文:石津ちひろ 絵:ささめやゆき 出版:講談社
ある日、町暮らしのネコがサーカスに入ったら?
曲芸や猛獣つかいなどに挑戦するネコは、
一体どんな感じになるんでしょう?
あらすじ
ある日、公園で遊んでいたネコの兄妹、黒猫のミーシャと、白猫のサーシャ。
そこへサーカス団の団長が現れて、「スターになれるに違いない」とサーカス団に誘ってきた。
こうして、ネコの兄妹はサーカス団のメンバーになった。
そして、厳しい特訓を受け、得意の曲芸でデビューをした。
でも、ジャグリングは・・・全然うまくいかない。
馬の背中で踊るのも・・・馬に振り落とされる。
猛獣つかいも・・・猛獣に追いかけられる。
玉乗りも、オートバイでの火の輪くぐりも、綱渡りも・・・全部うまくいかない。
さあ、最後の大技空中ブランコ。
今度こそは名誉挽回となるのでしょうか?
『もしもねこがサーカスにいったら』の素敵なところ
- 見事な失敗とリアクションに大笑い
- つい一緒に言ってしまう「あれれー」
- ネコそれぞれ向き不向きがある
見事な失敗とリアクションに大笑い
この絵本のなによりおもしろいとこは、ネコたちがド派手に失敗する姿でしょう。
ジャグリングをすれば、自分の頭や乗客へ玉が飛んでいったり、
馬の背中に乗れば、派手に吹き飛ばされたり、
猛獣に追いかけられて、天井にしがみついたり・・・。
もうギャグマンガのごとき失敗とリアクションが、ページをめくるたび繰り広げられます。
これを見て、子どもたちが笑わない訳がありません。
それはまるで、サーカスのピエロを見ているかのよう。
ネコたちは真面目にやっているので、ちょっと申し訳ないですが、流石にこのリアクションの大きさには笑ってしまうのが自然というもの。
子どもたちも、「ちょっとかわいそう」と言いつつも、やっぱり大笑いしています。
この失敗のド派手さと勢いが、この絵本のとてもおもしろいところです。
つい一緒に言ってしまう「あれれー」
そんな失敗をする時、ネコたちが言う決まり文句があります。
それが「あれれっ!」や「あ~れ~!」。
上手に出来そうな雰囲気を醸し出しておいて、ページをめくると「あれれっ!」と失敗するのが、この絵本のお約束。
流れがわかってくると、子どもたちもネコと一緒に「あ~れ~!」というのもお約束です。
この繰り返しがたまらなくおもしろい。
子どもたちも、最初は「うまくいくかな?」とドキドキで見ているのですが、段々と「次はどうなっちゃうんだろう」とニヤニヤ。
もう「あれれっ!」を楽しみにしています。
この失敗する時の決まり文句の存在も、この絵本を楽しく盛り上げてくれるポイントです。
ネコそれぞれ向き不向きがある
さて、そんな最後の結末は、ちょっと人生について考えさせられるものでした。
サーカスでなにをやっても、うまくいかないネコたちは、スパッと潔く気持ちを切り替えある決断をします。
それがなんとも清々しい。
身軽なネコにも向き不向きがあるんですから、人間にはもっと向き不向きがあるでしょう。
でも、このネコたちのようにスパッと決断するのって意外と難しい。
ただ、最後のページのネコたちを見ていると、こんなチャレンジングで気楽な生き方もいいなぁと思えます。
失敗続きで落ち込んでもおかしくないところを、このネコたちは微塵も気にせず前向きなのです。
過去に引っ張られず、今を楽しむネコの兄妹。
この2人を見ていると、ふっと肩の力が抜けることでしょう。
そんな心地いい脱力感を与えてくれる最後の場面も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
サーカス団に入ったネコたちの、ド派手に失敗する姿がおもしろすぎる。
失敗を恐れず、「とりあえずやってみるのもいいかもなぁ」と思わせてくれる絵本です。
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