【絵本】あめかっぱ(3歳~)

絵本

作:むらかみさおり 出版:偕成社

この町では、雨が降ると河童が子守をしてくれます。

さあ、河童だけが知っている、雨のお楽しみへでかけましょう。

あらすじ

ある雨の日。

女の子なおちゃんは、呼び鈴がなったのでお母さんの代わりにドアを開けました。

すると、ドアの外にいたのはカッパ。

なおちゃんはびっくりして、テーブルの下に隠れてしまいました。

しかし、お母さんはそんなこと気にもせず、用事ができて出かけないといけないから、カッパと留守番をするように言い、さっさと出かけてしまいました。

カッパはテーブルの下をのぞき込み、なおちゃんをピクニックに誘います。

カッパがお弁当を作り始めると、なおちゃんもなんだかワクワクしてきました。

こうして、なおちゃんとカッパはピクニックに行くことに。

林の奥へと歩きながらカッパが、この町の子どもは雨の日に留守番をする時には、カッパと過ごすことを教えてくれました。

林の入り口で、おやつのキュウリと、なおちゃん用のフキの傘を買います。

林を抜けると、そこは池。

他にも子どもたちがカッパと来ていて、なおちゃんの友だちもいました。

遊んでいるうち、雨で池がどんどん大きくなって行きます。

辺り一面、すっかり池になったころ、舟がやってきました。

みんなで舟に乗り、雨がたくさん降らないとたどり着けない所に行くというのです。

舟がたどり着いたのは、大きな木の前。

木の上の方には遊び場があり、大きな公園のようになっていました。

なおちゃんは、あっちの木からこっちの木へと、元気に駆け回ります。

お腹が空いたら一休み。

お弁当の時間です。

雨の日の楽しみはまだまだ続くみたいです。

『あめかっぱ』の素敵なところ

  • 雨の日はカッパと過ごすおもしろい風習
  • 雨の日ならではのお楽しみ
  • たくさんの発見がある雨にけむる幻想的な絵

雨の日はカッパと過ごすおもしろい風習

この絵本のなによりおもしろいところは、カッパが当たり前にいるところでしょう。

いるどころか、人間と共存しています。

この町では、雨の日に留守番する時は、カッパを呼ぶことが当たり前。

子どもは楽しいし、お母さんも安心という、まさに理想的な子育て支援システムになっているのです。

その証拠に、林の奥の家にはたくさんの子どもの姿が見られます。

きっと町中の子どもが集まっているのでしょう。

まるで子育て広場のようになっているのです。

普段は妖怪として恐れられたり、一緒に遊ぶお話も、特別な体験として描かれます。

そんな中、カッパがいるのが当たり前というお話は珍しくて、とてもおもしろい。

子どもたちも、

「この町にもカッパがいたらいいのに~」

「カッパがいれば、雨の日も外で遊べるよね~」

と、すっかりこの町の風習に魅了されているようでした。

このカッパと人間が当たり前に一緒に過ごしている、平和で魅力的な世界観がこの絵本のとても素敵なところです。

雨の日ならではのお楽しみ

この風習や世界観だけでも魅力的なのですが、さらに魅力的なのがカッパとのピクニックです。

まるでトトロの世界のようなフキの傘を差しながら、池の周りを走り回る子どもたち。

これだけでも雨の日に室内でウズウズしている子どもたちには魅力的なのに、それだけでは終わりません。

雨で池が広がったら、今度は舟の旅が始まります。

こうなってくるとまるで探検隊。

水に沈む林の中を舟で進むなんて、まるでジャングルを探検しているかのようです。

こうしてついた先が、大きな木の上にある公園のような遊び場。

枝から枝へ網が張ってあったり、ブランコがあったり、ツリーハウスにすべり台まで。

遊びつくせないほどのアクティビティが、そこに詰まっているのです。

これがおもしろそうに見えないはずがありません。

「網のやつおもしろそうだな~」

「ロープのやつやってみたい!」

「落ちたら大変じゃない?」

「下が水だから大丈夫だよ!」

などなど、子どもたちもすっかりここで遊ぶモードになっています。

さらに見晴らしのいい木の上で、雨宿りしながら食べるお弁当。

もう、雨の中で考えうる楽しいがすべて詰まっているかのようなのです。

この楽しすぎるピクニックの内容も、この絵本のとても楽しくおもしろいところです。

きっと、身近にカッパがいなくても、雨の日にピクニックしたくなってしまうことでしょう。

たくさんの発見がある雨にけむる幻想的な絵

さて、そんな雨の日の楽しさが詰ったこの絵本ですが、楽しみは物語だけではありません。

その細かく描き込まれた一つ一つのページも、魅力と発見が詰っているのです。

まず目を引くのが、表紙からもわかるリアルな自然の描写です。

木々のざわめきが聞こえてきそうなほど現実そっくりの砂漠が、絵本にもリアリティを与えてくれます。

このリアリティがあるからこそ、カッパがいる日常が自然に思えたり、木の上にある遊び場がより現実味と魅力を帯びているのでしょう。

さらにこの自然描写が、雨と組み合わさってとても幻想的で美しい。

雨でけむり、解像度が低くなったような、少しもやがかかったような描写は、まさに雨だからこその空気感や静けさを描き出しています。

それが、リアルな自然描写とあいまって、とても幻想的な非日常感を醸し出しているのです。

ただ、美しいだけでは終わりません。

発見の楽しさもたくさん用意されています。

木の影から顔をのぞかせるキツネなど、林の中にたくさんいる動物。

舟の底についている、水中を見ることができる窓。

子どもたちの中から、なおちゃんがどこにいるか探す遊び。

木の上にさり気なくある団子屋や、謎のスペースの発見と考察。

などなど、数えればキリがないほどの発見が散りばめられているのです。

子どもたちもその都度、

「あそこにカメがいるよ!」

「なおちゃんあそこにいる!」

「カッパのお家があるよ!」

と、発見を教えてくれていました。

見れば見るほど、色々な動物や遊び、暮らしぶりが発見されていくのも、この絵本のとても素敵なところ。

絵としての、幻想的で美しい雨ならではの空気感と、その中でたくさんの発見がある遊びとしての楽しさが見事に共存しているのです。

ぜひ、のんびりゆっくり発見を楽しみながら、子どもたちと一緒に見てみてください。

二言まとめ

雨の日の留守番は、カッパと一緒にするという、人とカッパが共存する世界観が魅力的でおもしろい。

カッパとのピクニックいう、雨の楽しみが目いっぱい詰まった一日が楽しめる雨の日絵本です。

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