作:昼田弥子 絵:シゲリカツヒコ 出版:くもん出版
風が強い日に、部屋でしりとりをする姉弟。
でも、不思議なことが起こります。
言ったものが、本当に風に飛ばされてくるのです!
あらすじ
とても風の強いある日。
お母さんが買い物に出かけました。
外に出ないよう言われた姉弟は、留守番の間、しりとりをすることに。
最初の言葉はしりとり。
次は新聞紙。
すると、窓の外を新聞紙が飛んでいきます。
次に、シャツ、つりざお、オウム、むしめがね。
窓の外ではやっぱり、言ったものが風に飛ばされ通り過ぎていきます。
ねこ、こま、まじょ、じょうろ・・・。
ろくろ、ろてんぶろ、六匹のマグロ、ロボットおんぼろ、ろうそくとろとろ、ろくろ首のお歯黒・・・。
もちろん、言ったものはすべて風に飛ばされてきます。
オバケも、ロボットも。
ずっと、「ろ」が続き、弟は頭を悩ませます。
そして、ついに思いついたのが・・・。
「ロケットとんでけ」
その言葉に合わせて、なんと家の屋根が開きロケットが発射!
でも、まだまだしりとりは続きます。
ケチなナマズ、ずるいイルカ、カバ番狂わせ・・・。
どんどん自由になって行く言葉。
それに合わせて、本当に飛んでくるものたち。
そんな中、ある言葉を言ってしまいます。
それは「うち」。
その言葉に合わせ、空高く飛んでいく姉妹の家。
このしりとりは、どこまでいってしまうのでしょうか。
『かぜがつよいひ』の素敵なところ
- 言ったものが本当に飛んでくる不思議なしりとり
- どんどんスケールが大きくなるワクワク感
- 待ちに待った最後の言葉
言ったものが本当に飛んでくる不思議なしりとり
この絵本のなによりおもしろいところは、しりとりで言ったものが、本当に出てきてしまうところでしょう。
風に飛ばされ、窓の外を通り過ぎていく様々なもの。
最初は、飛ばされてきても違和感のないものばかりでしたが、次第にオバケやロボットなど、明らかに不思議なものが飛んでき始めます。
さらには、ロケットが発射したり、家が飛んでいったりと、もうしりとりをしている場合じゃなさそうな展開に。
これには子どもたちも、
「ろくろ首飛んできてるよ!」
「ロケット!?」
「しりとりしてる場合じゃないよ!」
と驚きと焦りの声。
でも、なんと姉弟はそのことに気付いていない様子。
冷静にしりとりをし続けているのです。
この、姉弟と絵本を見ている人のギャップも、とてもおもしろいところ。
なんとか、姉弟に伝えようと、子どもたちがワイワイと盛り上がるのです。
また、絵がものすごくリアルなのも、この臨場感や、現実になった感を盛り上げてくれるポイント。
ファンタジーなものも、本当に存在するかと思えるくらいの写実的な絵で描かれるので、ものすごく現実味があるのです。
ロケットが発射する場面や、家が空に浮かび上がる場面も、ロケット発射の風圧で舞い散る洗濯物や、家が地面からはがれた断面のリアルさなどが合わさり、重厚感と臨場感がすごい。
この臨場感に盛り上がらないはずがないのです。
リアルな絵が醸し出す現実感と臨場感あふれる不思議なしりとりが、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。
どんどんスケールが大きくなるワクワク感
さらに、この絵本には子どもたちをワクワクさせるポイントがあります。
それが、どんどんスケールが大きくなっていくしりとりの展開です。
最初は、小型だったり、飛んできても違和感のないものから始まり、徐々に飛んでこなさそうなものへと変わっていきます。
最初の変化は魔女やろくろ首。
ネコや釣り竿などは「本当に飛ばされてきちゃったよ!」と、驚きつつも現実的に見ていた子も、魔女やろくろ首となると話は別。
「魔女!?」
「ろくろ首本当に出てきた!?」
と、驚きのレベルが上がります。
さらにロケットが発射したり、ケチなナマズや、ズルいイルカなど、もう飛ばされているのさえ怪しいものが現れ、飛んでくるものやしりとりのルールという常識のふたも外れ、なにが起こってもおかしくない雰囲気を察し始めます。
こうなってくると、次の言葉にワクワクドキドキしかありません。
予想のつかない次の言葉へ前のめりになる子どもたち。
そこで「うち」と家が飛んでいくのだからたまりません。
「とんでっちゃった!!!」
と、未知の領域へスケールアップしていきます。
さらに次の言葉のスケールに度肝を抜かれることでしょう。
こうして、結末の予想がつかないほどにスケールアップしていく言葉は、もはやしりとりの枠を超えてしまっています。
このスケールがどんどん大きくなり、予想がつかなくなっていく展開のワクワクドキドキ感も、この絵本のとても楽しいところです。
待ちに待った最後の言葉
さて、予想のつかない展開が続く、しりとりですが、終わりがこないしりとりはありません。
この絵本にも結末が訪れます。
その最後の言葉がなんとも素敵。
これだけ広げたスケールを見事に収め、さらにはみんな馴染みのある大好きな言葉です。
この言葉によって、姉弟も、子どもたちも無事に家に帰ってこられます。
まるで現実の世界のように。
と、同時にこの物語が現実だったのか、姉弟の空想だったのかも、ふと考えさせられます。
けれど、最後の場面の一コマに、「やっぱり本当のことだったかも」と思わせてくれる仕掛けがあるのも、この絵本のにくいところ。
不思議なしりとりが終わっても、その不思議な世界の余韻に浸れるのです。
この、大きく大きく広がったしりとりの世界を、自然に現実戻してくれる最後の言葉と、現実に戻っても不思議な世界の余韻を残してくれる物語の終わりもまた、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
言ったものが本当に出てきてしまうしりとりが、とても不思議でおもしろい。
どんどん大きくなっていくしりとりのスケールに、ワクワクドキドキが止まらないしりとり絵本です。
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