないんだ」と言い、みんなもそれに賛同しました。

ネコはその後も、動物みんなに、みんなと違うところを指摘して、ダメだと言いました。

動物たちは一匹ずつ輪から抜けていき、気付けばネコ一匹だけになっていました。

その夜、ネコは中々眠れませんでした。

ネコは思い出していました。

夏の暑い日に、ゾウが長い鼻でみんなに水をかけてくれたことを。

お腹が空いた時、キリンが長い首で木の実を取ってくれたことを。

みんなの優しさを思い出したネコは・・・。

『だめだめネコはこまったゾウ』の素敵なところ

  • ダメな所ばかり探した結果、周りに誰もいなくなる
  • 嫌なことを言った後のモヤモヤ感
  • やってしまった後の大切な言葉

ダメな所ばかり探した結果、周りに誰もいなくなる

この絵本のとても素敵なところは、みんなにダメだしばかりした結果を見せてくれるところです。

威張って、みんなのダメなところばかり指摘して、仲間外れにしていくネコ。

最初は賛同者も多いのですが、調子に乗って続けていくと、気付けば誰も近くにいなくなっています。

そんなネコを見ていると、自分も誰かに「ダメだ!」と言った時のことが頭に浮かびます。

その時の、相手の悲しそうな顔も。

もし、それをみんなにしてしまったら?

ずっと言い続けてしまったら?

その一つの答えが、まさにこのネコの姿なのでしょう。

ケンカをするわけでもなく、言い返してくるわけでもなく、気付いたらみんな離れて行ってしまっている。

これほど怖いことはありません。

それを、このネコは身をもって、見ている人に伝えてくれているのです。

嫌なことを言った後のモヤモヤ感

また、嫌なことを言った後のモヤモヤ感がよく表れているのも、この絵本のとても素敵なところです。

言った時は意地を張って、「相手が悪い」と思っていても、時間が経つとなんだか心がモヤモヤする。

「自分も悪かった」ということが、本心ではわかっているのに、言ってしまった手前、素直になれない。

でも、眠れないし、ことあるごとに頭に浮かんでくる。

こんなケンカをしたり、嫌なことをしてしまったときに起こるモヤモヤ感が、とてもリアルにネコの姿を通して伝わってくるのです。

うまく言葉にできないけれど、確実にある心の引っかかり。

この姿を見て、きっと自分がモヤモヤを感じた時のことを思い出すでしょう。

もしかしたら、まさにモヤモヤを抱えながら見ている子もいるかもしれません。

そんな子たちに、モヤモヤした時のことを振り返るきっかけをくれたり、

モヤモヤしている時には、寄り添ってくれるのも、この絵本の素敵なところです。

やってしまった後の大切な言葉

さて、このモヤモヤを解消するには、結局あの言葉しかないのでしょう。

ネコは悲しい顔をして輪から抜けていった友だちが、これまでしてくれた優しさを思い出し、この言葉へたどり着きました。

これはまさに人の持つ多様性に目が向いた結果です。

気に食わないところもあれば、気のいい所もある。

そんな当たり前だけど、忘れてしまいがちな部分をネコの姿を通して、思い出させてくれるのです。

そして、自分の気持ちと折り合いをつけた時、出てくるのがこの大切な言葉。

この絵本は、その言葉が中々言えない子の、背中を優しく押してくれるかもしれません。

言えなかったとしても、ネコと一緒に悩み、ネコの言葉を聞いて一緒に言った気持ちにさせてくれるかもしれません。

この大切な一言を考え、伝えるきっかけになってくれるのも、この絵本のとても素敵で優しいところです。

二言まとめ

「ダメだ!」と言い続けた結果の、悲しみやモヤモヤ感がネコの姿を通して、痛いほどに伝わってくる。

そのモヤモヤ感の解消の仕方も、ネコの姿を通して伝えてくれる仲直り絵本です。

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