いちばんどりいちぬけた(4歳~)

絵本

作:日隈みさき 出版:あかね書房

鳴くことをやめ、旅に出た一番鶏。

その旅の中で出会う、たくさんの1がつく言葉。

1のつく言葉の多さに驚かされる言葉遊び絵本です。

あらすじ

一番鶏とは、朝一番に鳴く鶏のこと。

そんな一番鶏が、ある日鳴くのを「いちぬけぴ」とやめてしまいました。

ニワトリ一族は、一致団結して、ボイコット。

一応みんなにお知らせをすると、これは一大事と、鳴くようお願いしましたが、一羽残らず旅に出てしまいました。

一列に並んで進みます。

町を一望し、一面の草むらを抜け、一か八かつり橋を渡ります。

市場をひとっ走り、一輪車を追い抜いて、一日中歩いて走ってくたくたです。

ニワトリたちが一休みしていると、空に輝く一番星を見つけました。

一番星は夜が来たことを知らせます。

一番鶏は朝が来たことを知らせます。

そんなことを考えていると・・・。

『いちばんどりいちぬけた』の素敵なところ

  • 1のついた言葉が目白押しで進んでいく物語
  • 道中の鳥たちの行動に色々なことを想像させられる
  • 旅に出たことでわかった自分の気持ち

1のついた言葉が目白押しで進んでいく物語

この絵本のなによりおもしろいところは、1のついた言葉で物語が進行していくことでしょう。

一番鶏、いちぬけぴ、一族、一致団結、一応、一大事・・・

と、1のつく言葉が目白押し。

1のつく言葉って、こんなにあったのかと驚かされます。

子どもたちも、

「あ!1がついてる!」

「ここに1があるよ!」

と、1を見つけるたびに声を上げていました。

中には、「14個・・・」と、1のつく言葉の数を数える強者も。

終わった後「21個もあった!」と、1のつく言葉の多さに驚いていました。

でも、出てくる言葉に特別な言葉はほとんどなく、普段から自然に使っている言葉ばかり。

改めて考えてみると、1って色々な言葉についているんだなあと気付かされます。

そんな、日頃は気付かない1のつく言葉のおもしろさや、その多さに気付かせてくれ、しかもそれが物語になっているという秀逸さが、この絵本のとてもおもしろいところです。

道中の鳥たちの行動に色々なことを想像させられる

こうして、1のつく言葉が盛りだくさんの旅に出るニワトリ一族。

その道中のおもしろさが、言葉遊びだけじゃないのも、この絵本の素敵なところです。

そもそも、ニワトリ一族の中に、1匹ずつハトとヒヨコが混ざっている時点で、

「あれ!?ニワトリじゃなくてハトじゃない!?」

「ヒヨコもいる!かわいい~」

と、まずツッコミが入ります。

その上で、草むらや、市場など、様々なロケーションごとの、ニワトリたちのユーモラスな行動に物語を想像してしまうのです。

草むらを抜けると、ハトが赤い花で、ニワトリ風の頭飾りを作っているのを見て、

「なんかついてる!自分もニワトリみたいになりたかったのかな?」

市場でハトがイチゴを見に行っているのを見て、

「イチゴ食べたいんじゃない?買わないよって言われてるのかな?」

など、その光景からニワトリたちの文章では語られない物語や、セリフを自然と想像してしまうのです。

この言葉遊びだけでなく、絵を見ているだけでも、たくさんの発見や想像が楽しいもの、この絵本のおもしろいところです。

旅に出たことでわかった自分の気持ち

さて、こうして1日中歩き続けたニワトリ一族。

夜になり一番星を見ていると、翌朝のことが気になってきます。

一番星と対になる、一番鶏の仕事。

(そもそも、この対比がとてもロマンチックで素敵です)

自分たちの鳴き声を待っていてくれる人々のこと。

自分たちも、旅に出るまで気付いていなかった、1へのこだわり・・・。

その結果、ニワトリたちが取る行動はたった一つしかありませんでした。

たた、ここで素敵だと思ったのは、行動そのものではありません。

旅をする中で、色々な場所に行き、色々なものを見て、色々なことを考えた結果、自分たちにとって大切なものや場所がわかったのだろうなと、感じられたところなのです。

きっと、旅に出なければ、一番鶏の仕事の大切さや、その仕事を好きなことに気付くこともなかったでしょう。

1のつく言葉遊びのおもしろさ、道中のニワトリたちの行動など、おもしろいところがたくさんある絵本。

そのなかでも、旅を通して、自分たちの本当の気持ちに気付くという物語が、とても素敵だなと感じるのです。

二言まとめ

次々と出てくる、1のつく言葉に、普段どれだけ1のつく言葉を使っているのかに気付かされ、驚かされる。

読めば、「一度は旅に出てみようと」と思わされる、1のつく言葉遊び絵本です。

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