【絵本】ちいさいきみとおおきいぼく(4歳~)

絵本

文:ナディーヌ・ブラン・コム 絵:オリヴィエ・タレック 訳:礒みゆき 出版:ポプラ社

一人ぼっちの大きなオオカミ。

そこへある日、小さなオオカミが現れた。

なんでも真似する小さなオオカミのことが段々と・・・。

あらすじ

丘の上の大きな木の下に、大きいオオカミがずっと一人で住んでいた。

ある天気のいい日、遠くの方に小さな何かが見えた。

その何かはどんどんこちらへやってくる。

それは小さいオオカミだった。

小さいオオカミは、当たり前のように大きいオオカミのとなりにやってきた。

そして、一緒にひなたぼっこを始めた。

二人とも一言もしゃべらずに。

夜になっても、小さいオオカミはとなりにいた。

小さいオオカミが震えているので、大きいオオカミは自分の毛布を少しわけてやった。

次の朝も、小さいオオカミはとなりにいた。

大きいオオカミが目覚めの木登りを始めると、小さいオオカミもついてきた。

小さいオオカミは木登りが下手で、何度も落ちた。

けれど、諦めずに何度も挑戦し登ってきた。

大きいオオカミは、小さいオオカミのことを頑張り屋だと思った。

ようやく小さいオオカミは木に登ることができた。

大きいオオカミが木のてっぺんで、朝の体操を始めると、小さいオオカミも真似をした。

木登りの後は、朝ごはんを食べた。

大きいオオカミが食べ始めると、小さいオオカミのつばを飲み込む音が聞こえてきた。

大きいオオカミは、小さなオオカミに食べ物を少しわけてあげた。

小さいオオカミはそれだけで満腹になったようだ。

ご飯の後、大きいオオカミは散歩に出かけた。

振り返ると、小さいオオカミは木の下に座っている。

大きいオオカミは遠くへ歩いていくにつれ、小さいオオカミはより小さくなった。

さらに遠くに行くと、そこからはもう小さいオオカミが見えなかった。

大きいオオカミはそろそろ帰ることにして、丘の方へと戻っていった。

しかし、丘に近づいていっても、小さいオオカミの姿が見えない。

一気に丘を駆けあがり、大きな木の元へ戻ったが、そこに小さいオオカミはいなかった。

大きいオオカミはまた一人になってしまった。

その晩は、食べ物が喉を通らず、一睡もできなかった。

こんな気持ちは始めてだった。

朝になり、木の上から探しても見つからない。

それでも、大きなオオカミは小さなオオカミが帰ってくるまで、いつまでもまつつもりだった。

雪が降り始めても、小さいオオカミは帰ってこない。

でも、大きいオオカミは木の下で待ち続けた。

今度会ったら、毛布も、食べ物もたくさんあげて、新しい体操もすべて教えてあげようと心に決めて。

大きなオオカミは待ち続けた・・・。

小さいオオカミはどこにいってしまったのでしょう?

2人は再会することができるのでしょうか?

『ちいさいきみとおおきいぼく』の素敵なところ

  • 2人のオオカミの幸せで温かな時間
  • 一人ぼっちの不安で孤独な時間
  • 温かくてかわいい幸せな結末

2人のオオカミの幸せで温かな時間

この絵本でまず印象的なのは、大きいオオカミと小さいオオカミの出会いでしょう。

どこからともなくやってきた小さいオオカミは、大きいオオカミの居場所へ当たり前のように入ってきます。

最初は驚いた大きいオオカミですが、小さいなりになんでも自分のすることを真似する小さいオオカミの姿が、少しずつかわいくなっていくのです。

自分より少しの毛布で十分だったり、

自分より少しの食べ物で満足したり、

なにをするにも自分よりへたっぴだけど、頑張ってついてこようとしたり・・・。

それは、大きいオオカミだけじゃなく、子ども達も一緒。

「小さいオオカミかわいいね!」

「かわいすぎて、ぼくも小さいオオカミ好きになっちゃった」

「弟みたいだね!」

などなど、すっかり子どもたちも、小さいオオカミに夢中です。

この2人の暮らしの幸せそうなこと。

そんな暮らしの中で、一人ぼっちだった大きいオオカミの心に、温かいものが生まれてくるのが伝わってきます。

分け与えたり、心配したり、認めたりする姿から。

この2人の幸せで温かな時間を通して、こちらまで心が温かく幸せな気持ちにしてくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。

一人ぼっちの不安で孤独な時間

けれど、その時間は長く続きませんでした。

大きいオオカミが散歩に行っている間に、小さいオオカミがいなくなってしまうのです。

この時の、ぼんやりと座り込みながら大きいオオカミが言う「また一人。・・・前と同じだ」というセリフがとても印象的。

大きいオオカミの感じている孤独や寂しさが、強く感じられます。

でも、大きいオオカミは諦めはしませんでした。

小さいオオカミを木の下で待つことに決めたのです。

この前半の幸せな時間とは対照的な一人ぼっちの時間もまた、この絵本のとても素敵な場面です。

あの幸せだった丘の上が、とても孤独な場所に変化します。

同じ場所とは思えないほどに。

さらに、ページをめくるたび、季節が移り変わります。

木の葉が紅葉し、雪が降り、新芽が顔を出すといった形に。

これが、「とても長い時間」を見ている人に実感させてくれ、大きいオオカミが来る日も来る日も待ち続けていたことが、強く伝わってくるのです。

そして、待ち続ける中で、大きいオオカミは小さいオオカミが自分にとってどれだけ大切な存在だったのかに気付きます。

同時に「もっとこうしてあげれば」という後悔も心に浮かびます。

この大きいオオカミの孤独に待ち続ける姿を見ていると、こちらまで胸が苦しくなり、心から小さいオオカミに帰ってきて欲しいと思えてくるのです。

子どもたちもページをめくるたび、

「小さいオオカミいないね・・・」

「早く帰ってきて・・・」

と、小さいオオカミがいることを期待しつつ、いないことへしょんぼり。

その表情や心模様は、まさに大きいオオカミとリンクするものでした。

この一人ぼっちの時間を、ゆっくりと丁寧に描くことで、子どもと大きいオオカミの心が近づいていくところも、この絵本のとても素敵で感情を揺さぶられるところです。

温かくてかわいい幸せな結末

さて、そんな物語の結末は、とても温かな待ち望んだものでした。

しかも、その小さな姿が見えた時の、大きいオオカミのドキドキワクワクする気持ちと、子ども達のドキドキワクワクする気持ちが、一体化していたのは本当にこの絵本ならではのおもしろさ。

丁寧に、大きいオオカミと子ども達の気持ちを結び付けていたからこそでしょう。

ぜひ、この絵本を読み聞かせて、体験してみてほしい場面です。

また、そこでの大きいオオカミと、小さいオオカミのやりとりも、この2人らしいかわいらしく、温かなものになっているのも見逃せないところでしょう。

このやりとりから、小さいオオカミがなにをしていたのかも、なんとなく感じられます。

2人はもう離れ離れにならないんだろうなという、嬉しい予感とともに。

この、不安な展開から、大きいオオカミと小さいオオカミと子どもたちがなによりも待ち望んだ結末を、この2人らしい温かさで迎えてくれるハッピーエンドも、この絵本のとても素敵で嬉しくなってしまうところです。

二言まとめ

2人で過ごす時間が幸せだったからこそ、離れてしまった時の孤独もまたとても強く感じられる。

感情が揺れ動くことで、一緒にいる幸せもまたとても強く感じられる温かな絵本です。

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