作・絵:ひさまつまゆこ 出版:富山房インターナショナル
自分の近くに見たこともないような見た目をした怪獣がいたら。
仲良くなろうとするだろか。
それとも離れようとするだろうか。
そんなみんなとは違う心優しい怪獣と、小さくて大きな友だちの話です。
あらすじ
森の中のそのまた奥に一匹の怪獣が暮らしていました。
黒い体にぼさぼさの白いたてがみ、6本足で歩きます。
怪獣が来ると、森の動物たちは逃げ出しました。
怪獣はそれが寂しくて、毎日泣きました。
そんな時、地面から生えた小さな芽が話しかけてきました。
その芽は怪獣の涙のおかげで芽を出すことが出来たのだと言います。
怪獣がいなければきっと枯れていたと。
怪獣と小さな木は友だちになりました。
怪獣は嬉しくて毎日色々なお話をしました。
そんな日々を過ごすうち、小さな木はどんどん大きくなっていき、怪獣の背を追い越して、大きな大きな木になりました。
そして花を咲かせ、赤い実をたくさん実らせました。
怪獣は大きな木の根元で暮らすことにしました。
ある夜のことです。
大きな嵐がやってきました。
怪獣は大きな木が守ってくれて無事でしたが、森の草木は嵐でなぎ倒されてしまいました。
森の動物たちは住んでいた家も、食べ物もなくなってしまいました。
優しい怪獣はとても心配しました。
森の動物たちは怪獣は一体どうするのでしょう。
『やさしいかいじゅう』の素敵なところ
- 綺麗で、優しく、壮大な魅力あふれる絵
- 怪獣と小さな木の過ごす日々がとても微笑ましい
- 最後の場面の最後の一言がこの物語らしく、とても怪獣らしい
この絵本全体を通して言えるのは、絵の魅力に溢れていることです。
怪獣は奇抜な見た目をしていますが、その豊かな表情や仕草を見ていると、あっという間に魅力にひき込まれてしまいます。
それだけではなく情景の描き方が本当に素敵なのです。
特に、怪獣が木に色々な話をする場面。
見開きの1ページに、
川の水面が宝石みたいにきらきらしていること
大きな虹が森と森の懸け橋になったこと
たくさんの流れ星が降ってきた夜のこと
を全て入れて、時間のたっていく様子を表現しているところは思わず見とれてしまいます。
そこに描き込まれる、怪獣と小さな木の後姿もとっても微笑ましいのです。
そんな素敵な絵で描かれる中のいい二人。
木が小さな時には怪獣が嵐の盾になって守ってあげ、木が大きくなったら反対に木が怪獣を守ってくれるようになったり、木が大きくなっていくのを見守る怪獣の姿だったりと、二人の仲のいい姿を見ていると、思わず頬が緩みます。
そんな二人のお話の最後の場面。
怪獣が大きな木に言う一言が、本当にこのお話らしく、怪獣らしいのです。
読んでいる途中は壮大で美しい絵に心惹かれ、二人の姿に頬が緩む。
読み終わった後にはいいお話だったなぁと心が温かくなる。
そんな素敵なお話です。
コメント