作:荒井良二 出版:偕成社
バス停でバスを待つ旅人。
けれどバスが中々来ない・・・。
バスじゃない乗り物はたくさん来るんだけどなぁ。
あらすじ
旅人が荒野にポツンとあるバス停で、バスを待っています。
バスに乗って遠くへ行くところなのです。
とてもいい天気ですが、バスは来ません。
旅人はラジオをかけ、音楽を聴き始めましたが、バスは来ません。
大きなトラックが通り過ぎていきましtが、バスは来ません。
馬に乗った人が通り過ぎましたが、バスは来ません。
自転車に乗った人が通り過ぎましたが、バスは来ません。
色んな人が通り過ぎ、夜になりましたが、バスは来ません。
旅人はバス停で眠ることにしました。
やがて、朝になりましたが、バスは来ません。
いつになったらバスはやってくるのでしょう?
『バスにのって』の素敵なところ
- バスが来ない待ち遠しい繰り返し
- 異国情緒あふれる乗り物たち
- バスが来たが・・・
バスが来ない待ち遠しい繰り返し
この絵本のおもしろいところは、『バスにのって』というタイトルに反して、バスが全然来ないことでしょう。
いくらページをめくっても、全然バスがやってこないのです。
「バスが来る」以外のことは色々と起こります。
トラックが来たり、ウマが通ったり・・・。
でも、バスだけはまったく来る気配がありません。
これには子どもたちも、
「えー!?まだバス来ないの!?」
「どんだけ待つの!?」
「これ、バス停じゃないんじゃない?」
と、ついにはバス停という前提が疑われる始末。
それくらい延々とバスが来ないのです。
最初は「次は来るかな?」というワクワク感を持っていた子も、「どうせ来ないんでしょ」という気持ちになってきます。
けれど、そこからがこの絵本の真骨頂。
バスが来ないことを受け入れると、絵の雰囲気と相まって、とてものんびりまったりした気分になってくるのです。
のんびりラジオを聞きながら、どこまでも広い空の下、ゆったりした時間を過ごす。
そんなスローライフを楽しむ感覚になってきます。
この「もうバスに乗らなくてもいいか~」と思わせてくれる、ゆる~いまったりとしたバスがこなさ過ぎる繰り返しが、この絵本のとてもおもしろいところです。
異国情緒あふれる乗り物たち
そんなバスを待つ旅人の前を通るのが、色々な乗り物たち。
この乗り物たちが、とても異国情緒あふれるものになっているのも、この絵本の楽しいところです。
トラックは昔のアメリカ映画に出てくるような、ものすごく大きく長いものだったり、
ウマに乗った人は、どう見てもギターでサンバを演奏するかっこうをしていたり、
自演者に乗った人は、後ろに荷車をつけたくさんの荷物を運んでいたり・・・。
と、ものすごく南米感が溢れるものばかりなのです。
ラジオの音楽も、乗り物の形も、通る人の衣服も、ラテンの雰囲気がものすごく、異国情緒に溢れています。
これが、異国の地に来ている旅感を感じさせてくれるのでしょう。
自分の住んでいる場所とは、違う文化や、違う風習をバスを待つことを通して感じられるのです。
そう思うと、ここではバスが来ないのが普通なのかと思えてくるから不思議なもの。
いつの間にか、この国の楽し気で、おおらかな雰囲気に飲み込まれているのです。
この旅の醍醐味を味わえるのも、この絵本の素敵なところだと思います。
バスが来たが・・・
さて、そんなバスを待つ時間にも、ついに終わりの時がやってきます。
バスがやってきたのです。
「どうせバスは来ない」と思っていた子どもたちも、これにはビックリ。
「本当にバスきた!」
「ここ、やっぱりバス停だったんだ!」
と、さっきまでのまったりモードが嘘のように、一気にテンションが上がります。
ですが、一筋縄ではいかないのがこの絵本。
あれだけ待ったのに、まさかの事態が待ち受けていたのです。
普通なら怒っても仕方のないこの事態。
でも、そこはこの絵本。
自然とそれを受け入れて、なんともこの旅人らしい結論へといたります。
このまさかの事態と、それを自然に受け止める旅人の飄々とした結末も、この絵本らしいとても素敵なところです。
二言まとめ
バスが来ないことにイライラするかと思いきや、バスが来ない時間のまったりゆったり感が癖になる。
ひたすら景色を眺めながらバスを待つ、のんびりした旅感と異国文化を味わうことができる絵本です。
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