作・絵:やまだうたこ 出版:大日本図書
静かな湖にやってくる生き物たち。
生き物たちは、静かな湖で思い思いに遊びます。
その静けさと賑やかさの往復が、なんとも楽しい絵本です。
あらすじ
静かな湖がありました。
そこへアヒルの親子がやってきて・・・
湖を泳ぎます。
静かな湖にウサギとその友だちがやってきました。
ウサギたちは、花を耳につけ、おめかしすると、湖の鏡をのぞきこみます。
静かな湖に、3匹の子ブタの兄弟がやってきました。
子ブタたちは、コップに湖の水をすくうと、ごくごくと飲みました。
静かな湖に子どものゾウがやってきました。
湖に入ると・・・。
『しずかなしずかなみずうみ』の素敵なところ
- 生き物たちが次々にやってくる繰り返し
- 生き物の行動に合わせ変化する静かな湖
- 最後に出てくる湖の本当の姿
生き物たちが次々にやってくる繰り返し
この絵本のまず楽しいところは、次々と湖に生き物たちがやってくるところでしょう。
さらに、そのどれもが知っている生き物ばかり。
場面ごとに出てくる色々な生き物を見るたび子ども達は、
「ウサギさんだ!」
「ゾウさん!」
「ガーガー!」
など、まるで友だちと会ったかのような、楽しい反応を返してくれることでしょう。
そんな生き物たちは、ただ出てくるだけではなく、湖でそれぞれに行動を起こします。
このバリエーションが豊富なのも、この絵本の楽しいところ。
アヒルは泳ぎ、
ウサギはおめかしをし、
子ブタは水を飲む・・・
と、それぞれにまったく違う湖の楽しみ方をしています。
これにも子どもたちは、
「泳いでるねー」
「ウサギさんかわいい!」
など、楽しそうな反応を返します。
この、よく知っている生き物たちが次々とやってきて、その生き物のイメージにぴったりな行動を取るという繰り返しが、この絵本のわかりやすく、とても楽しい素敵なところです。
生き物の行動に合わせ変化する静かな湖
こんな風に、色々な生き物たちがやってくる静かな湖。
ですが、実はずっと静かな湖ではありません。
生き物たちがやってくるたび、静かな湖から変化しているのです。
アヒルなら「すいすい すすすー たのしい みずうみ」
ウサギなら「きらきら ちらちら きれいな みずうみ」
というように。
この静かな湖が、生き物たちの行動により変化するのも、この絵本のとてもおもしろいところです。
ずっと同じ湖だけれど、そこでの過ごし方で、全然違う湖へ変化する。
その中で、自然と「たのしい」「きれいな」「おいしい」などの、形容詞に触れることで、表現の幅が広がっていくことでしょう。
これは、最初から最後まで、同じ湖を見続けているからこその変化のおもしろさや、そこへの気付きなのだと思います。
また、変化から「静かな湖」に戻るという、場面の切り替えもおもしろく、子ども達の気持ちを自然と切り替えてくれます。
この、「静かな湖」と「変化した湖」を往復する繰り返しも、子ども達の集中力を高め、楽しさを盛り上げてくれる素敵なところです。
最後に出てくる湖の本当の姿
さて、最後に出てくる生き物は、元々この湖に住んでいる生き物たちでした。
そんな生き物たちにとっての、この湖の見え方も、この絵本のとても素敵なところです。
外から見る湖は「静かな湖」ですが、そこに暮らしている生き物にとっては違うみたい。
外からの視点と、中からの視点の違いのおもしろさに、この生き物たちは気付かせてくれます。
この湖の見え方が正反対で、それがなんともおもしろい。
この絵本を見たら、散歩で行く公園の池なども、外から見ると静かに見えるけど、実は静かな池じゃないと、新たな視点で見えてくるかもしれません。
中からの視点と、外からの視点、両方で同じ湖を見ることができるのも、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。
二言まとめ
静かな湖へ次々とやってくる生き物たちと、その行動に合わせた湖の変化がおもしろい。
同じ湖が持つ、様々な顔に気付かせてくれる絵本です。
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