クレヨンからのおねがい!(4歳~)

絵本

文:ドリュー・デイウォルト 絵:オリヴァー・ジェファーズ 訳:木坂涼 出版:ほるぷ出版

ある日、クレヨンから手紙が届いた。

使い過ぎ、使ってもらえない、綺麗に塗って・・・。

色によって、様々な悩みがあるようです。

あらすじ

ある日のこと。

ケビンが絵を描こうとすると、クレヨンの箱の上にたくさんの手紙が置いてありました。

ケビンが手紙を開いてみると、それはクレヨンたちからの手紙だったのです。

赤いクレヨンからの手紙には、

「消防車に、リンゴにサンタ。クレヨンの中で一番働いているから休ませてくれ」

紫のクレヨンからは、

「使ってくれるのは嬉しいけれど、あちこちはみ出るような塗り方では、ぼくの美しい色が台無しになってしまう。もっと丁寧に塗ってください」

黄土色のクレヨンからは、

「ぼくはたまにしか使ってもらえません。使われるのはスズメや小麦の穂を描く時くらい。もっと使って欲しい」

灰色のクレヨンからは、

「いつも大きなゾウや、サイや、カバを一気に塗るからくたくたです。たまには、ペンギンの赤ちゃんとか少ししか塗らなくていいものを描いてもいいんじゃないかな?」

それぞれのクレヨンには、それぞれの悩みがあるようです。

けれど、手紙はまだまだたくさん続きます。

白、黒、緑、黄色、オレンジ色、青、ピンク、肌色。

みんな言いたいことがあるみたいです。

『クレヨンからのおねがい!』の素敵なところ

  • 色ごとに個性溢れる手紙
  • 納得感溢れるクレヨンの悩み
  • 手紙を読んだケビンの行動

色ごとに個性溢れる手紙

この絵本の一番特徴的なところは、クレヨンからの個性あふれる手紙でしょう。

その内容には、クレヨンごとの性格がよく出ていて、書かれている悩みも千差万別。

特に、クレヨンごとの口調が特徴的で、

赤いクレヨンなら「やあ、ケビン!オレだよオレ。赤いクレヨンのオレだよ。」

紫のクレヨンなら「ケビン君へ。いいですか、よーく聞いてくださいよ。」

黄土色のクレヨンなら「ケビン様。ぼくは黄土色です。黄土色として立派に生きているつもりです。」

灰色のクレヨンなら「ケビーン!こちらは灰色のクレヨンでーす。きみのせいでくたくたでーす。」

というように、書き出しだけでどんな性格かわかるほど個性的。

たくさんの手紙がありますが、まったく違う雰囲気なので、読み続けていても飽きません。

それどころか、「黄色はいないのかな?」と自分の好きな色がいつ出てくるのかワクワクしています。

そして、自分の好きな色が出てくると、「黄色出てきた!」と大喜び。

自分の好きな色へは、より身を乗り出して真剣に手紙の内容を聞いていました。

また、左のページに手紙、右のページにクレヨンと描いた絵という作りも、よりクレヨンの言っていることが伝わりやすい素敵な作りです。

赤いものがところ狭しと描かれる赤いクレヨンのページ。

竜や魔女などの線をはみ出して塗っている紫のページ。

小麦の稲穂がぽつんと一本生え、その横で黄土色のクレヨンがうなだれるページ。

見開きの2/3を埋め尽くす、大きなゾウとサイとカバが描かれた灰色のページ。

といったように、その絵を見ると、クレヨンの言っていることがとてもよくわかります。

それに、ケビンがどんな絵を描いているかわかることで、ケビンやクレヨンへの親近感も湧いてきます。

こうして手紙だけでなく、絵もあわせて見ることで、よりクレヨンの気持ちが伝わりやすいのも、この絵本の素敵なところです。

納得感溢れるクレヨンの悩み

そんな個性的なクレヨンの悩みですが、物凄く納得感があるのも、この絵本のおもしろいところ。

見ていると、「たしかに・・・」と思う所がたくさん出てきて、とても共感できるのです。

「黄土色なにに使ったっけな?」

「青、確かにすごい塗って小さくなってる」

「はみ出さないように塗ってあげよう」

と、ケビンへの手紙が、自分への手紙に変わることが多々あります。

他にも黄色・オレンジ色問題や、灰色のものはだいたい大きい問題など、見に覚えのあるクレヨンあるあるが満載で、クレヨンからの手紙にとても納得させられるのです。

このとても現実的であるあるな、クレヨンたちの悩みの内容もこの絵本のとてもおもしろいところです。

手紙を読んだケビンの行動

さて、クレヨンたちからのたくさんの手紙を読んだケビン。

ケビンとしては、ただ楽しく絵を描いていただけなのに、青天の霹靂とはまさにこのこと。

ですが、ケビンが素敵なのは、その手紙の内容をきちんと受け止め、それを踏まえて行動を起こしたことです。

この行動の結果がものすごく素敵。

これまでやっていてもおかしくないのに、よく考えたらやったことのない新たな世界が開けます。

この結末を見ると、自分でもクレヨンの箱を開いてやってみたくなってきます。

やろうと思えば簡単にできるのに、思いつかなかった素敵なアイディア。

それを物語の最後で形にして見せてくれるのも、この絵本のとても優しく素敵で、独創的なところです。

二言まとめ

クレヨンの色それぞれの、個性あふれる手紙の内容に、ものすごい説得力がある。

読めば、いつも使っていない色に、自然と目が行き、新しい絵を描きたくなる絵本です。

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