文・絵:ピーター・レイノルズ 訳:なかがわちひろ 出版:主婦の友社
空の色といえば青?
じゃあ、もし青い絵の具がなかったら?
よーく空を見ていると、空の色って・・・。
あらすじ
マリソルは、絵描きみたいな女の子。
次から次に絵を描いて、冷蔵庫に貼っている。
飾るためだけじゃなく、他の子のためや、自分の考えを伝えるためにも絵を描いた。
絵を描くだけじゃなく、誰にでも絵を描くことを勧めるから、学校では有名人だった。
ある時、クラスのみんなで図書室の壁に大きな絵を描くことになった。
みんなで話し合い、下書きを描き、いよいよ壁に描き始める。
マリソルは空を描くことにした。
けれど、青い絵の具がなかった。
マリソルは困ってしまい、絵が描けなきまま、帰りの時間になってしまった。
家に向かうバスの中、マリソルは空を眺めていた。
夕暮れの空だ。
家に着いた後も、マリソルは空を眺めた。
夕焼けから、夜に変わっていく空を。
その夜、マリソルは夢を見た。
空を飛ぶ夢だ。
一体夢の中の空はどんな空だったのでしょう?
マリソルは図書館の壁にどんな空を描くのでしょう?
『そらのいろって』の素敵なところ
- 他の角度から空を見る
- 絵の自由さと楽しさが伝わってくる物語
- 色がとても鮮やかに浮き上がる描き方
他の角度から空を見る
この絵本のおもしろいところは、「青い空」という、当たり前に思っていることに疑問を投げかけてくるところでしょう。
子どもたちに「空の色は?」と聞けば「青」「水色」とほとんどの子が答えます。
マリソルも、最初は青い絵の具を探していたので、青で描く予定だったのでしょう。
しかし、青い絵の具がなく困るマリソル。
けれど、そこから空をじっくり観察してみると、青じゃない空もたくさんあることに気付きます。
普段から見ているはずの、夕焼けの赤や、夜の黒。
そんなことに、青い絵の具がなくなって初めて気づいたのです。
これは、目線を変えるだけで、当たり前のものが当たり前ではないことに気付かせてくれます。
きっと、空以外にもたくさんあるでしょう。
「白い雲」「リンゴは赤」「髪の毛は黒」などなど、よく見たら雲には黒は灰色が混ざっていたり、リンゴには緑の部分や黄色いところもあったりします。
この、当たり前に「青い空」を通して疑問を投げかけてくれ、マリソルの姿を通してよく観察してみることで新たな発見があるおもしろさに気付かせてくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。
絵の自由さと楽しさが伝わってくる物語
こうして、観察していった空ですが、マリソルは夕焼けの空や夜の空を、そのまま描くことはしませんでした。
これも、この絵本のとても素敵なところ。
写真などと違って、絵は見たままのものを描く必要はないのです。
「こんな空があったら素敵だな」
そんな空を、マリソルは描きます。
そこには観察した夕焼けの色や、夜の色も混ざりつつ、本当の空では見かけないような色も描かれ、どこか宇宙のような神秘性も感じさせてくれます。
空の色が青だけではないことに気付いたことから、本当の空の色にこだわる必要がないことにも気付き、とても自由な絵になっていく。
この、色々なことから解き放たれていく姿と、それにより完成した自由で美しい絵もこの絵本のとても素敵なところです。
絵は自由で、どんな色を使い、どんなものを描いてもいいことを、改めて感じさせてくれるのです。
色がとても鮮やかに浮き上がる描き方
このように、色について描かれるこの絵本。
その色の描き方にも工夫がされています。
人物や背景などは鉛筆で描いたような色合いで、
反対に、空の色や絵の具、描いた絵などは鮮やかな色をつけて描かれています。
これにより、色のある部分が、よりカラフルに、鮮やかに見え、空の色や、みんなで描き上げた絵が、浮き上がるようにとても美しく見えるのです。
余分な部分の色をなくすことによって、より一つ一つの色に注目できるようにする。
そうして、色のグラデーションの豊富さや、ひとつひとつの色が持つ美しさに気付かせてくれる。
さらに、出来上がった絵の色使いの自由さや、みんなで作り上げた壮大な絵の楽しさや美しさを際立たせてくれてる。
そんな、絵本の作り方描き方も、この絵本のとても特徴的で素敵なところです。
二言まとめ
空は青だという固定観念を、マリソルの姿を通して打ち壊してくれる。
色にはグラデーションがあることや、絵は自由でいいことに気付かせてくれる絵本です。
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