だれかのプレゼント(3歳~)

絵本

作:谷口智則 出版:文溪堂

サンタさんが海に落としてしまったプレゼント。

拾った魚は、色々な生き物たちと力を合わせ、

プレゼントを空の上へ返そうとしますが・・・。

あらすじ

クリスマスの日、サンタさんはソリにプレゼントをたくさん積んで出発しました。

ところが、プレゼントの箱が一つ、ソリから落ちて海の中へ。

海の底へ沈んでいくプレゼントを見つけたのは、魚でした。

魚は持ち主に届けようと泳いでいき、クジラに持ち主を知らないか訪ねました。

すると、クジラはプレゼントが空から落ちてきたのを見たと言います。

魚はこれ以上は運べないので、プレゼントをクジラに託すことにしました。

クジラは陸地で寝ているカメを起こしに行きました。

カメに事情を説明し、陸には上がれないからと、プレゼントをカメに託したのでした。

カメはウサギを起こすと事情を説明しました。

ゆっくりしか歩けないから、足の速いウサギにプレゼントを託したのです。

ウサギはゾウを起こし、事情を説明しました。

ゾウの長い鼻なら、空にプレゼントを返せると思ったのです。

ですが、ゾウの鼻では空には届きませんでした。

そこで、ゾウはキリンを起こし、長い首で空まで届けてもらうことにしました。

キリンは首を伸ばしましたが、木の途中までしか届きません。

キリンは木の穴で寝ているサルを起こし、木の上まで届けてもらうことにしました。

サルは木の上まで行くと、巣で寝ている鳥を起こしました。

鳥に空まで運んでもらおうというのです。

こうしてついに、空まで帰ってきたプレゼント。

サンタさんの元に戻ることはできるのでしょうか?

そして、このプレゼントは一体誰宛てのプレゼントなのでしょう?

『だれかのプレゼント』の素敵なところ

  • 少しずつ高度が上がるプレゼントリレー
  • そんなまさかなプレゼントの送り先
  • プレゼントの中身がわかる楽しい仕掛け

少しずつ高度が上がるプレゼントリレー

この絵本のなによりおもしろいところは、次々に違う生き物へ渡されていく、プレゼントリレーでしょう。

最初は海の中から始まるプレゼントリレー。

目的地は空の上。

とても魚一匹では無理そうです。

子どもたちも、

「空の上には届けられないでしょ!」

「どうやって届けるの?」

と、絶望的な状況です。

そんな中、クジラにプレゼントが渡ります。

次にカメ、ウサギ、ゾウ・・・とプレゼントが渡っていきます。

でも、子どもたちは「ゾウの鼻でも空までは届かないよ」と、まだ空に届くとは思っていません。

ですが、キリン、サルときて、ついに空に手が届く所まで来ると、子どもたちも自然と前のめりに。

そこで出てくる鳥によって、空に届けられることを確信します。

この、不可能と思われたところから、徐々に空へと近づいていき、ついに空へとプレゼントが到達する流れが、この絵本のとてもおもしろいところです。

少しずつ空に近づいていることに気付いた時、嫌でもワクワクしてしまうことでしょう。

さらに、生き物それぞれの特徴が活かされているのも素敵なところ。

それぞれの生き物が、その特徴を活かして中継したからこそ、木の上のサルに届けられたし、木の上の鳥に託せたことが伝わってきます。

最初の方は、「なんでこの生き物に託したの?」と思っていたのが、最後に一本の線へ繋がる感じはとても気持ちのいいものになっています。

そんなまさかなプレゼントの送り先

こうして、プレゼントを空に返すことに成功した生き物たち。

ようやく、安心して眠りにつき、サンタさんを待ちます。

では、落としたプレゼントは結局誰のプレゼントだったのでしょう?

これがまた、なんとも言えない送り先なのも、この絵本のおもしろいところです。

子どもたちもこれには、

「えー!?」

「それなら最初っから・・・」

と、なんとも言えない驚きと徒労感。

プレゼントリレーの達成感からの、このなんとも言えない結末がこの絵本ならではのおもしろさなのでしょう。

でも、サンタさんもプレゼントをもらった本人も、そのことには気付いていないのがなんとも平和。

その秘密を知っているのは、絵本を見ている子どもたちだけというのも、とても素敵だなと思います。

プレゼントの中身がわかる楽しい仕掛け

さて、プレゼントが無事送り先へ届いて、物語は終わりを迎えますが、その後にもクリスマスならではのお楽しみが残っているのも、この絵本の楽しいところ。

プレゼントには、開封するという楽しみが残っています。

この絵本では、そこまでちゃんと見せてくれるのです。

実は物語の始まる前に、表紙の裏にたくさんのプレゼントの箱が描かれています。

これが実は登場する生き物たちそれぞれのプレゼント。

物語が終わった後の、裏表紙の裏でこのプレゼントが開封されて、誰がどんなプレゼントをもらったかわかります。

ただ、にくいのがここでの演出。

落としたプレゼントの箱だけ、開封されずそのままなのです。

子どもたちはすぐに気付き、

「あれ、○○だけいない!」

「なにもらったんだろう!」

と、もう気になってしょうがありません。

そして、「わからないまま終わるの!?」とソワソワしながら絵本を閉じると、裏表紙にプレゼントを身につけた持ち主が描かれているのです。

「いた!」

「プレゼントこれだったのか!」

とみんな納得して、スッキリと絵本が終わります。

この最後の最後にある、クリスマスならではの楽しさと、ドキドキさせる仕掛けも、この絵本のとてもおもしろく、にくい演出です。

二言まとめ

サンタさんが落としたプレゼントを、空に戻すためのプレゼントリレーがおもしろい。

そのプレゼントの予想外過ぎる送り先に、みんな唖然となる、この絵本ならではの驚きがとても楽しいクリスマス絵本です。

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